いさなは湯船に浸かりながら、スマホを片手にぼんやりと動画を見ていた。
湯気が立ち込める浴室には、かすかにロックの音楽が流れている。
「はぁ、文化祭とかめんどくさいけど、まぁ楽しそうだよな~。」
そんなことを呟きつつ、ふとスマホの画面にLINEの通知がポンと表示される。
送信者: みりん
内容:「いさな~!今ヒマ?ちょっと相談したいことがあるんだけど🥺」
いさなは首をかしげながら返信した。
いさな:「風呂入ってるけど、なに?早めにして~のぼせちゃうし~。」
すぐに既読がつき、返信が来る。
みりん:「え、風呂でLINEとかウケるwww まあいいや、真面目な話なんだけどさ~。」
いさな:「真面目な話?みりんが?どした、明日は雪でも降るのか?」
冗談めかして返信するが、みりんの次のメッセージには絵文字もなく、少しだけ緊張感が漂っていた。
みりん:「……明日、文化祭さ、ミスる気がしてるんだよね。失敗したらどうしようって考えたら、ちょっと怖くて。」
いさなは、画面を見つめながら少し黙り込む。
湯船の温度が急に冷たくなったような気がした。
いさな:「なんだよ。大丈夫っしょ。お前、いつもイケイケじゃん。いざって時は冷静なんだろ?俺が保証するわ。」
すぐに返信が返ってくる。
みりん:「保証って、どんな権威だよwww でも、ありがとう。いさながそう言うなら、ちょっと安心したかも。」
いさな:「安心しとけ。俺も明日は頑張る予定だし~。」
みりん:「予定、ってなんだよwww」
いさなは、ふっと笑みを浮かべながらスマホを置き、浴槽から立ち上がった。
「相談とか言って、そんなことで悩むなんて……意外と可愛いとこあるじゃん、みりん。」
ぼんやりと湯気に包まれた浴室で、少しだけ真剣な表情になるいさなだった。
翌日、文化祭がどんなドラマを生むのか、彼自身もまだ知らない。
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