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今まで出した声で1番大きい声だ。自分でもびっくりした。でも、それ以上に周りの人達がびっくりしているのを何となく感じた。
「なんで嫌なの」
男の1人がそう言った。優しい、透き通った声だ。不思議と安心する。でも、そんな優しい声にも私は何も言わない。言っても意味ないとわかっているからだ。
そう、わかっているのに、なんで私は嫌だなんて言ったんだろう。今更言ったって、もうどうにもならないのに。
「あー、だる。早く連れてこーぜ」
「そうだね、あまり時間が無い」
男2人はもう一度手を引っ張ろうとする。なぜこんな状況でも警察や弁護士は口を出さないのか。やっぱり世の中理不尽だ。
暑さなのか、昼ごはんを食べてないからか、私の意識はどんどん遠くなっていった。
目覚めると、私は布団の中にいた。視界に入る家の雰囲気を見る限り、和風な家の造りのようだ。体を起こし、辺りを見渡す。広い畳の部屋。右を見ると縁側になっていて、ガラス障子から見える外は緑があった。
手元を見ると水が置いてある。周りに人がいる感じはしない。ここは静かだ。今までいた場所とは程遠い。
急に人の気配がした。焦る。寝たフリをした方がいいだろうか。誰が来るんだろうか。あの男2人だろうか。鼓動が早くなり、息が短く早くなるのを感じる。
「あ、目ぇ覚めてんじゃん。悠磨呼ぼっと」
男2人のうちの1人だ。優しい声の人とは違う人。警戒してしまう。
「ゆうまー!魁ちゃん起きたよー!」
大きな声で悠磨という人を呼ぶ。大きな声を出す人は苦手だ。
少しすると、悠磨と呼ばれていた人が来た。さっきの優しい声の人だ。
「良かった。顔色が良くなってる。水は飲んだ?お腹空いてない?」
言葉の端々から私を気遣ってくれているのを感じる。その優しさから、さっきまでの警戒心や恐怖心が和らぐ。
「俺達は藤蔭家。君を預かる事にしました」