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#デジタルイラスト
汚染
39
あめ猫@サボり魔
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「来るなって言ってんだろ、バカシェドレツキぃ……っ」
張り詰めた空気の中、ジャラジャラと甲高い金属音が廃屋の壁に虚しくこだました。
手枷をはめられた両腕を必死に突き出し、1xは眼前の男を強く威嚇する。
けれど、その叫びには威厳など欠片もなかった。
ドミノクラウンの隙間から覗く頬は、まるで熟した果実のように朱に染まり、吐き出される息はそれ自体が媚薬の気体であるかのように甘く熱い。
半透明の肌の奥で波打つ脈動が透けて見え、普段なら荒々しく揺らめく黒緑の炎は、怪しい熱気を帯びて蠢いていた。
涙で濡れた赤目が、助けを求めるような切望と、醜態を晒したくないという強い拒絶の狭間で揺れ動いている。
「はぁっ……、く、っ……♡ 見んな……っ! そんな目で……俺を見るな……ぁっ♡」
鎖を引っ張り、自らを壁際へと追い詰めるように身を縮ませる1x。
冷たいコンクリートに灼熱の肌を押し付け、なんとか疼きを逃がそうともがくが、ピンと張った鉄鎖が動きを無情に制限していた。
シェドレツキーの首元を掻き切り、その温かい血を吸いたいという暴走した衝動。
それ以上に、この男の手に抱かれ、内側からズタズタに暴き立てられたいという狂おしいほどの情念。
その双方からシェドレツキーを守るために、1xは自らをこの暗闇に繋ぎ止めたのだ。
「1x……」
シェドレツキーの足が、床を踏みしめる。
胸が、千切れそうなほどに痛んだ。
目の前で震えているのは、かつて自分を憎み、殺そうと襲い掛かってきた最凶のバグだ。
けれど今の1xは、ただシェドレツキーのために自らを傷つけ、痛々しいほど健気に耐え忍んでいる。
(俺のために……お前は、ここまで……)
愛おしさが胸の奥底から激流となって溢れ出す。
だが、それと同時に――シェドレツキーの背筋をゾクゾクとした黒い快感が駆け抜けた。
自らを縛りつけ、逃げ場を失って喘ぐ半身の姿。
他でもない自分自身の手で傷つけないために、必死に欲望を殺そうと泣き叫ぶ愛しい姿。
手枷に囚われ、無防備に晒された首筋と、熱で乱れた衣装。
その隙間から覗く艶やかな肌を目にした瞬間、シェドレツキーの中で何かが音を立てて断ち切れた。
「完璧な聖人」としての理性が、ガラガラと崩れ落ちていく。
(逃がさない……)
今まで抱えていた罪悪感も、紳士的な自制も、すべてが焼き尽くされた。
目の前の存在は、自分だけのものだ。
自分を守るために自らを縛ったのなら、その鎖ごと、自分の一望の内に収めてしまえばいい。
自分以外の誰も触れられないこの場所で、徹底的にその体も心も暴いてしまいたいという、深く昏い占有欲。
「言ったろ……っ、あっち……行けって……んぁっ♡」
激しく首を振る1xの制止など、今のシェドレツキーの耳には届かない。
ジャラ……、ジャラッ……。
シェドレツキーは静かに歩み寄り、1xの目の前でゆっくりと膝をついた。
「ひ……っ♡」
影が、1xの視界を覆い尽くす。
目の前に迫ったシェドレツキーの瞳には、普段の温和な光など欠片もなかった。
執着と、欲望が宿った眼光が、囚われた1xの全身を射抜いている。
「シェ……ドレツキー……? お前……なに、して……っ♡」
危険を察知した1xが鎖を激しく鳴らし、逃げようと身体を捻る。
だが、手枷の可動域はとうに限界を迎えていた。
「あんなに『来るな』って言ったのに、どうして南京錠の鍵を、部屋の隅に放り投げておいたんだ?」
「なっ……♡ あ、それは……っ♡」
シェドレツキーの低い声が、1xの耳元で小さく揺れる。
そう、1xは完全に拒絶しきれていなかったのだ。
自らを縛りつつも、捨てきれなかった期待。
シェドレツキーに見つけてほしい。
助け出してほしい。
そんな思いから、解除用の鍵を目につく場所に残してしまっていた。
その事実を突きつけられ、1xの顔がさらにカッと熱く爆発する。
「ち、違……ッ! あれは……ただの落ち度で……っ」
「嘘だ」
シェドレツキーの手が伸び、逃げようとする1xの顎を強く掴んだ。
指先から伝わる圧倒的な体温と力強さに、1xの体躯がビクンと大きく跳ね上がる。
「お前は俺を待っていたんだろ、1x。俺に助けてほしくて……俺に、ぐちゃぐちゃにされたくて」
「ひぁっ……♡ や、やめ……っ♡ 触るな……ぁっ!」
「頭がおかしく……なっちまう……っ♡」
拒絶の言葉とは裏腹に、掴まれた顎から伝わるシェドレツキーの体温に、1xの体内の媚薬が反応する。
鎖の音が鳴り響く狭い部屋で、完全に退路を断たれた1xの上に、覆いかぶさるようにシェドレツキーの影が重なった。