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第四十話:女王の帰還、逆襲の11人
朧月館を取り囲む静寂は、今や殺意に満ちた嵐によって粉砕されていた。
「……主様、待っていてください。今、助けに参ります!」
先頭を駆ける一花の瞳には、かつてないほどに昏い情念が渦巻いていた。自らの独占欲が隙を生み、最愛のあるじを汚らわしい蜘蛛の手に渡してしまったという、身を切るような後悔。それが今、彼女を静かなる死神へと変えていた。
「妾の……妾の獲物に触れた報い、その魂ごと噛み砕いてくれるわ!」
玉藻の九尾は天を焦がさんばかりの神気を放ち、行く手を阻む蜘蛛の群れを瞬時に炭化させていく。
「旦那様のアドレス、追跡完了したし……! 覚悟しろし、クソ蜘蛛ォッ!!」
カノンが展開した浮遊砲台が一斉射撃を開始し、洞窟の入り口を跡形もなく爆破した。
だが、噴煙を上げて崩れ落ちた岩の先、最奥の広間に辿り着いた彼女たちが目にしたのは、救済とは程遠い「絶望」の完成形だった。
蜘蛛の揺り籠:搾取の祭壇
「……あ、……あガぁぁッ!? ……ひ、あ、……だめぇぇッ! だして、ださせてぇぇッ!!」
洞窟の天井、巨大な肉厚の繭に半ば埋め込まれるようにして、僕は拘束されていた。
手足は強靭な糸で大の字に広げられ、外に出ているのは、涙と涎でぐちゃぐちゃになった頭部と、快楽の波に翻弄されて虚空を掻く両手だけ。
「あははっ! 遅かったわね、お馬鹿さんたち。……ほら、見てごらんなさい。あなたたちの『高貴な王様』の、この無様な姿を!」
広間の中心で、女郎蜘蛛が不敵に扇を広げ、僕の火照った頬を爪先でなぞった。
僕は、過敏毒と執拗な「経絡」への魔糸干渉によって、もはや自我が完全に崩壊していた。自らの意志で言葉を紡ぐことすらできず、喉を鳴らして熱い吐息を漏らすのみ。
その先端には、あの凶悪な「搾精ぜんまい」が、肉に食い込むほど深く装着されていた。
ガチ、ガチガチガチッ――!!
「あ、……あガ、あぁぁぁぁぁッ!!!」
ぜんまいが機械的な駆動音を立てて高速回転するたび、僕の身体は繭の中で弓なりに反り返り、激しく痙攣する。
寸止めによって限界まで煮詰められた黄金の霊液が、ぜんまいの強力な吸引によって、一気に、そして断続的に搾り取られていく。
「ぁ、が、ぁ……っ! ピュッ、ピュッて……出ちゃう、出ちゃうよぉぉッ!」
僕は、助けに来た一花や玉藻の顔を見ても、救いを求めるどころか、強制的な絶頂の快感に瞳を濁らせ、卑しく腰をヘコヘコと振ってぜんまいの刺激を乞うていた。
「……ッ!? 主様ぁぁぁーーッ!!」
一花の悲鳴が洞窟に木霊する。
かつて畏怖を持って語られた金角の王は、今や蜘蛛一族の「種」を培養するための苗床、ただ快楽を貪り、命を搾り取られるだけの「性奴隷」へと、その尊厳を塗り替えられていたのだ。
「……信じられない。旦那様が……あんな、メスみたいな声を上げて……っ」
カノンが絶望に唇を噛み切り、血を滲ませる。瑞稀、紅羽、小雪……他の女王たちも、あまりの惨状に言葉を失い、その場に立ち尽くしていた。
「見て、この黄金の輝き。……あぁ、なんて素晴らしい霊力かしら。あなたたちがちびちびと分け合っていた『命』を、わたくしが独り占めして、最高の道具に仕立て上げてあげたのよ」
女郎蜘蛛が、僕の金角に指を這わせる。
「……ぁ、……あぁっ! そこ、だめ……イッちゃう、イッちゃうぅぅ!!」
角に触れられただけで、僕は無様に腰を跳ねさせ、黄金の飛沫をぜんまいの中へとぶち撒けた。
「……許さない。……一匹残らず、塵も残さず、魂の最果てまで消し飛ばしてあげます……!」
一花の影が、洞窟全体を飲み込むほど巨大な「炎」の形へと膨れ上がった。その鎌が放つ熱は、女郎蜘蛛の魔糸さえも瞬時に溶かす。
玉藻の瞳が血の色に染まり、九つの尾が黒い太陽のごとき熱量を放ち始めた。
「妾たちの愛を汚し、主を玩具にした罪……万死に値するわ。……蜘蛛の分際で、天を仰ぐことすら許さぬ。貴様らの血で、この洞窟を赤く染め上げてくれる!!」
「あははっ! 怒りなさい、狂いなさい! ……でも無駄よ。……この男の身体は、もうわたくしの『味』を覚えてしまったんだもの! 助け出したところで、もう元通りにはならないわよ!」
女郎蜘蛛の不吉な予言と共に、数万の蜘蛛の群れが、僕を盾にするようにして乙女たちに襲いかかる。
「「「「「「「「「「「旦那様(あるじ様)を、返せぇぇぇッ!!」」」」」」」」」」」
11人の乙女たちの咆哮が重なり、洞窟を揺るがす大爆発が起きた。
僕の淫らな絶叫と、砕け散る岩石の音。
朧月館の全戦力と、狡猾なる女郎蜘蛛一族による、僕の「心」と「身体」を取り戻すための、凄絶なる奪還戦の幕が切って落とされた。