テラーノベル
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私と真宵、菖蒲の3人で、ひとつのりんごをかじった。ここまで疲弊した体だと、とろみがかったぬるい果汁すらオアシスだった。気がつけば、3人が囲う果実は可食部を失い、魚の骨のように細い細い芯だけになった。
この中に、黒幕がいる
澄の放った一言は、深く刺さっていた。あの話し合い以降、私は真宵と菖蒲の3人で行動している。私達3人は仲間…そう思っている。うっすらふたりも疑ってしまう自分が嫌いだった。
それ以外のみんなとはあまり喋らなくなってしまった。特に猟なんかは、会っただけで早歩きで逃げてしまう。まぁ、理解できないわけでもないよ。私だって不安は大きかった。
真宵「黒幕…誰なんだろうね。」
咲「えっ…いや、この中にはいないよ!」
菖蒲「そ、そうだね!!いないよ!!」
真宵「えー。でも、いた方が良くない?」
私と菖蒲は真宵の言葉に驚いた。
真宵「だって、この中に黒幕がいれば、その人をみつけて、説得させればここを出られるんだよ?」
真宵の意見は、考えたことがない視点だった。確かに私達の中にいた方が、好都合かもしれない。
菖蒲「…私達の中にいたとして、どうして私達の中に混ざっているのかな?メリットなんかないよね?」
真宵「私もそれを考えたんだけど、呪いが関係しているかもしれないなって。だって、人の記憶を消して、しかも異形にしちゃうんだよ?きっと相当な代償が必要だったはずだよ。例えば、呪いをかけた人達から離れられないとか…そんな感じの。」
咲「この事件に呪いが関わっているなら、おかしくないよね…」
菖蒲「じゃあ、もっと呪いについて調べてみない?」
私達は菖蒲の意見に同意し、書籍へ向かった。が、そういえば書籍の本はほとんど燃えてしまったんだった。
真宵「あーあ。そういえばここの情報はぜんぶ無くなったんだよねぇ。」
菖蒲「えぇえ。ど、どうしよお。」
彼女は混乱を声にだし、手で頭をかきながら眉が歪み、瞳が潤いだした。
咲「だ、大丈夫だよ…そうだ!澄に聞こうよ。ここの本を読みこんでたはずだよ!!」
そう言って、私達は部屋を調べに行った。
しかし、彼女は部屋にはいなかった。どこの部屋にも姿がない。どこに行ってしまったのか。私達はまだ見ていない場所に行った。廊下の1番奥、薄暗い倉庫だ。電球が弱く光り、足音に合わせてぐしぐしと木が歪み音をたてる。倉庫のドアをそっと開ければ、そこには彼女がいた。
頭部だけになり、冷たくなり、動かなくなった彼女が…
私は声を出せず、ただ口を押えて、その場にしゃがみ込んだ。
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