テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
9,698
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
大学生の直樹は、引っ越しの準備をしていた。
押し入れの奥から、小さな段ボール箱が出てくる。
中には古い携帯電話――折りたたみ式の、いわゆるガラケーが入っていた。
「ああ、これ……高校のときのやつか」
電源は入らないと思っていたが、なんとなく充電器を探して差し込んだ。
数分後、画面がぼんやり光る。
**圏外**
表示はそれだけだった。
懐かしくなって、直樹はメニューを開く。
メール、写真、着信履歴。
何気なく着信履歴を開いたとき、直樹の手が止まった。
**昨日 23:48 着信**
「……え?」
ありえない。
この携帯は、五年以上前から箱に入っていたはずだ。
しかも、昨日?
発信者番号は表示されていない。
ただ「非通知」とだけ書いてあった。
気味が悪くなり、直樹は携帯を閉じようとした。
そのとき。
**ブブッ**
震えた。
直樹は凍りついた。
画面には――
**着信 非通知**
「……うそだろ」
部屋には電波があるはずなのに、画面の上にはまだ**圏外**の表示が出ている。
それなのに、着信している。
直樹は震える指で通話ボタンを押した。
「……もしもし?」
沈黙。
ザッ……ザザ……
ノイズの音だけが聞こえる。
「誰ですか?」
その瞬間。
ノイズの奥から、小さな声がした。
「……そこ」
女の声だった。
かすれている。
「そこに……いるの?」
直樹の背筋が凍った。
「ど、どこに?」
少し間があった。
そして。
女は、はっきりと言った。
「……**私の部屋に**」
直樹はゆっくり振り返った。
自分の部屋だ。
誰もいない。
そのはずだった。
携帯のスピーカーから、今度は別の音が聞こえる。
ギ……。
ギィ……。
まるで、**クローゼットの扉がゆっくり開く音**。
直樹は固まった。
押し入れ。
さっき、ガラケーを見つけた場所。
電話の向こうの女が、ささやく。
「……今、出てきた」
その瞬間。
直樹のガラケーの画面に、新しい着信履歴が追加された。
**3分後 着信**
まだ鳴っていないはずの、**未来の着信**だった。