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美味すぎるパスタに夢中になって咀嚼していると、《どっちに座ったらいい?》とふと問いかけてきた舘を見る。自分の賄いを未だ携えながらしょっぴー・俺・しょっぴーの隣・俺の隣と何度も目線を反復しているのがなんか面白くて。
そんな彼に《まず料理置いたら?》と料理たちを指さすと、素直に2皿をテーブルに置き、結局しょっぴーの隣へと腰掛けた。…にしても、
「…賄いの量、多ない?それ全部食うん?」
置かれた品はペスカトーレとアクアパッツァ。1人で食べるとしても結構重みのある量である。質問に首を横に振ると、舘は俺ら3人の真ん中に来るように1つの料理を置き直して応えた。
「アクアパッツァはサービスだって先輩が作ってくれて。でももし食べれなさそうなら口つける前に断って良いよってさ。」
「「えぇっ、食べる!」」
東西のイントネーションの違いはあれどばっちりシンクロする回答に一瞬だけしょっぴーと目が合う。
思わぬシンクロに小さく目を見開き、その後段々と目を細めてくすくす小さく笑いながら、舘はしょっぴーに手でカトラリーをお願いした。
「そんなん勿論遠慮なくいただくに決まっとるやん。良いお魚っぽいし…何かは知らんけど。」
「今日はサワラって言ってた。もし残しても、俺の賄いの量を少なめにしてもらってるから、余ったら俺が食べるよ。全部食べちゃってもいいけど、先輩が作ったからひと口は絶対貰うからね?」
しょっぴーからフォークを受け取ると《じゃ、いただきます。》と手を合わせて優雅にパスタに手を付ける舘。口に入れた瞬間、真剣な表情でその味を学ぶように小さく頷きながら噛み締めている。その様子を同じくまじまじを見て《お前料理にガチ過ぎるって。》とド直球で思ったことを発したしょっぴーに舘は1口分を巻いて半ば黙らせるように食べさせた。
「、…うわ、うめー…。」
「これも先輩が作ってくれたものだからね。学べるとこはいつでも学んでいかないと。」
しょっぴーのいつでも真っ直ぐなところと、舘の温かみのある包容力ってやっぱ相性良いよな…。性格が違う双子みたいな幼馴染って結構最強ちゃう?──えぇなぁ、そんな関係。
そう思った瞬間、ゆらりと複数の感情が揺れ動く。呑み込まれそうになる前に半ば掻き込むように自分用の料理を平らげれば、手を合わせて食後の挨拶を済ませる。
「ご馳走様でした!舘、しょっぴー、ごめん…俺この後用事あるの忘れてた。」
「えっ、忘れてたって…その用事大丈夫?」
食事の手を止めて心配そうに声をかけた舘に、時間を確認してから頷く。…別に、時間なんて関係ないけど。
「知らんけど大丈夫やと思う、でもちょっと急ぐわ!しょっぴーご馳走様、おおきにな。舘、美味かった!後でまた連絡する!ほなまた!」
「あーい。康二またねー。」
「連絡待ってる。またね。」
急ぎながらも、すれ違うホールスタッフに元気よく《ご馳走様でした!》と律儀に声をかけ店を後にした康二を見送ると、右隣に座る幼馴染へと視線を移して疑問を投げかける。
「──今日、翔太の奢りなんだ?」
珍しいこともあるもんだ。そんな風に思っていると、彼は急に静まり返り、何だか気まずそうにぽつりと呟く。
「…涼太ぁ、」
あ、もしかして実はバイトの給料日前だったりした?まあ有り得るか──…仕方ないな。
「…足りなかったらその分出すから。」「…男2人で席隣って気まずくないか?」
重なった言葉の内容が全然違ったことに、俺は一瞬思考が停止した。が、
「………、確かに。」
翔太の指摘を確認するようにホールを見回せば、大人2名で隣同士という席は当然なく。ぽりぽりと顎を軽く掻くと《俺、移動するね。》と先ほど康二が座っていた席へ回る。
会話の途切れた時間を埋めるように、一旦空いた皿を下げやすいようにまとめていると、ふと1つの案が浮かんだ。
「そういえば…翔太はこの後どうするの?」
「俺?んー、特に何も決めてなかったな。」
「そう?じゃあ呑みにでも行く?俺明日休みなんだ。」
「おっ良いね、明日3コマ目からだし。」
せっかくだし朝まで呑むか、と言い合うようにお互いにやりと笑む。まずは目の前の料理を平らげようと、少し食のペースをそれぞれ早めた。
──ちなみに、翔太の所持金は想定より全然足りてなかった。…もし康二みたいに俺が先に帰ってたらどうするつもりだったんだよ…。
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