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3 - 俺の好きと君のすき③ 💚❤️

♥

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2025年06月15日

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「もっと、恋人らしいことがしたい。」


そう告げると、俺の彼氏はポカンと俺の顔を見つめた。





「えっ……と、どうしたの急に」


「急でもなんでもないもん。なんか、いつもそう思うんだもん。」


「う、うん?どういう時に思うの?」


なにそれ!俺は今、不満を言ってやりたいのに、なんで俺があやされてるみたいな聞き方するの?!




ムキになって頬を膨らませば、俺の彼氏は

「いい!そのほっぺかわいい!!写真撮らせて!!こっち向いて!!」と興奮していた。



……そう。これ。これなの。

俺がずっとモヤモヤしてるのは、阿部のこの態度のせい。



二人で飲みに行ったあの日から、俺はめでたくも阿部の彼女になった。

付き合っても、お互いの何かが変わるわけじゃない。

毎日顔を合わせて、一緒に仕事をして、一日が終わる。

時間が合えば、二人っきりの時間を過ごすこともあるけれど、基本的にはなにも 変わらない。

変わったことといえば、会える日はどこかのタイミングで、必ず阿部が俺に触れてくれるようになったことくらいだ。

頭を撫でてくれたり、手を繋いでくれたり、抱きしめてくれたり、時には「好きだよ」と言ってくれて、心に触れてくれたりもする。



しかし、何かが違うのだ。

阿部は俺を大切にしてくれるし、たくさんの愛情もくれる。

だけど、何かしっくりこない。

その違和感の正体に気付いたのは、阿部と付き合ってから3ヶ月がたった頃くらいだった。




あれは、阿部の家にお泊まりに誘われた日のことだ。

忘れもしない。


二人で夕飯を作って食べ、お酒を飲んで、テレビを見ていた。

あぐらをかいて座っていた俺の膝を、阿部が真剣な眼差しで見つめていることに気付く。

え、テレビ見てたんじゃないの?と思ったが、あえて聞かず、


「どうしたの?膝になんかついてる?」と聞いた。


「…ぅ…ぃ…ぁぁぁ……」


「え?なに?」

かなり小さい声で何か言っているのだが、全く聞き取れない。おまけに自分の世界に入っているのか、俺の声も全く届いていなかった。

少し様子のおかしい阿部が怖くなって、顔を覗き込んで様子を伺えば、阿部は俺に驚いたのか上半身を大きく後ろに仰け反らせた。


「ご、ごめん」

驚かせてしまったことに対して素直に謝ると、


「いや!大丈夫!国宝級の顔面が間近に、ってびっくりしちゃっただけだから!あぁッ!ほんとに尊い!だて様の顔面美がすんごいよ…え、待って、実は絵画だった?美術品だったのかもしれない…だからこんなに綺麗なの…?え、は?ちょっと待って無理だって…今一緒にいられるこの時間、この出会い、この奇跡、、生きててよかった…」


阿部はブツブツと何かを唱えながら天を仰いで、何かに手を合わせていた…。





えー………………………っと????


どういう状況?


ちなみに、あの時、阿部は俺の膝を見ながら

「だて様の膝小僧ぅ…かわいい…白ぃ…ぁぁぁ………」

と言っていたそうだ。

意味がわからない。

どこの世界に、自分の彼女の膝を見てしんどくなる奴がいるんだ。



どんなに阿部を好きでも、流石についていけず、お風呂を借りようと着替えを入れてきたバッグを漁っていると、部屋着を忘れたことに気付いた。


仕方なしに、阿部のものを借りたのだが、阿部はなかなか大きいサイズを持ってきた。

お風呂から上がって、阿部の元へ戻ると、待ち構えていたように写真を撮られた。


「ナイス!!俺ナイス!!これ選んでよかった!!!ダボダボ、萌え袖!!かわいい!!守りたい!!」


シャッターの音に負けないくらいの大きい声で、阿部はテレビの音を掻き消していた。




そう。付き合ってからも、俺たちはなに一つ変わらない。

俺がなにをしても、なにを言っても、その一つ一つが阿部にとってはご褒美だそうで、俺を置き去りにして、一人で勝手に宮舘王国に旅立ってしまうので、付き合いたてのドキドキも、切なさも何もあったもんじゃない。



阿部は俺に触れてはくれるけど、深いキスはしない。

抱き締めてはくれるが、抱くことはしない。


「そこまで触れたら、だて様が消えちゃうかもしれない」んだそうだ。

消えるわけないだろ。そんなことで消えてたまるもんか。


そういう行為があればいいってもんじゃないし、今、こうして一緒にいられているだけで、とっても幸せだけど、なんだか阿部と目が合っていない気がするのだ。

俺が見ている先と、阿部が見ている先、向かい合って見つめているはずなのに、阿部との視線が交わらないような感覚がするんだ。


アイドルとしての俺じゃなくて、ただ一人の人間としての「宮舘涼太」を見てほしい。

ただ、それだけのことすら、ままならなくて、もどかしかった。











「なぁるほどねぇ…」

「そらかわいそうやなぁ…」

「にゃはは!佐久間さん的には阿部ちゃんの気持ち、わかんなくもないけどね!嫁ってそういうもん!」


思い余って、俺はふっか、康二、佐久間に阿部とのあれこれを相談した。

話を聞き終わると、三人は三様の反応を示した。

そして、三人揃って突然立ち上がる。


「こんな時こそ、俺らの出番だろ?」

「あぁ、ついに、俺らに白羽の矢が立ったってわけか……」

「気張るでぇ?」


「そう」

「俺ら」


佐久間が指を鳴らす。



「「「ドラマ班」」」


「……………よろしくお願いします。」

どこから突っ込んだらいいのかわからなくて、とりあえず三人にお任せすることにした。






「舞台はここ」

「セリフは頭の中に入ってんで」

「必ず演じ切って見せる」


「それで、俺は何をしたらいいの?」


「だてさんは、最高の料理を作ってくれ…」

「それ、ふっかさんが食べたいだけやん!」

「バレた?」


俺の家でホームパーティーをすることになった。

というか、この問題を解決するためだけに開かれている。

俺がすることは特にないらしく、仕方がないのでふっかに言われた通り、みんなが喜んでくれる料理を作ることにした。


「あ、そうそう。助っ人呼んどいたよー」

「助っ人?」


その瞬間インターフォンが鳴る。

みんなそろそろ集まってくるかな?

佐久間が玄関に向かい、誰かを引っ張ってきた。

ものすごく嫌がっている声が聞こえる…。


「助っ人の翔太くんです。」

「マジふざけんな。なんで俺が…。」

「涼太がローストビーフ作るって。」

「しょうがねぇな。」

「変わり身早ない!?」

「涼太のローストビーフがうまいのが悪い」

「それは否定できひんな」


「んで?俺は何したらいいわけ?」

「涼太がご飯作ってくれるのを手伝ってて」

「は?俺料理出来ねぇけど」

「…翔太ができそうなことお願いするね?」

「…おう。頼むわ。」




全員揃って、パーティーが始まった。

9人みんなで楽しい時間を過ごせるのは純粋に嬉しかった。


サラダからおつまみ、お腹に溜まりそうなもの、翔太への報酬でもあるローストビーフ、甘いデザートまで、みんなにたくさん作りたくなった。思ったより多めに作ってしまっていて、なかなかみんなのところへ行くことはできないが、それでもみんなが楽しそうなのを見ていると、俺も楽しかった。


「翔太、これ、このくらいの大きさに切って盛り付けてくれる?」

「ん」

「意外と上手じゃん。翔太も自炊したらいいのに。」

「いや、俺の家には気付いたらご飯が届くようなシステムがあるから大丈夫。」

「ふははっ、何それ」


隣でずっと付き合ってくれる翔太と話しながら、最後のデザートに取り掛かった。









「………むぅ。」

涼太が隣に来てくれない…。

ずっと翔太とご飯作ってる………。

さみしい…。翔太じゃなくて、俺と一緒にいてほしいのに。

せっかく美味しいご飯、たくさん作ってくれてるんだから、俺のわがままはしまっておこうと思うけど、やっぱり顔には出てしまう。




「…いい感じじゃない?あそこ」

「長年連れ添った感、普通に出してくるよね」

「ええムードやんな」


ふっか、康二、佐久間がキッチンに並んで立つ二人を見ながら、そんなことを話をしていた。




いい感じって、涼太の彼氏は俺なんだけど?

確かにゆり組はジャスティスなんだけど、そうなんだけど、、なんかモヤモヤする。


気になって、二人のことを横目でそれとなく伺っていると、突然翔太が涼太の方へ顔を寄せて、何かを囁いていた。

その言葉を聞いた涼太は、恥ずかしそうに頬を染めて微笑みながら、身を捩らせていた。









は?


それは違くない?

それは、俺だけが見ていいものでしょ?


なんで翔太に見せるの。俺だけにちょうだいって言ったじゃん。

だめ、やだ、やめて、見せないで。

無性にイライラする。

その反面、ストンと腹に落ちるものがあった。


涼太から言われた、


「もっと、恋人らしいことがしたい。」という言葉。



俺自身、そういうものには疎い。

どんなことが恋人らしいものなのか、手探り状態ではあるが、せめて涼太を好きだということだけは欠かさずに伝えようと思っていた。

伝えてはいるが、涼太への愛情表現には、今までの癖が抜けていないところが多分にあった。



「だて様」と「涼太」の境界線が曖昧になる。


あぁ、そうか。

涼太が欲しかったものは、これだったんだ。



涼太の言葉の奥に隠れた気持ちに気付いた俺は、キッチンへ向かい、脇目も振らず涼太の手を引いて寝室へ向かった。



「…行ったか」

「…行ったね」

「ホンマに怖かったわ…阿部ちゃんずっと指で机コンコン叩いとるんやもん…無言で…真顔で……。」


「俺の仕事終わり?」


「おー、お疲れ、なべ」

「ほら、しょうたくん、約束のローストビーフだよ〜」

「うっせ、お前作ってねぇだろ。……ぅわ!、んまい。」


「まぁ、きっかけは作れたんじゃねぇか?」

「んね〜」

「ほな、あとは飲んで騒ぐで!!」

「おー!!」

「俺らドラマ班最高ー!!!」


「ほんと、めんどくせぇカップルだよ…んま…」






「ぁ、あべ……?」


ツカツカとキッチンまで足を運んできた阿部は、無言で俺を寝室に連れていった。

何故か今、俺はベッドに仰向けに寝そべった状態で、阿部に抱き付かれている。

なにこれ?



「やだ。りょうへいって呼んで。」

「…りょ、亮平?どうしたの?」


そんなお願いをされたのは初めて。

名前を呼ぶ、いまだに慣れなくて結構恥ずかしい。




「りょうた、、すきだよ、、、」


「へっ?! どうしたのいきなり」

「恋人らしいこと、したいんでしょ?」

「う、うん、確かにそう言ったけど……」


「いま、俺、できてる?そういうこと」

「うーーーん……なんだか子供をあやしてるみたい、かな?」

「ぅぅ……難しいよ…」

そう唸って、俺の首に回した腕の力が強くなった。


なんだか、おかしくなってきて、思わず笑う。愛おしさが込み上げた。


「…っく、ふふ、んふっ、あははははッ!!!」


「?」

きょとんとこちらを見る阿部の頬に口付けた。



「亮平? 今亮平の目に映ってるのは、「だて様」としての俺?それとも、ただの「涼太」?」

腕を回して、優しく背中を撫でながら問いかける。


「どっちも。どっちも好き。キラキラしててかわいい「だて様」も、優しくて格好良い「涼太」も、どっちも大好きで、どっちも大事で、尊いの。」

「うん、ありがとう。」

「どっちかを選べなくてごめん。気付いたよ、涼太が何を望んでたのか。俺の愛し方じゃダメなところいっぱいあるよね?でも、涼太が好きな気持ちはほんとなの。」

「うん。わかってる。亮平が俺のこと愛してくれてるの、ちゃんと。それにね?俺も気付いたことがあるの。」

「…なぁに?」



「いつでも、どんな時でも、亮平なりの方法で俺を愛してくれる、そのままの亮平が好き。たまに着いて行けてない時あるけどね。ふふっ。」


「ぅぅ…りょうたぁ…すき…」


「はいはい、俺も好きだよ?今日は甘えん坊だね」


「だって、涼太が、、翔太にかわいい顔見せるから……」


「ん?見せたかな?」


「見せてたよー!さっきなんて囁かれてたの?」


「あ、あー………」


「なに?俺には言えないことなの??」


「いや、えっと、その…「阿部がずっとこっち見てて怖い。あいつ嫉妬深かったんだな、お前も大変そうだなって」って、、、」





「…ぁ、ぁ……」


ボフンと音が鳴りそうなくらい真っ赤に沸騰した亮平は、その顔を俺の胸に埋めて おでこを擦り付けていた。







俺たちなりの愛がそこにあればいい。

「らしさ」も型にはまったものも、いらない。

俺の好きと君のすきは、明日も明後日も、その次の日も、ずっとずっと…。














END



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