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フィリピンでの激戦が終わり、亮たちは錆の都へ帰還した。しかし、待っていたのはかつての繁栄の跡形もない、荒廃した街だった。錆色に染まった建物は崩れ、人々の間には絶望の影が漂っていた。
篠田は拳を握り締めながら周囲を見回す。「…俺たちが離れている間に、ここまでやられるとはな。」
鋼谷は無言のまま立ち尽くしていた。彼の目には、かつての仲間たちの無念が浮かんでいるかのようだった。
そのとき、亮が静かに前へ進み出た。「ここからが俺の役目だ。」
篠田が振り返る。「亮、お前に何ができる?」
亮は自信に満ちた微笑みを浮かべる。「俺の異能は『問題解決領域』だけじゃない。数学は世界を理解し、再構築するための言語だ。それを応用すれば、街を再生することも可能だ。」
亮は錆びた地面に立ち、目を閉じた。手をゆっくりと前に伸ばすと、空間に膨大な数式が浮かび上がる。彼の周囲に渦巻くエネルギーは、まるで都市全体を包み込むかのように広がっていく。
「数学は現象をモデル化できる。そして、モデルを解き明かせば、理想の状態を作り出すことができる。」
亮は浮かび上がった数式に次々と解を与えていく。
建物の復元: フーリエ変換を用いて崩壊した構造を解析し、元の形状を再現する。
大地の浄化: 錆びた土地の成分を化学的に分解し、肥沃な土壌に戻すために偏微分方程式を使用。
篠田が目を見開いた。「何だ、これは…建物が元通りになっていく!」
鋼谷も驚きの声を上げた。「あの錆びた大地が…緑に変わっていく!」
数時間後、錆の都はかつての姿を取り戻した。それどころか、以前よりも整然とした街並みが広がり、空には輝く星が見えるほどに澄み切っていた。
亮は額の汗をぬぐいながら、一息つく。「これで、スタート地点には立てた。今度こそ、無駄にはしないようにな。」
篠田は亮の肩を叩きながら笑う。「お前の力、本当に信じられねえよ。でも、感謝するぜ。」
鋼谷は冷静な表情で言った。「だが、終わりじゃない。冥王の勢力はまだ残っているし、油断すればまた同じことが起きる。」
亮は静かに頷いた。「ああ、わかっている。だからこそ、これからが本当の戦いだ。」
錆の都には再び人々の笑顔が戻りつつあった。しかし、亮たちはその背後に迫るさらなる脅威を感じ取っていた。冥王の本体が消えたわけではない。そして、新たな敵が待ち受けている予感がした。
「この都を未来への拠点にする。次の戦いに備え、全力で準備するぞ。」亮の言葉に、篠田と鋼谷も力強く頷いた。
再生された錆の都の空に、新たな戦いの幕開けを告げる風が吹いていた。