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ー10月になった。少しずつ、涼しくなってきた。
何度も何度も、瑠璃のところに行った。
『今日も、コスモスは綺麗に咲いてるよ。』
相変わらず、コスモスの花は綺麗だった。
とは言っても、
少しずつ、花が減ってきているみたいだ。
一部では、もう枯れている。
もう、見れるのもそれほど長くはないだろう。
寂しく見える。
『この子、枯れてる…』
琥珀が、枯れてるコスモスを見ていた。
『そうだな…』
季節的にも、変わり始めている。
長い間、咲いていたし、
弱いものから枯れていく頃だろう。
『植物って、生きてるのかな…』
植物は生きてはいない…
とは言えないかも?
『生きてるよ。』
『え、』
瑠璃が、言った。
『こんなに小さな種から芽が出て、茎が伸びて、葉っぱをたくさんつけて、綺麗な花を咲かせて、種を作る。それってもう、生き物だと思わない?』
たしかにそうだ。
こんな小さな種が、こんなに大きくなるんだもんな。
『自由に動けるわけじゃないから動物ではないとしても、生き物ではあると、私は思うよ。』
植物。
それは、生き物なんだ。
風が吹く。
コスモスが揺れる。
生き物、か。
多くの人たちに、遠くから見に来てくれるなんて、羨ましいな。
俺は、邪魔者扱いされるのに…
でも、寿命は短いみたいだな。
歩いて、近づく。
茶色くなって倒れているコスモスも、少なからずある。
もちろん、このコスモスも生きていたんだ。
綺麗な花を咲かせて、人々に感動を与えたうちの一つだったんだ。
『お疲れ様…』
枯れてしまったコスモスに言った。
『甘くんって、優しいんだね。』
『うわあぁ⁉︎』
瑠璃が、後ろにいた。
『驚かせちゃってごめんね。』
『べ、別に、大丈夫だし…』
心臓が止まるかと思った。
『って、優しくなんてない。俺は、優しさなんか捨てたんだよ。』
『どうして優しさを捨てちゃったの?』
『それは、優しくすればするほど、周りから舐められるからだ。優しくする必要を感じなくなった。損はしたくないからな。』
最近は、ちょっとずつ戻ってきてしまったかもしれない。
『でも、優しい方が、私は好きだなぁ、』
『そ、そうか…』
優しい方がいいのか。
2人になら、優しくしてもいいかもな。
『甘ちゃんは、植物も大切にする優しい人だよ?』
『はあ⁉︎』
な、何を言ってんだよ!
『私がね、お花を摘んだ時にね、甘ちゃんが、「お花が可哀想だろ!」って言ったの!』
『おい!それは…ほら、汚れたくないからだって言っただろ!あと、俺の真似すんな!』
『本当は優しい子なんだって知ってるよ?』
『お、おまえぇぇ…!』
琥珀は笑顔だった。
『そうなんだ〜』
瑠璃も笑っていた。
『はぁ〜』
疲れた…
『でも、恥ずかしいことじゃないはずだよ?逆に誇るべきことだよ。』
『ほこる?』
どういう意味だ?
『え、えと…いいことをしたから……』
瑠璃が、困っているみたいだ。
『まぁいいや。でも、恥ずかしいわけじゃ…ない…よ?』
『甘ちゃん、かわいい♡』
『おいごらそこ!静かにしろ!』
琥珀を指差す。
でも、笑っていた。
,,>_<,,
『やっぱり恥ずかしいんでしょ?』
『そ、そうだよ!恥ずかしいよ!何か悪いか!』
開き直ってみた。
『優しいのはいいことなのになぁ、』
『・・・』
『甘ちゃんってこんなに面白いんだね!』
『こぉ〜はぁ〜くぅ〜?』
圧をかけて言う。
『あ、ごめんなさい…』
琥珀は謝った。
『ふふふっ、2人は面白いのね。』
『面白くなんか…』
『面白いよ?』
瑠璃は微笑んで言った。
『・・・』
恥ずかしい…
『う、うるさい!もうかえる!』
俺は、瑠璃に背を向けて歩きだす。
『ま、待ってよぉ〜』
琥珀が後ろをついてくる。
『もう帰っちゃうの?』
『じゃあ、2人で遊んでこいよ。』
『3人の方が楽しいのにな…』
『知るかぁ!』
でも、戻って、
3人で、暗くなるまで遊んだ。
特に、大したものはなくて、
ただ歩き回って、
何かを見て、
人と会っては悪口を言われて、物を投げつけられた。
でも、3人なら、
怖く感じなかった。
この3人の誰1人欠けてはいけない、そんな存在だと思った。
2人でもいいけど、3人だからこそってこともたくさんあった。
『甘くんは1人だけ男の子だけど、寂しくない?』
『寂しくなんてない。そんなのは、関係ないだろ?違うか?』
『そうだね、関係なかったね。でも、甘くんの女装姿も見てみたいな。』
じょそう、ジョソウ、助走…
『じょ、そう?』
!
『除草⁉︎』
『女の子の格好をするの。』
『え”ぇ”っ”』
女の子の格好をするのぉ⁉︎
『それ、いいね!やろう!』
『ふあぁ⁉︎』
琥珀も、乗り気みたい…
『でも、できる?』
『残念だけど、今は難しいかな…』
た、たすかったぁぁぁ!
『私の服、着てみる?』
『ゑ?』
『私のでもいいよ?』
『よくないよ?』
何もよくない!
『なら、また、いつかね?』
『い、いつかですか…』
いいよそんなのは、
『もう、行くぞ!』
俺は、一番前を速く歩く。
『まってよぉ!』
2人が、後を追いかける。
枯れ葉が落ちてきた。
もう、秋も終わりに向かっている。
もう少しで冬が来るのか。
今年は、2人と冬を過ごせる。
幸せだろうな。
そう思った。ー
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