テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「……ちなみに、どの程度のものを望んでいるの?」
なんとも言えない顔でそう聞かれて、ダフネは待ってましたとばかりに身を乗り出した。
「だから言ったでしょう? 全部、最高級のものよ。ドレスだって何着も必要だわ。王太子妃になる女が、いつも同じものを着ているわけにはいかないもの」
「旅の途中でそんなに何着も着替えるつもり?」
「旅の途中だけの話をしてるんじゃないわよ! 向こうへ着いてからだって必要でしょう?」
そんなことも分からないのかと睨んでやると、ウィリアムは「ああ、そう……」と気のない返事をする。
あちらにだって仕立て屋はいるだろうし、服飾店だってあるはずだ。ましてや目的地は王城なのだから、王太子妃に相応しい品くらいは用意してくれるだろう。
(でも……)
所詮はマーロケリーのものだ。
デザイン性、素材、すべてにおいてイスグラン帝国のものに適うはずがない。
となれば、ここから出来るだけたくさん最上級の品を取り揃えていく方がいいに決まっている。
(辺境の不格好なものなんて、出来れば身に付けたくないもの!)
あちらで落ち着いてからならば、イスグラン帝国から仕立て屋を呼ぶのもありかもしれない。
でも、移動してすぐ、そういうものが手配できるとは限らなかった。
ならば――。
「靴もドレスに合わせて揃えなくちゃ。それから宝石も。首飾りに耳飾り、腕輪でしょう? 髪飾りだっているわ。マーロケリー国の人間なんかに、イスグラン帝国の侯爵令嬢がみすぼらしいなんて思われたら腹立たしいもの」
「……それなら、みすぼらしく見えない程度でいいんじゃない?」
「よくないわよ!」
即座に否定する。
「どうせなら羨ましがられるくらいじゃないと意味がないでしょう?」
「……誰に?」
「マーロケリーの人たちによ!」
何を当たり前のことを聞いているのだろう。
ただでさえ、行きたくもない国へ行かされるのだ。
そこでまで我慢を強いられるなんて冗談ではない。
「それから侍女も連れていくわ。私一人で行けるわけないでしょう?」
「それはもちろん必要だろうね」
「言っとくけど、一人じゃ足りないから!」
「……え? 何人連れていく気?」
「それはこれから考えるわよ。身の回りの世話をする者と、衣装の管理をする者と、それから――」
#ハッピーエンド
高瀬船
885
#溺愛
星キラリ

6,282
#異類婚姻譚
和泉
420
「ダフネ嬢」
話の途中で名前を呼ばれ、ダフネはムッと口を閉ざした。
「なによ」
「嫁入り道具や向こうで必要になるものについては、ライオール卿とも相談して揃えることになると思う。王太子妃候補として送り出す以上、恥ずかしくないものは用意してもらえるはずだよ」
「当たり前よ!」
「でも……旅に必要のないものまで全部持っていくことはないと思うな?」
「どうしてよ!」
「どうしてって……」
ウィリアムが眉間を押さえた。
「ここからマーロケリーまで、どれだけの距離があると思ってるんだい? 荷物が増えれば、その分だけ荷馬車も人手も必要になる。当然、一行そのものが大きくなる」
「だから?」
「大所帯になればなるほど旅がしづらくなる。分かるよね?」
まるで幼い子どもにでも言い聞かせるような口調が気に入らない。
ダフネが眉を寄せると、ウィリアムは構わず続けた。
「それに、王都を出ればどこもここみたいに安全なわけじゃない。街道によっては治安のあまり良くない場所も通ることになる」
「護衛がいるんでしょう?」
「もちろん付けるよ。でも……だからって、わざわざ派手にして、危険を増やす必要はないだろう?」
「危険って何よ」
「金目のものを大量に運んでいると分かれば、それだけ余計な連中の目を引くってことだ」
コメント
2件
わー、ダフネ節炸裂だ(笑)
あーもうダフネ様、相変わらずの令嬢っぷり炸裂してて草😂💕 「全部最高級」って当たり前のように言い放つ感じ、王太子妃になる自覚はあるんだかないんだか…!でもウィリアムの「みすぼらしく見えない程度でいいんじゃない?」が冷静すぎて笑ったw 旅の安全とか現実的な話になってくるところ、物語がちゃんと地に足ついてて好きだな〜✨ 二人の温度差がエモい😭💖