テラーノベル
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「落ち着きたまえツンデレ君。ドジっ子食いしん坊君の作戦は成功している」
理香のアバターが落ち着かせるように友美のアバターの両肩を叩く。
「作戦は成功している? ドジっ子食いしん坊と笑屋本舗の数値は倍近くの差がついてるのよ! ここからどう巻き返せるって言うのよ!」
「ツンデレ君、よく見たまえ。数値的には徐々に巻き返しているじゃないか? 君にはドジっ子食いしん坊君が負けてるように思えるのかな? 一週間目と二週間目の推移を見たまえ」
理香のアバターが指で四角を描くと、そこにグラフと数値が表示される。
「はぁ? なに言ってんのよ? あんたの目は節穴? 倍近くの差がついてるのよ! ドジっ子食いしん坊の一週間目と二週間目の推移なんて……何よこれ!?」
友美は愛の作品の数値が倍以上に跳ね上がっている事に気付いた。そしてそれは三週間目も愛の全体的な数値が倍以上なら、笑屋本舗に勝てる可能性があるという事だ。
「ツンデレ君、この数値を見たのなら、 ドジっ子食いしん坊君を少しは信用しても良いんじゃないかな?」
「数値? 難しい事は分かんないわ! ドジっ子食いしん坊が勝てるかって聞いてるの?」
理香のアバターが見せるスマホのグラフと数値の推移を幽美のアバターが画面をスライドさせ、消してしまうと、混乱している友美のアバターを睨んだ。
「数値は関係ない。わたしはドジっ子食いしん坊……愛の面白い作品を信じる!」
「そうですわよ! 数値がなんですか? どんな差をつけられても、勝つ事を信じてあげるのが、仲間です! ツンデレツンデレさん、中二病さん、ドジっ子食いしん坊さんの作品を面白いと思ったのなら、最後まで信じてあげなさい!」
床に膝を突いていた書也のアバターは幽美とエロスの言葉に促されるようにゆっくりと立ち上がると、顔を上げ、愛のアバターがいる方向を見た。
「先輩、弱気になってました。俺! 最後までドジっ子食いしん坊を信じます!」
「そうね……中二病が言うなら、わたしも信じてみるわ。だってドジっ子食いしん坊の小説、面白かったわよね? 何で負けてんのって感じだし」
「いや……愛君が私の理論で勝つと言っているのだから信じたまえ。それとも二人は私の理論をそんなにも信用できないのかね?」
書也と友美は互いに顔を見比べた後、胡散臭そうに理香を見て、沈黙する。
「そこで黙らないで欲しいのだがね」
「ええ味出しとるけどな、話の作りが甘いんじゃへんの?」
笑屋本舗のアバターが愛のアバターの胸を噛み、その白い血をすするようにその舌で舐めた。
(ドジっ子食いしん坊の話、面白かったよな? 何で負けてんの?)
(こんな僅差ついてたか? 同じくらいの数値じゃなかったか?)
VR画面にそんなコメントが流れ、観客もざわつき始める。
『おっと!? この観客の反応は何を意味するのか?』
「何や? うちの漫画が負けるはずがあれへん」
その時、ドスッという音と共に笑屋本舗のアバターの脇腹に鮮血が舞う。その脇腹に刺さったは愛のアバターが持つキューピッドの矢であった。愛のアバターが力強くその矢尻を笑屋本舗の脇腹に刺していたのだ。
「わたしも! 負ける訳にはいかないんだよ!」
狩猟者のような獲物を睨む目が、天使であるはずの愛のアバターが笑屋本舗のアバターを睨み続けているのだ。
『では、数値を見てみましょう! 笑屋本舗の閲覧数は12500、ブックマーク数618、いいね数310、コメント数16。対するドジっ子食いしん坊の閲覧数は12000、ブックマーク数609、いいね数310、コメント数13。なんと! ドジっ子食いしん坊、笑屋本舗に追いついてきた!』
「そんなアホな! あれだけの差があったんやで! どうしてこないな事に!?」
「うわああああっ!」
愛のアバターは笑屋本舗に組まれたまま、叫びながらドスドスと矢尻を突き続ける。愛のアバターの矢尻は笑屋本舗の腕や肩、胸、首に突き刺さり、紅い鮮血を飛び散らせる。笑屋本舗のアバターもひたすら愛のアバターの腕や肩、胸、首を噛み続け、白い鮮血を飛び散らせた。
しばらくして、愛のアバターと笑屋本舗のアバターもどちらも動かなくなった。
『なんと両者ダウン!? これはどういう事か? 両者の数値を見てみましょう。笑屋本舗の閲覧数は22500、ブックマーク数1209、いいね数600、コメント数21。対するドジっ子食いしん坊の閲覧数は22410、ブックマーク数1210、いいね数600、コメント数25。なんと! ドジっ子食いしん坊と笑屋本舗の数値は、ほぼ同点!。次にポイントだが……笑屋本舗の合計ポイント38010。ドジっ子食いしん坊の合計ポイントは……なんと38010! 引き分けだ』
観客席から歓声が上がる。
『このドジっ子食いしん坊の土壇場の巻き返しはどういったマジックがあったんでしょうか? 教子先生』
聞姫のアバターが教子先生のアバターに聞くと、今度は無視せずに視線を向けた。
『ドジっ子食いしん坊による文章の言葉遊びが読者にとって斬新に感じたのかもしれない。文章をダジャレのように面白くする事で、よりコメディチックに描写している。ドジっ子食いしん坊の作品は異世界と日本では世界観が違うので、言葉の違いで異世界人が勘違いして、暴走する展開にしていた。例えば天皇と聞いて、天にいる王と勘違いして、飛空艇で空を飛んだり、政権を気にしていると言ったら、武器の聖剣だと勘違いしたり』
『なるほど、誤字脱字の弱点をダジャレに変換した訳ですね』
聞姫がドジっ子食いしん坊に誤字脱字の癖がある事をほのめかす発言をすると、教子先生がギロリと睨む。
『誰が誤字脱字の話をしたんだ?』
『いえ、面白い発想の文章だと思います!?』
愛のアバターがラノケンが集まるエレベーターに転送されると、ラノケンメンバーは心配そうな面持ちであった」
「ごめんみんな、勝てなかったよ」
しょんぼりする愛のアバターに書也のアバターが優しく肩を叩く。
「気にするな。引き分けにできただけでも、凄い実力だ」
「うん」
書也が褒めると、愛のアバターは素直に喜んでいるのか、満面な笑みを浮かべた。
八雲瑠月
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