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目が覚めた。どうやら、ずっと床で寝ていたらしい。私は起き上がるために手に力をいれ…この感覚は最初に起きた時と同じだ。そのデジャブは、私の希望を壊すには十分だった。やっぱり夢じゃない。ドアを開き、廊下に出た。今は何時なんだろう。木材の湿っぽく少し焦げた臭い、熱を帯びた風が充満していた。あの出来事を忘れられないものにする。本当に気分が悪い。私は何を思ったのか、禁忌のはずの部屋へ入った。肉塊が隠された部屋だ。ドアを少し開き、顔をしかめた。あの臭いが部屋を満たしている。なんだかそのガスは、目玉の奥まで響いてきた。鼻をつまみ、目を限界まで細くした。部屋の奥へとにじり歩き、押し入れをあけた。ただ、私はそこでありえない光景を見た。いや、厳密には見なかった。見えなかった光景を見たんだ。
死体がない
黒鵺の腐肉が、なくなっていた。私は驚き部屋を見回す。何も無い部屋。おかしな状況と死臭で倒れそうな体を必死に支え、部屋を後にした。
まだ調べていない場所を調べよう。この際、外が見れればそれでいいのだ。廊下は右へ続いていた。そこを曲がった先は、1番手前に書籍がある。あれ、書籍がずぶ濡れで消化されている。炭を積んだその部屋は、高い湿度を保っている。誰かが消化したのだろうか…
書籍を通り過ぎ、すぐ近くの空間を見た。居間だろうか、ここだけ床が畳。襖のような壁だ。そこにはひとりの少女がいた。山縣 真宵だった。彼女は単独行動が多く、あまり目にしない女の子だ。
咲「ねえ。なにしてるの?」
真宵「ん。食べ物探してるの。どこかにはあるよ。きっと。」
彼女はパーカーの袖をもじもじと擦りながら言った。たしかにここへ来てから、何も食べていない。私達は居間にあるいくつかの木箱を開け、中を調べた。そこにあるのは、ほこりかぶった酒瓶がたくさん入っていた。4箱のうち、3箱はそうだった。残りのひとつには、果物だろうか。ぬるくなっているが、食べれないことはない。
真宵「うぇ、これ食べたくないね。」
咲「そうだね、ちょっと気味悪いよね。」
他にも色んな部屋を調べた。食べ物探しはどんどん人が増えていき、いつの間にか全員が屋敷中を探索していた。しばらくして、みんなが居間に集まり結果を報告した。
真宵「私達ふたりは、お酒と果物をちょっと見つけたよ。」
梟「僕と喧士は倉庫の中を調べたんだけど、何も無かったよ。」
他のところも似たようなものだった。
澄「この屋敷にある飲み物は、酒瓶だけね…。それ以外だと、まともな液体はない。」
そう言うと、彼女が顎に手を添え、とんでもないことを口にした。
澄「この中に、私達を誘拐した黒幕がいるわ。」
みんなが澄を凝視した。話しが跳びすぎている。何を言っているのか分からない。
天天「いやいや、なんでそうなるのよ!!」
久遠「えぇ。逆に、ここにまともな食料がないなら、この中に黒幕がいるなんてありえないわ。」
みんなの言い分を遮るように澄が口を開く。
澄「みんなは見た?書籍の状態を。」
喧士「あ、あぁ。昨日、ライターのせいで大火事になっちゃったよね…」
菖蒲「う、うぅ。私俺さん…!」
澄「そう。書籍は煤まみれでボロボロだった。ただ、そこには消化された後があったわ。」
そういえば、書籍はかなりずぶ濡れで、水溜まりができていた。
澄「じゃあ、あの火はどうやって消化されたのか…。きっと私達が眠っている間に行ったのでしょうけど、あの書籍を消化するための物はない。もちろん屋敷にはお酒しかないし、そんなものは火を消せない。きっと大量の水が使われたはずよ。」
真宵「で、でも水なんてここには…」
澄「そうね。だから消化した人物は、外との繋がりがある可能性が高いわ。外の人物がここの火災を知る方法はないし、最低でも私達の中に裏切り者がいることは確かよ。」
澄の言葉には、説得力があった。その力は、私達を戦慄させる。みんな、自然と周りを見回す。疑心暗鬼の目をしていた。
喧士「じゃ、じゃあまとめると、僕らの中にいる裏切り者が、外から水を持ちだして、あの書籍の消火活動をしたってことだよね?」
蘭々「てかなんで火災起きてんのにみんな寝てんだよ!!おかしいでしょ!!」
天天「ま、まぁ書籍は廊下を曲がらないと見えないし、みんなショックで忘れてたんだよ。」
真宵「そもそも私や梟はその火災が起こる前からずっと寝ていたし。」
猟「いや、そんな話しよりもだ。こんなかにいるらしい裏切り者を見つけねえと…」
久遠「ほ、本当にいらっしゃるの??」
澄「もちろんあくまで推測よ。まだ違う可能性だってあるわ。」
居間ではガヤガヤと話し合いが行われたが、結局それ以上の進展はなかった。