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ゆゆゆゆ
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#doublefedora
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閉店後。
店のシャッターを半分だけ下ろして、エリオットは大きく伸びをした。
「……疲れた」
粉だらけの手を洗って、制服を脱ぐ。
ラフな私服に着替える。
少し緩めのパーカーのチャックを閉める。
下は細身のパンツ。
鏡に映る自分を、なんとなく見る。
「……」
いつも通り。
の、はずなのに。
どこか落ち着かない。
***
外に出る。
夜の空気が、少しだけ冷たい。
バイクの傍に立って、ポケットを探る。
「……あれ」
鍵がない。
反対側のポケット。
上着の内側。
「……どこやった」
軽く舌打ちしながら、もう一度手を突っ込む。
指先に、硬いものが当たる。
「……?」
引き抜く。
銀色。
「……は」
コイン。
あの、コイン。
昨日――
「……」
しばらく、見つめる。
意味なんて、分かってる。
あいつが置いてったやつ。
“終わり”の合図。
「……ふーん」
口元が、わずかに歪む。
「そういう感じね」
朝と同じ言葉。
でも――
今は、少しだけ違う。
コインを親指で弾く。
くるり、と回る。
夜の街灯を反射する。
「……」
落ちてくるそれを、手の甲で受け止める。
開かない。
結果を見ない。
「……関係ないか」
ぽつりと呟く。
表でも裏でも、もうどうでもいい。
「……」
バイクの鍵は、結局別のポケットから出てきた。
「……は」
小さく笑う。
エンジンをかける。
低い振動。
いつもなら、そのまま帰る。
でも――
「……」
ハンドルを握ったまま、動かない。
コインが、まだ手の中にある。
重くもないのに、やけに存在感がある。
(終わり、ね)
頭の中で反芻する。
“来るなよ”
そんな顔してた。
あいつ。
「……知るかよ」
ぽつりと吐く。
アクセルを少しだけ回す。
エンジン音が、夜に広がる。
「勝手に置いといて」
視線を上げる。
街のネオン。
その向こう。
「勝手に終わらせんな」
低く言う。
次の瞬間。
ハンドルが、わずかに切られる。
帰る方向じゃない。
逆。
ネオンが強くなる方。
「……」
コインをポケットにしまう。
しっかりと。
「行くなって言うなら」
小さく息を吐く。
「自分で止めろよ」
バイクが走り出す。
夜の街を切り裂くみたいに。
向かう先は、ひとつ。
――カジノ。
***
ネオンの光が近づく。
見慣れた入口。
バイクを止める。
エンジンを切ると、一気に静かになる。
「……」
ヘルメットを外す。
髪をかき上げる。
鼓動が、少し速い。
でも。
迷いはない。
ポケットの中で、コインを握る。
「……」
一歩、踏み出す。
ドアの前。
深く考える前に、押し開けた。
光と音が、一気に流れ込む。
あの夜と同じ。
でも――
違うのは。
「……どこだよ」
探してる自分がいること。
もう、“終わり”にする気がないこと。