「よし!!古佐くん〜!お餅はどんな感じ?」
白い息を吐きながら再度かまくらに入ってくる畑葉さん。
「何してきたの?」
「ん?雪で強度増して水かけて氷にしたの!!」
水…?
どこから水なんか…
「あ!お餅出来てる!!」
そう言って僕が持っていた菜箸を奪い取る。
それも強引に。
「はいこれ!古佐くんの分!」
そう言ってお皿に取り分ける。
いや、お皿なんてどっから…
さっきから無かったものが生成されてるというか何ていうか…
あぁ、畑葉さんと居るとたまにこっちがおかしいみたいになる。
あの後、『お餅硬いね』って言って幕を閉じた。
ここ最近で1番意味が分からない遊びだった。
遊びって言っていいのか分からないが。
それから随分、畑葉さんには会ってない。
学校も授業中以外会えていない。
僕の顔を見る度に何故か逃げる。
もしかして避けられてる…?
「なんか僕、悪いことしちゃったのかなぁ…」
そう不安な声を漏らしながらいつも畑葉さんと帰ってる帰り道を1人歩き帰っていた。
鍵を開けようとカバンの中から鍵を探す。
と、ほぼ僕の目の前で玄関の扉は開いた。
勢いよく。
心の中で『危なかった…』と声を漏らす。
だって少しでもタイミングがズレてたら死…
それより今日は母さん帰ってきてたのかな?
そう思っていたが、見えた姿は予想外な人だった。
「古佐くん誕生日おめでとう〜!!」
そう言いながらパーティークラッカーを僕に咲かす。
1つの方向からじゃなく、” 2つ “ の方向から飛んでくる。
僕の家に居たのは畑葉さんと海琴だった。
なんで海琴…
てか畑葉さんとそんなに仲良かったっけ?
そう困惑した末に出た僕の言葉は
「…久しぶり、海琴」
だった。
だが、その言葉を聞いた海琴の隣に立っている畑葉さんの頬は徐々に膨らんでいく。
あぁ、拗ねてる。
そう思っていると
「玄関に居ないで家入ってきなよ」
と少し笑い気味に海琴が言う。
リビングの食卓には色々な料理が並んでいた。
「古佐くんはここに座って!」
畑葉さんが無理やり僕を王様席に座らせる。
途端、部屋が真っ暗になり
「ハッピバースデートゥーユー、Happy birthday to you…」
とお馴染みの歌を歌った海琴が僕の前にケーキを運んできた。
しかも腹が立つほどに英語が上手い。
そういえば海琴って英語のテストの点数良かったなぁ…
「さっ、主役!!」
そう言われ、息を吹きロウソクの灯火を消す。
「おめでとう〜!!」
畑葉さんと海琴が同時に言う。
「まずプレゼント!!」
「私からはこれ!」
そう言い、畑葉さんが僕に渡してきたのは手袋だった。
「最近手が寒そうだったから…!」
「ありがと畑葉さん」
そう普通に礼を言ったはずなのに畑葉さんの顔は何故か徐々に赤くなる。
「私はこれね!」
そう言って海琴は僕の目の前にあるケーキを指差した。
「え、もしかしてこれ海琴の手作り?」
「そ!」
「海琴って料理出来たんだ…」
中学の調理実習の時はあんなに酷かったのになぁ…
畑葉さんと同じくらいに。
「別にそれくらいできるわ!!」
なんでキレるんだよ…
なんか所々海琴って畑葉さんと似てる気がする…
「海琴ちゃん、頑張ってたもんね〜」
「ちょっと凛!!それ言わないでって言ったじゃん!!」
呼び方までも変わってるし…
「…色々質問したいんだけどいい?」
居てもたっても居られなくなり、
ついにそんなことを言う。
「何?」
「畑葉さんと海琴って前からそんな仲良かったっけ?」
そう僕が質問すると答えたのは海琴だった。
「全然?」
「でも今日の古佐くんのサプライズ誕生日会の計画を誘われてから仲良くなったんだ〜!」
「しかも海琴ちゃん、可愛いんだよ〜?」
「だってずっと古佐く───」
「馬鹿!!」
畑葉さんが何かを話そうと口を開けたが、
海琴が『馬鹿』と言いながら畑葉さんの口を手で塞ぐ。
耳まで真っ赤な海琴。
何となく察するが、気付かないふりをする。
「あともう1つ質問なんだけどさ…」
「ん?」
「なんで畑葉さんって僕のこと避けてたの?」
「それは…」
「サプライズの準備したかったんだけど…」
胸の前で人差し指の先を合わせたり離したりしながらそんなことを言う畑葉さん。
焦れったいから早く言って欲しいんだけどなぁ…
そんなことを海琴も思ったのか
「私が頼んだの!!」
と声を上げる。
「え?」
「凛ってば、すぐ古佐くんの前でサプライズの話しそうで止めるの大変だったんだから!」
と。
なるほど…
確かに言いそう。
「もしかして古佐くん、寂しかったの?」
ふと、そんなことを言う畑葉さん。
隣では海琴が『それ言わなくていいから!!』って小声で怒ってる。
「…うん、寂しかった」
そうぽつりと心の声が漏れてしまう。
しかもそれが原因で気まずい空気が漂ってしまった。
「ごめ──」
完全に僕のせいだと思い、
謝ろうと口を開けたと同時に海琴の声が被さってくる。
「何それ…」
「え?」
「めっちゃ可愛いじゃん…」
と、急にオタクのような発言。
そんな中、目をぱちくりとさせる僕と畑葉さん。
なんか海琴、キャラ変わったなぁ…
コメント
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(≧∇≦)bイイネ👍️