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「…おーい」
「…ゆらちゃーん、由良ー、起きろー」
由良が、自分を呼ぶ声に目を開けると、ほんの数センチの距離のところに見慣れた人物―瑞基の顔があった。
瑞基は少し垂れ気味の目尻を更に下げて、へにゃ、と微笑んだ。
「やっと起きたー。大丈夫か?」
前の席の瑞基は、椅子ごとこちらを向いて、由良の机に頬杖をついていた。
一瞬戸惑った後、そういえば授業中に体調が段々悪くなってきて机に突っ伏している内に、寝落ちしてしまったのだと思い至る。
頭が重い。無理な姿勢だったのか首も痛い。
「ゔー…」
「具合悪いのかー?どれ、熱は…」
瑞基は額と額を合わせて熱を確認しようと、更に近付いてくる。
由良は咄嗟に、顔面を掴んで押し退けた。
「ぐあっ」
冷たい瞳で言い放つ。
「距離近すぎ」
「ひでー…具合悪そうにしてたから、おまえの身代わりで問題2問答えた俺にこの仕打ち?!」
「それはありがとう。でもこの距離感は無理」
男同士は、そんなにくっついたりしないものだと、由良はここ数年で学習していた。
「ええぇ…」
更に不服を申し立てようとしている瑞基を尻目に、帰り支度をしていると、少し離れた所から、彼の名を呼ぶ声がした。
振り返ると、同じクラスの女子三人。由良は個々の名前を覚えていないが。
その内の一人、時折瑞基に話しかけてくる、由良とあまり身長が違わない女子が言う。
「今日は部活休みでしょ?私たち、これからカラオケ行くんだけど、一緒にどう?」
「あー……」
由良の顔を見、女子たちを見回してから、瑞基はカバンを肩に掛けた。
「悪ぃ。ちょっと用事があるから遠慮しとく。また次の機会になー」
「え」
片手はひらひらと振りながら、もう片方は由良の腕をがしっと掴んで、瑞基は教室から出た。
引っ張られて横を通り過ぎる時、由良は一番背が小さくて、他の二人より一歩後ろにいた女子と目があった。何故か、傷ついたような顔で由良達を見送っていた。
「…?」
今の一連のやり取りで、どこに傷付く要素が?
由良は首を傾げた。
コメント
1件
おつかれさまです〜第2話読んだよ!瑞基と由良の距離感が絶妙で笑ったわ。顔面グイッと押しのける由良、冷たいけどそれが逆に仲良さを感じさせてて良い。女子が傷ついた顔してたシーンも引っかかるな…由良が鈍感なのかそれとも何かあるのか。続きが気になる〜!