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それは下校中の出来事。
「待って!」
後ろからそう叫ぶ声が聞こえた。
私はパッと振り返ってみる。
でも知らない人がだった。
知らない男の人。
だけど、
「アイカ!」
(アイカ…?私がよく間違えられる名前だ…)
「アイカってば!待ってよ!」
やっぱり私なんじゃないかと思いもう1回私は声の主の方を見る。
どういう状況でしょうか?
今、私は知らない男の人に抱き締められています。オマケにイケメン。
「アイカ…よかった、ここにいた…」
山村愛香 ヤマムラ マナカ 16歳
華のJK。
同い年に彼氏なんか作ってみたりして
青春を謳歌したり…
はぁ…妄想が止まらないっ!
なのになんですか!あの男は!!
いきなり抱きついてきた上に
私につきまとうんです!!
まぁ、追っ払いましたけど…
「はぁ……」
愛香は昨日の下校中の疲れを
この溜め息にぜ全て乗せた。
「どうしたん?ついに愛香も悩める恋の乙女??」
私の状況を知らずにこんな呑気なことを言ってくるのは幼馴染の横山 真希(ヨコヤマ マキ)。
中学生時代からの幼馴染で中一の時、出席番号が近くて話してみた結果、意気投合。中学生の時は黒髪だったが、高校生になり髪を染めた。よく生徒指導の先生に叱られているのをよく、横で私は見る。そんな彼女になんで染めたのかと聞いてみたところ、好きなアイドルが金髪&ツインテールでそこからの影響だそう。
「違うの!真希!聞いて!!」
愛香は昨日の下校中のことを全て真希に話した。
「愛香の友達じゃないの?愛香のことをアイカって呼んでくる子いなかったの?思い出してみなよ。」
「私に仲良い男の子なんていたこと無かったよ。しかもあんなに顔面偏差値の高い…本当に綺麗な顔立ちしてたの!」
「んー…確かに愛香は男子と連まないよね〜。イケメンか〜…いいなー紹介してよ。そのイケメン。私の彼氏にするから。」
「いいですねー女子は楽しく恋バナなんかしちゃって〜??あー困ったな〜誰か手伝ってくれないかな〜?」
こういう嫌味ったらしいことを言ってくるのは、やたらと私と真希につっかかってくる、ウザイ男子代表、江藤 優真(エトウ ユウマ)。
そいつの手元にあるものは大量の配布物。
名前に優しいってついてるくせに全然優しくないの。真希と小学校が同じだったみたいで凄く仲良し。なんかいやらしい関係を築いているのでは…?と疑いたくなるほど仲がいい。
「分かったよ。手伝えばいいんでしょ?はい。優真くん。半分それ配るよ。」
痺れを切らして私は言う。
「さっすが〜!愛香ちゃんは気が利くな〜!!で、真希は?」
「うちは手伝わない。物事を人に頼みたい時はもっと正直に言いなさいよ。」
「うわー。こんなに俺困ってるのに。真希は気が利かないな〜」
「気が利かない女で結構。優真こそ女の子働かせるなんて…サイテー」
ほら、仲良いでしょ?こんな小喧嘩を毎日のようにやってるの。気分は夫婦漫才を見ている気分。
「愛香ちゃん。ごめん。俺がやります。」
「あ、ありがとう。優真くん。」
その喧嘩で負けるのはいつも優真。女は強い。
「それでさ、その男の人の名前。聞いてきた?」
と真希は言う。
「聞いてない……」
「えー!!イケメンだったんでしょ?!もー愛香ったらー!普通聞くでしょ!」
「だって別に好きじゃないし…」
「愛香ってさ、昔っからそう!タイプのイケメンを目の前にして正直になれない!」
「ちょ…ちょっと…」
「中学生の時、俳優さんにサイン貰いたくて貰いに行ったらいきなり黙り込んでさ〜!」
真希はわざと声を大きくして言う。
「い、今は違うし!」
「本当かな〜?」
「ほ、本当!」
(結局真希に相談してもなんにも解決しなかったな…)
「何してるの?アイカ!」
「誰…!って昨日の…」
「そう、昨日の人!」
「あの!私、アイカじゃないですから!」
「…知ってるよ?」
「マナカでしょ?」
「ほ…本名をそんな簡単に知らない人に教えることは出来ません!」
「はぁ…山村愛香!」
「えっ?!な、なんで…?あなたは一体なんなんですか?!私の青春をよくも…よくも…」
「俺はね、君の運命の人…かな?」
「…ん?運命の人?ちょっと何言ってるか分からないっすね」
「あはは…。えーっとね、君の過去が知りたくて俺は未来から来た。」
「…過去?…未来?…タイムスリップですか?」
「きっとね。君、これから相当辛い出来事が待ってるんだよ。」
「…そうなんですか?」
「何が起きるんですか?」
愛香はその男の人を見つめる。
「やっぱり昔から変わらず可愛かったんだね。」
「か…かわいい」
『やっぱり昔から変わらず可愛かったんだね。』なんて言葉が愛香の脳裏を回り、巡る。
「知りたい?俺のこと。」
「知りたいです。あなたのこ…」
「あー!愛香ー!」
後ろから私を呼ぶ声が聞こえる。そこの声の主は真希だ。
「…真希?」
「ちょっと!遊ぶ約束したの忘れてたでしょー?!校門で待っててって言ったじゃーん!」
「あ!そうだった!ごめん!」
「もー、愛香ったらーチョー抜けてる!」
「…君は誰かな?」
謎の男の人は真希に向かってそう言う。もう真希のことを睨んでいるのではないかって程、彼は真剣な顔をしていた。
「愛香の親友の横山真希でーす!愛香を泣かすような真似したら絶対許さないからねー!それで、あなたは?」
この時真希に親友と言ってもらえたことが嬉しかった。
「ほら!今日言ったじゃん!」
「あー!イケメンか!」
「ちょっと…馬鹿っ!」
「ふっ…仲良いんだね…」
さっきの真剣な顔から一気に謎の男の顔は緩んだ。
「そっか、先約が入ってたか…」
男は残念そうに愛香を見つめながら言う。
「…あの、また今度お話聞かせてください。」
「あぁ、明日でもいいかい?」
「はい。いつでも大丈夫です」
「分かった。ここで待ってるよ。」
謎の男は愛香に向かって微笑む。その笑顔に私はもしかしたら心を奪われてしまったかもしれない。