僕には凸さんという幼なじみがいた。僕には眩しすぎる人だった。
彼はもう居ない1年前。死刑執行された。
僕のせいで
僕が殺人を犯したから。
あの時凸さんに電話しちゃったから。だから凸さんは自己犠牲の元僕は生かされている。
そして僕はあるものを託されている。
凸さんとさもさんと僕の3人の夢。
それを叶えないと行けないのが僕の使命。
とりあえず僕は何とかニグさんの家の居候をやめ、警備の暑いマンションへと移住した。
やっと機は熟した。
ただがむしゃらにプログラムを組む
たまにべるさんからエペに誘われたが、もうななさんがいない限り、3人ですることは無い。
完成した時には季節が一回りしていた。
さもさんとはと言うとあれから一度もあっていない。
けど正直死んでしまいたい。
ふとした時に思い出す人を刺してしまった感触。屈託のない凸さんの笑顔。目の前まで迫ってくるパトカー。
全部全部嫌なんだ。
通院もめんどくさいしその度思い出して話さないと行けない。
幸い僕は精神的ダメージが大きかったということになっているので、逮捕はされていない。
それでも、、、嫌なのだ。
生きているのが辛い。
けど、、、さもさんには言っておかないといけない。
覚悟を決めた僕はさもさんにメッセージを送るのだった。
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当日。
ほぼ自室に篭っていたし、何もしていなかったので部屋は掃除機をかけるだけで、簡単に掃除は終わった。
「うたいさん」
「、、、!さもさん!開けるから待ってて!」
大丈夫。
大丈夫僕ならいける。
「わざわざ来てくれてありがとう。部屋は綺麗だし上がって上がって」
なんとなく気まずい。
お互いに思うところがあるんだろうなと痛感させられる。
「ゲーム、、、ようやく出せたんだね。」
気まずい空気が耐えられなかったのかさもさんが話題を振ってくる。
「うん。それが、、、約束であって僕の夢だったから。」
伝えなきゃ。
わかっているのに伝えられない。どう頑張っても濁してしまう。
最後の。
最後の覚悟を決めよう。
大丈夫。
この際どう拗れたってもう関係ない。
僕はどうせ死ぬつもりなんだから。
「それでね、僕さもさんに話さないと行けないことがあるの。」
言った、、、!
言えた、、、!
「僕が、、、」
「僕があの日、、、」
「1年前、、、」
「僕が凸さんを、、、」
「凸さんを殺し、、、たんです、、、」
あれ、、、?
凸さんを殺してない。
でも死刑執行にさせてしまったのは僕のせいで、、、
でも、、、
あれ、、?
わかんない、、、
さもさんが青白い顔をしていた
そりゃそうだ。
そんなことを今更言われてるのだ。
むしろこのまま殺されたっておかしくない。
「どういう、、、こと、、、?」
「、、、順を追って話すね」
「本当はあの事件の犯人は僕だった。あの時僕はようやくこの前出すことの出来たゲームに取り掛かれるそんな状態だった。でも、、、その矢先に前の家でノートの強奪にあってその時に、、、反射的に殺しちゃって、、、それで自分自身でもその後どうしていいのかわかんなくなっちゃって、、、」
精一杯順番通りに話す。
何度も話したこの内容。
きっと気が滅入ってしまうのは相手が幼なじみであるさもさんだから。
「もちろんあの時本当は、、、さもさんに連絡しようと思った、、、けど、、、せっかく警官になったさもさんの経歴を汚したくなくて、、、」
「でも、、、誰かに吐露したくて電話だったら大丈夫だって思って、、、凸さんに、、、電話を、、、したの、、、そしたら僕が上手く話せなくって。凸さんお人好しだから、心配して僕の家来ちゃって。そしたら全容聞いて、そのゲームを作れるのはお前だけだから、逃げろって、、、俺が肩代わりするから、、、って、、、言って、、、」
視界が滲む。
「そしたら、、、どんどん話が進んでいって、気がついたら、最高裁で裁判が行われてて、、、死刑判決で、、、僕は、、、僕は僕は、、、何も悪くない凸さんに罪を肩代わりさせて逃げて逃げて逃げて、、、僕だけ生きちゃって、、、」
そうだよ、、、僕は、、、僕は、、、
なんで生きてるの、、?
「うたいさんは、、、悪くないよ」
帰ってきたのは予想もしない言葉だった。
「さもさん、、、!でも僕は、、、僕は!凸さんを死刑に追いやった張本人で事件の真犯人なんだよ、、、!それなのに、、、!さもさんの恋人である凸さんを殺したのは、、、!」
違うこんなこと望んでない。
僕を僕をしっかり悪者にして欲しい。
「それを言ったら凸さんに手を下したのは俺だ、、、」
「えっ、、、」
思考が止まる。
いやそんなことは、、、
まさか、、、!
「死刑執行の、、、ボタンを、、、押したのは、、、俺、、、だから、、、」
「けど僕があの日凸さんに話をしなかったら、、、」
息が詰まる。
「うたいさんは何も悪くない。凸さんも何も悪くない。凸さんは、、、きっとうたいさんに俺らの夢、、、託したかったんだろうね。」
「それで、、、話を戻すね。あの後凸さんが死んでから僕は軽く精神病患っちゃって今は落ち着いてるんだけど、、、元々ニグさんの家に居候してたんだけど、迷惑かける訳にも行かないし、もうこんなことしたくないって思って今わざわざオートロックのタワマンに住んでる、、、半年ぐらい前かな、、、?大分落ち着いてきてそれでようやくゲーム作れる段階になって。約束果たすためにも無我夢中で作ってそれでようやくできたの。」
「頑張ったね。」
「うん。けど、、、そうじゃないと凸さんに笑われちゃうから。最期の面会の時凸さんが託したぞって真剣な目してたの。だからきっと今喜んでるかな。凸さん。」
「うん、、、!きっと喜んでる」
「恋人だったさもさんが言うなら大丈夫か。」
きっときっと大丈夫。
もうさもさんにも言おう。
「それでね。僕。」
「死のうと思うんだ。」
すんなりと言えてしまった。
ずっと思ってたから抵抗がなかったというのもあるのかもしれない。
まぁそんなことどうでもいっか
「だからさ。死ぬ前にさもさんに伝えなきゃなって」
「僕ねどっか遠いところで死んでこようと思うよ。」
「待って、、、!」
「俺も、、、一緒に行く。」
あーぁ、、、
僕一人だけで死のうと思ったのに。
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「べるさんべるさんはい。約束通り」
「はいはい。編集データこれね?流石に終わらせて欲しかった気もするけど、、、」
「しょーがないじゃん!やるきないんだもーん」
「私まだツーオペの編集あるんだけど???」
「いーじゃん幸せでしょ?」
「、、、まぁいいけども、、、」
こうして僕は最後の動画をべるさんに委託して死の旅への準備をするのだった。
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鞄に財布。
ナイフを隠し持つ。
さて、、、
そろそろ行こうか
「さもさん!準備できた?」
「うん!」
「行こっ!!」
そうして闇の立ち込める我が家と別れを告げた
これでいい。
「僕色々あって外全然でてなかったんだよね〜海行こ海」
「いいね〜俺も行けてなかったし」
最後に見ておきたかった感はある。
薄暗い山の方へ行くぐらいなら、海の方がいい。
夏だし。
まぁきっと凸さんなら「え〜海なんてめんどくさいから川でいいじゃん!」って言うんだろうな〜
でもどうだろ?そう言いながら当日ノリノリで準備してそう。てかしてる
何本も何本も電車を乗り継ぐ。
割と浜辺があるような海は遠い。
着いたのは田舎めな無人駅だった。
人のひの字すら存在していない。
「ってもう夜じゃん!」
「ね〜」
「めんどくさいし適当に駅の一角で寝ちゃう?」
「あり〜」
あんまり暑いとも思わなかったしこれでいい。
ベンチに座ってさもさんに体重をかける。
僕と違ってしっかりしてるなぁ。
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ふと目が覚める。
目を開けると初めての朝焼けを目にした。
朝ってこんなに綺麗なんだ、、、
最後にいいもの見れたかも。
ここから海までは歩いていける、、、
歩いていこっかな
そんなことを考えているとさもさんが目を覚ました。
「ねぇさもさん!さもさん!こっから海近いらしいよ!!歩いてこ!!!」
「いいね〜」
歩き始めて1時間ぐらいだろうか、、、
視界がぐらついていた。
暑い。
日差しが痛い。
「さもさんごめん僕限界」
さすがにこんな死に方はしたくない、、、
あっ、、、無理、、、
目を覚ますと見覚えのない場所にいた。
少しひんやりする。
でも今はそれが心地いい。
「ん、、、あれ?ここどこ?」
「あっうたいさんおはよ」
「あれ、、?無人駅?あっ僕ダウンしてたのか、、、ありがと」
さもさんが運んでくれたのか、、、
ダメだな僕って、、、
いっつも誰かに迷惑かけて、、、
「今日はもう夕方だしこのままここで休んじゃおっか」
「うん」
「ねぇうたいさん」
「、、、ん?」
「誰にも好かれる主人公なら汚くなった俺達でも見捨てずに救ってくれるのかな」
ぼくもそんなこと本気で考えたっけ
でも助けてくれることはない
今もこの先もずっと。
「さぁ、、、きっと救ってくれはしないんだろうね。いつも、、、そうだから」
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次の日。
目が覚めたのは7時ぐらいだった。
いつもだったら眠くて二度寝する時間だが昨日から結構寝てるのもありすんなりと目を覚ます。
むしろさもさんの方が眠そうだ。
「さもさんさもさん!!起きて!行こっ!」
そう言って今日は珍しくさもさんの手を引っ張るのだった。
そして僕は、、、
今日死のうと思う。
さもさんを残して。
さもさんを巻き込んだことほんとに申し訳ないと思う。
さもさんのその手はまだ、、、汚れていない。
汚させる訳には行かない。その後はべるさんが全部どうにかする。
それでいい。
そんなことを考えているうちに波打ち際につく
海水が冷たい。
夏なのに田舎だからか人がいない。
「さもさんっ!えいっ!」
そう言ってただ海を眺めていただけの彼に水をかける。
ははっと笑って水を掛け合う。
懐かしいな。
「反撃っ!」
「あははっこんなことするのも久しぶりだよね」
「ね!」
ずっと続けば良かった。
ここに凸さんのいる3人の生活が。
ただもうどうしょうもない。だから
だから、、、
僕は今日死ぬんだから。
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紅く染まる夕方。
2人で大きな流木に腰掛ける。
もういいかな。
ナイフをズボンから取って波打ち際まで行く。
何も知らないさもさんはきょとんとした顔をしている。
ナイフを見て彼の顔がどんどん青ざめていくのがわかる。
でも終わりにしよう。
「死ぬのは、、、僕一人でいいから。」
怖いと感じる。
けどけど僕がやったことが返ってきてるだけ。
刃を僕の首にかける。
手首を伝って血の紅が見える。
ドクドクと脈打つ
これが僕の最後。
ふと頭の中に電流が走っているかのごとく、あの日の人を刺してしまった感覚と凸さんを身代わりにした罪悪感が僕の身にまとわりつく。
これ、、、で、、、
情けない僕は、、、
人生に終止符を打った。