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北畑くんは私のシャツをもう少し強く引き、そして振り向く私に顔を近づける。



えっ、な、なに!?



さっきのは冗談じゃないの!?



「ちょ、ちょっとやめて! もう先生くるし、からかわないで」



「ひどいなー、俺が冗談言ってるように見える?」



「見えるよ!ってか本気に見えないじゃん!」



「おー、それはするどい指摘だな。


ボケてるのかと思いきや、大石さんなかなかするどいねー」



「はぁっ? ちょっと本当にやめて……」



「じゃあさっきの指摘がするどかったから、手は離してあげる。


先生来たからまたあとでね」



言われて前を向けば、英語の先生が教卓に立っていた。



「それじゃあ授業始めます。教科書のP123を開いてー」



授業が始まり、かなりほっとしたけど、心臓はバクバク鳴ったままだ。



な、なんなの本当……。



い、いやそれどころじゃない、もうすぐあてられるんだから、見直ししとかなきゃ―――。










「じゃあ次の文章の和訳を、大石さんお願いします」




き、きた!



立ち上がってさっき訳したのを答える。



でもどうやら最後のほうが違ったらしく、もう一度訳し直してと言われてしまった。



えっ、うそ……。



そのまま飛ばして次に行ってくれると思っていたのに、嘘でしょー……。



焦っていると、後ろから小さな声が聞こえた。



「”彼女はアメリカのことをよく理解して、文化や習慣の違いを日本の友人に伝えたいと思ったから”」




へ……?



北畑くんがなにを言ったのか、一瞬わからなかった。



でも英文を見続けていた私は、数秒後にやっと理解する。




「え、えっと……。


“彼女はアメリカのことをよく理解して,文化や習慣の違いを日本の友人に伝えたいと思ったから”」




言われた通りに答えると、先生は「そうです」と頷いて、次の生徒をあてた。









次の人が訳し始めると、私はそっと椅子に座る。



そのまま少しだけ後ろを向いて、小声で「ありがとう」と言った。



目が合う前に前を向き、授業に集中しているふりをする。



でも心臓は鳴りっぱなしだし、今答えてる子の英訳だって頭に入らない。



な、なに?



なんで助けてくれるの?



これも気まぐれなのかなんなのか、北畑くんの考えていることはわからない。



かっこいい転校生がうしろの席になってラッキーだなんて思ったけど、前言撤回!



ずっとこんなんじゃ私、絶対授業に身が入らない!



ひとりでいっぱいいっぱいになっている私のことなんて、それこそどう思ってるんだろう。




ぜんぜん身が入らないまま授業が終わってしまい、私は急いで椅子から立ち上がった。







も、もう。



休み時間はできるだけどこかに逃げよう。



そして私への興味?がなくなるのを待とう。



席を離れようとした時、ぱしっと手を取られた。



えっと見れば、視線の先には北畑くんの手。



「な、なに?」



「いや、なんとなく」



「な、なんとなくならいいでしょ、離して」



「だって大石さん、俺のこと避けるような気がしたから」



「そ、そんなことないよ。


あ、さっきはありがとう。助かった」



なんとか笑ってお礼を言い、手を引っ込めようとする。



だけど私が手を引いたせいで、北畑くんも椅子から立ち上がった。



(えっ)



驚いていると、北畑くんはさわやかな笑顔で私に言う。



「いいえ、どういたしまして。


それで、これからどこに連れて行ってくれるの?」








「はっ、はー!?」



なんなのこの人!



っていうか手、離してよ!



私がさっきより強い力で手を引っ込めると、北畑くんの手はあっさり離れた。



もう……本当疲れる。



というか、こんなのが続くと一日が終わるころにはクタクタになっちゃうよ。



「わかった。それなら来て」



言って、私は後ろのドアから廊下に出た。



ちらりと振り返ると、北畑くんも笑ってついてきている。



「どこいくのー? もしかして屋上?」



「屋上って……うちの屋上、いつもカギかかってるよ」



そんなことを言いながら、廊下を歩いた先で、私は足を止めた。



「ここ。ここがこの階のトイレだから。場所知りたいだろうと思って。


じゃあ……」



踵を返そうとした時、ぶはっと大きな笑い声がした。



えっと振り返ると、北畑くんはお腹を抱えて笑っている。








「ど、どこ連れて行ってくれるのかと思ったら、トイレって……!


ほんと大石さんいいキャラしてるよね、笑える……」



北畑くんは心底おかしいようで、私を見てずっと笑っている。



大笑いしていてもイケメンなんて、それこそいいキャラだと思うけど……。



私はそんなこと言われたこと、今まで一度もないから……!



「場所知っとかないとこれから困るでしょ。


じゃあ私、教室戻るね」



なにこれ、本当疲れる……。



夏休みの登校日に席替えしたばっかりだけど、早く席替えしてくれないかな……。



そんなことを思いつつ教室に向かっていると、ぐいっと手を引かれ、階段横の壁に背中があたった。



(えっ)



なに? と思うより先に、視界いっぱいに北畑くんの顔が映る。



それから頬になにかがあたり、数秒後、視界が開けていく。





え……。



今のって……。




キスだとわかった時、頭の中が本日二度目にフリーズした。




「ふたりっきりになれるところに連れて行ってくれるのかと期待したら、マジで期待以上だったよ。ホント気に入った。


大石さん。下の名前はなに?


次から下の名前で呼ばせて」





















きみが付き合ってくれるまで

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私もされてみたいなと思いました!読んでてこっちもキュンとなりました!

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