🩷「でさ、〜で、〜〜〜が、〜〜なんだよ!すごくない???」
💙「うん、すごいね」
🩷「翔太もわかる!?〜〜の、何がいいって〜〜のさ、」
💙「…………」
佐久間の言ってることがほとんど分からないので、とりあえず笑顔で聞いてるけど、口角が疲れて来た。佐久間が今ハマっているアニメの話だ。
俺たちは付き合ってまだ日が浅い。
でも、今回は俺が悪い。
佐久間を喜ばせたくて、今は何のアニメが面白いの?なんて聞いてしまったから。
話し出したが最後、もう小一時間は佐久間が一人で喋っている。面白がって聞いているふりもだんだん疲れて来た。
趣味についてはあまり共通点がない俺たち。
それでも好意を伝えられて、俺もそばにいたいと思ったから、隣りにいる。俺はもともと恋愛に関しては受け身体質なのだ。
一方の佐久間は、身体は小さいくせに、どちらかと言うと積極的だ。付き合う前から恋愛に関してはガンガンいく方だと自分で言っていた。
なんでこいつは、俺のこといいなんて思ったんだろう。話してても大して面白くないだろうに。一生懸命に好きなアニメの良さを話し続ける佐久間を見ながら、俺はぼんやりとそんなことばかり考えていた。
ドラマの撮影帰りに、佐久間から急に連絡が来て、家で待つように言われ、俺は言われた通りに佐久間の家で大人しく待っていた。
2匹の猫が、人見知りをして、俺を遠巻きで見ている。撫でようとしたら逃げられて、しつこくされるのも嫌だろうと放っておいた。
退屈なのでテレビをつける。
佐久間こだわりの大型テレビ。画質も綺麗で音もいい。アニメを見るのにこの画質が要るんだろうかと思いながら、番組をザッピングしていたら、どうしても見たかったドラマの録画を忘れていたことに気づいた。
佐久間が帰らないから家にも戻れない。
悪いとは思ったけど、俺は佐久間のレコーダーに録画をした。操作がわからなくて、少し手間取ったが、時間になってなんとかレコーダーが動き出したので安心した。
それからしばらくして、佐久間が帰って来た。
🩷「おっちー!ただいまーー!」
佐久間が勢いよく部屋に入って来て、俺に抱きついた。
💙「お、おぅ。お帰り」
🩷「マジで翔太がいた!癒される!もう好きしかない!!」
そんなことを情熱的に早口で言って、何度もほっぺにキスされたけど、自分が猫になったみたいでくすぐったいし、恥ずかしい。
💙「約束されたら、そりゃ、いるよ」
🩷「んー、でも、まだ、不安じゃん?俺ら日が浅いし。その…」
💙「ん?」
🩷「翔太、俺にあんまり好きって言ってくれないしさ」
💙「それは…」
🩷「だあっっっっ!!!」
いきなり大きな声を出されて、びっくりした。佐久間は言いたいことだけ言うと、返事は聞きたくないとでも言うように猫をかまいだした。
🩷「ツナちゃーーん、シャチーーー!!!」
俺だってアイドルだ。
嘘の好きならいくらでも言える。
でも、佐久間が欲しいのってそんなんじゃないよな…。
本当に自分のよくないところだと思うんだけど、俺はよっぽどじゃないと人に本気で好きって言えない。自分は人にたくさん好きって言われたいくせに。
💙「じゃ、また」
🩷「うん、また……」
2人で世間話をして、今日も遅くなる前に帰る。俺たちの関係は、ただのメンバーだった頃とあんまり変わっていない。佐久間が玄関先で俺に何か言いたそうにしているけど、佐久間が言わないなら俺からも聞かない。
家に帰り着くか着かないかのうちに、佐久間から電話がかかってきた。 忘れ物でもしたかなと電話に出たら、佐久間が焦っていた。
🩷「翔太、テレビいじった???」
💙「あ。うん、ちょっと録りたい番組あって…」
🩷「はぁぁぁぁぁぁ」
これ見よがしに大きなため息。
俺の話も聞かずに、明らかに不機嫌になったのがわかった。
💙「なに?なんで怒ってんの?」
🩷「俺が、アニメ好きなの知ってるよね?〜〜はこの間、話したやつだし!!!」
💙「え?」
🩷「録れなかったんだけど!翔太のせいで!」
💙「それは…ごめん」
🩷「はぁ、もういいよ。じゃ!」
…ガチャ切りされてしまった。
いや、俺が悪いけど、家に呼ばれたのも突然だし、少しはこっちの言い分を聞いてくれてもよくないか?
俺はむしゃくしゃして、その日はあんまり眠れなかった。
💛「ねえ、佐久間が落ち込んでるけど、お前らなんかあった?」
💙「は?」
照が変なことを言うので、佐久間を見た。
佐久間は俺と目が合うと、とぼとぼとこっちへ歩いて来た。
🩷「翔太、今ちょっと話せる?」
💙「別にいいけど…」
あれから3日。
佐久間から連絡もなく、俺からも連絡をせず。
でも佐久間は親友の照には何か話していたようだ。
空き部屋で2人きりになった瞬間。
佐久間が床に膝を着いて、いきなり土下座して来た。
🩷「ごめんっっっ!!!」
💙「えっ………」
🩷「俺が悪かった…っ!許してくれっっ!!」
💙「なに?どういうこと?」
佐久間はようやく顔を上げた。なんだか泣きそうに見える。
🩷「一方的にキレて…ごめん。俺のこと、嫌になった?」
💙「いや……別に」
🩷「マジでっっ?????」
泣きそうだった顔が、驚いた顔に変わり、最後には笑顔になった。
そして、いつも以上に力いっぱい抱きついてきた。 佐久間の勢いがすごくて、俺は後ろによろけた。
🩷「ごめっ!またやっちゃった…」
💙「……ふはっ……はははははっ」
俺は、腹を抱えて笑った。
佐久間って、本当に面白い。なんでそんなに表情が変わるんだ。なんでそんなに何もかもいきなりなんだ。なんでそんなに憎めないんだよ。
🩷「なっ!?なんで笑ってんだ???」
💙「いや…好きだなあと、思って」
🩷「………っ!!!」
佐久間は真っ赤な顔をして、今度は勢いじゃなく、優しく俺を抱きしめた。
🩷「初めて、好きって言ってくれたな」
💙「…そうかも」
🩷「キスしていい?…ほっぺにじゃなくて」
💙「うん」
そして初めて、佐久間の唇が俺の唇に触れた。
おわり。
コメント
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さくなべ可愛い🩷💙 尊…さすがです
大事なことなので書きますが、このカップルはさくなべです笑。 すの学で表現したい2人が固まったのでこちらの作品書いてみました。あんまり恋人関係が思いつかない組み合わせではありますが、まきぴよ、やれます、たぶん🩷💙 朝までに他の組み合わせでもう一つ短編か中編書けたらいいな。