「だぁぁぁあ!!てめぇ、らっだぁ!」
と聞き慣れた声が洞窟内に響いたかと思っていたら、らっだぁさんと引き剥がされた。
俺は力が入らなくてその場にそのままへたり込む。
「お前、抜け駆け禁止って言ったじゃねえか⁈言い出しっぺこの野郎!」
すごい剣幕のぺいんとにぽかんと口を開ける。
「トラゾー大丈夫?」
優しく声をかけられて横を見ると思ったより至近距離のクロノアさんが俺に合わせて屈んでいた。
「ク、ロノアさん…ちょっと、色々と理解が追いついてなくて…」
へたり込んだのは中途半端に刺激を与えられたせいで力が入らないからだ。
モヤモヤというかじんじんというか、下腹部が変な熱を持っている。
「よ、」
「わっ」
これまた簡単に持ち上げられ、クロノアさんに所謂お姫様抱っこをされた。
「ほら、ぺいんともそんな怒んない。”まだ”未遂だったんだから。……らっだぁさんは抜け駆けしないでください」
「ごめーん。トラゾーが可愛すぎて」
テヘペロ⭐︎とするらっだぁさんは俺を見てにこりと笑う。
さっきまでのことを思い出して顔を隠す。
「照れてる。可愛いなぁ、トラゾー」
「らっだぁさん…っ」
あのまま続けられてたらどうなっていたのか。
自分の体格とらっだぁさんの体格を比較して、もしのことを考えてしまう。
隠しきれてないであろう耳は真っ赤になってると思うし、熱を帯びてる顔も真っ赤だろう。
「トラゾー、もしかして想像しちゃった?」
らっだぁさんはクロノアさんに抱っこされる俺に近寄り下腹部を撫でた。
「ぁう…⁈」
「俺のもだけど、ノアのとかはいりきらないんじゃねぇの?」
鳩尾のあたりを撫でられる。
「ゃ、やめ…ダメですってば…!」
黙っているぺいんととクロノアさん。
どうしてらっだぁさんを止めてくれないんだと涙目で2人を睨む。
「おぉっと…そのカオは逆効果だぞ」
「トラゾーってばバカ可愛いな」
「そんな顔しても俺らを煽るだけだよ?」
絶対領域のクロノアさんから聞きたくない単語が飛び出す。
「は、離して…降ろしてください…っ」
俺の力じゃクロノアさんを振り解けない。
それより、暴れてみんなに怪我をさせる方が嫌だ。
「優しいなトラゾーは。もっと暴れるなりなんなりでもすればいいのに。俺らに怪我させたくねぇからって口だけで抵抗して」
そんな俺の心中を察したぺいんとが代弁するかのように言った。
「、ゃ…だ…ッ」
「俺、そんなヤワじゃないからトラゾーが暴れても大丈夫だよ」
「ぃや、です…ッ」
「ま、ここでノアから逃げれても俺らからは逃げれないっしょ」
「ゃ…です…ッ」
大丈夫と言うくせに降ろす気は毛頭ないと、強い力で俺を抱えるクロノアさん。
「抜け駆けじゃなけりゃいいんなら、俺らでトラゾー可愛がればいいじゃん。こいつ、自分の可愛さに全く気付いてないし周りにどう思われてるか全然理解してないからさ」
「あぁ、確かに。鈍いにも程があるっていうか。俺ら気が気じゃないよ」
「そりゃ、社交辞令だお世辞だって思ってんだからしょうがなくね?…尚更、わからせてやんないと」
怖い。
誰でもいいから助けて欲しい。
それなのに相反して、らっだぁさんに撫でられたお腹がじくじくと変に熱を持っている。
「、っ…あ、たすけて、」
この場にいない、仲間を思い浮かべる。
「あ、そうそう。因みにしにがみくんは急用が入ったからいないよ」
「そん、な…」
俺を囲む3人はにっこりと優しく、女の子なら一瞬で惚れてしまうのではないかという笑みを俺に向けた。
「いやいや言ってるけど、トラゾーだって反応してんじゃん。らっだぁのせいもあるけど」
「おい、せいとか言うなよ。おかげって言えし」
ついっとソコを撫でられてびっくりしてクロノアさんにしがみつく。
「いや、可愛すぎか」
「ここじゃトラゾー身体痛めちゃうから、拠点に戻ろうか」
「ハジメテがこんなとことか嫌だしな」
勝手に話を進める3人に、顔が青ざめていく。
「赤くなったり青くなったりトラゾーは忙しいな」
「ぺ、ぺいんと…」
「んー?どした」
らっだぁさんが言っていたことを思い出して震える口で話しかける。
「ほ、本気、なのか…?俺、男だよ…?…そ、れなのに、お、れと……ぇ、…え……ぇっちな、ことすんの…?」
混乱していつものように言葉が出ない。
いつもの饒舌さは混乱で全くない。
「「「………」」」
「ぺいんと…?」
「おっ前さぁ…!」
ぺいんとの大きな声が響いた。
その声にもびくりと肩が跳ねる。
「…無自覚でそれやべぇって。煽り散らかしてんじゃん」
ハッと自分の言ったことを反芻する。
これではぺいんとの言った通り相手を煽るだけだ。
「ち、違っ…!」
そういうつもりではないと慌てて否定するが、出た言葉は取り消すことができない。
「いや、今のはトラゾーが完全に悪い」
「俺ら、今結構ギリギリよ?トラゾー、自分で自分の首絞めてるじゃん」
らっだぁさんが涙の浮かぶ俺の目元を撫でた。
「トラゾーはワルイコだな?」
「そんな子にはお仕置きしなきゃね」
優しい顔の2人に言われてまたびくりと肩が跳ねる。
「クロノアさんとらっだぁが言うと怖ぇんだけど」
「えぇ?」
「心外だなぁ」
「だって、お前ら爽やか系じゃん。そんな2人にそんなドS発言されたらトラゾーがカワイソーじゃん」
「思ってないくせに」
「それな」
「あ、でも黒幕とサイコパスだから全然フツーか」
「「お前が言うな」」
あはははと顔を合わせて笑う3人が怖い。
そうこう思っていたらパッと周りが明るくなっる。
眩しさに目を細めた。
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