テラーノベル
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優雅な佇まいに端正な顔立ち持つこの男の名前は吉田仁人
そして俺が密かに思いを寄せる人。
ただ一つ難点と言えば、吉田仁人には一緒に暮らしている幼馴染の恋人がいるということ
『仁人最近どうなの?彼氏と』
「ん?あぁ普通だよ。特にこれって言うこともないし、昔から変わんないかなぁ」
『ふーん…幸せなんだな笑』
「うん…」
嘘つけよ
お前がこうやって俺といる時にアイツは他の男を連れ込んでんじゃん
散々セックスして自分の欲だけ満たした挙句お前には冷淡に何もかもやらせて
早くそんなやつ捨ててくれれば俺がお前を拾うのに
なんて思いを笑顔で隠した。
最初は純粋に怒りが湧いた
仁人の調子が日に日に悪くなっているように感じた頃、仕事の合間に仁人の家に向かうと、そこには見知らぬの男の腰を支えている仁人の恋人だった。
汚らわしい喘ぎ声を家の傍で聞けば、さっきまで腹を立てていた自分が馬鹿馬鹿しく感じた。
"お前の彼氏、他の男連れ込んでヤってたよ"
って言ってしまいたいのに、もはや浮気を発見して泣き崩れてくれれば俺が支えてやれるのに…なんて思ってもお前の目にはアイツしか写ってないから
そもそも滅多に泣かない仁人のことだから、いつものように「もう終わらせよう」と簡単に終わる可能性もある訳で..
仁人の純粋な愛を弄ぶとか終わってんだろ
あぁ〜ほんと,,アイツ殺してやろうかな
なんて。
嫌な予感はしていた。
愛のない冷めきった関係に"まだ自分のこと好きでいてくれてはいるんじゃないか"と少しばかりの希望を持って、嫌われまいと家の事も頑張って。
近頃妙に出張が多くなったり、夜遅くに帰ってきたり
女性特有の長い髪の毛だとか、香水の匂いだとか確かな証拠がないからこそ"信じたくない""あの人はそういうことをしない"という気持ちを膨張させた。
玄関の前に立ちドアノブに手を掛け一息呼吸を整える
「ただいま 」
「おかえり」
「靴新しいの買った?」
「…あーうん。ほらもうボロボロだったしさ笑」
「うん…?」
「それより飯」
「…ごめん、今日ちょっと疲れてて」
「は?俺も仕事で疲れてんだけど。飯作んのはお前の担当だろ?自分の担当くらいちゃんとやれよ」
「…そうだよね…笑ごめん今作るわ」
「あ、こっち,,お前のだから。お前の靴ももうずっと履いててボロボロだったろ?」
「え…ありがとう」
こんな些細なことで舞い上がってほんと自分が笑える
きっとこの贈り物の本当の意味は"ボロボロの靴をいつまでも履いている俺を自分の隣に置いていくのは自分が恥ずかしい"
…いや、考えるのはよそう
あの人の担当は掃除なのに床には食べた物の容器や空になったペットボトルが散らかって、さりげなく言えば"気づいたならお前がやればいいじゃん"なんて
きっと他から見たら世間一般でいう"クズ"の部類に足を踏み入れてるだろうというのは何となく感じてはいるが、そんなやつに流されて一方的な愛を送っている俺もきっとオワッテル。
「はい、できたよ」
「いただきー。お前は?」
「あーお腹空いてないからいいかなって」
「…そ」
一緒に住み始めた当初は一緒に手を合わせていたのに、今ではほとんど無くなって
いつからだろう
"仁人"から"お前"に変わったのは
「あ、来週の金曜仕事仲間と飲みいってくるから」
「…あ、、うん」
「確かお前もその日遅かったよな?」
「うん」
「夕飯いらないから」
「わかった」
どうやら俺たちの記念日は祝うほどでもなくなったらしい。
いつまでも引きずっているのは俺だけ…か
to be continued…
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何その彼氏許さん