🖤蓮side
俺たちみたいな人間は、俺たちだけの居場所を持っている。
このバーもそう。
一見、どこにでもあるバーだが、客のほとんどが「普通」の恋愛ができない人たち。
昔付き合っていた先輩に連れて来られてから、別れた今もこの店は俺の行きつけになっている。
ある夜、店内に見慣れた男を見掛けて、俺は思わず声が出た。
🖤舘さん…
目が合った。
向こうも少し驚いたようだ。
舘さんは見たこともない男と一緒だった。
ゆるいパーマをかけた、可愛らしい顔立ちの細身の男の子。
笑った顔がほんの少しだけしょっぴーに似ていた。
無粋だと思い、知らないふりをしていたら、向こうの方から声を掛けてきた。
❤️目黒
🖤…こんばんは
❤️こんなところで会うとはね
🖤俺も驚きました
嘘だ。本当はちっとも驚いてなどいない。
予想が確信に変わっただけだ。舘さんの表情から、向こうも俺に同じことを感じているのだとわかった。
舘さんの腕にまとわりついていた男が、甘えるように袖を引いている。
❤️じゃあもう俺行くわ
🖤はい、また
二人はそのまま、店を出て行った。
俺は二人を見送ると、カウンターの残りの酒を一口で煽った。酒はいつもより不味く感じた。
俺も今夜は待ち合わせでここへ来ている。
舘さんのことは言えない。
コメント
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この作品は大切に書きたい。 考えすぎないように、でも大切に書きます。