テラーノベル
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「……はい、直撃ー! 烏丸神社のクズ神主さん、突撃インタビューお願いしまーす!」平穏な午後の境内に、拡声器を通したような下品な大声が響き渡った。
自撮り棒を掲げ、ニヤニヤと品性のない笑みを浮かべた若い男が、土足で拝殿へと上がってくる。動画配信サイトで「世直し過激チャンネル」を運営している配信者、ライトだった。
「蓮! なんだあの不届き者は! 賽銭も入れずにカメラを振り回しおって!」
「チッ、一番面倒な『数字の亡者』が来やがったな……」
蓮はめんどくさそうにスマホをポケットにしまい、冷淡な目でライトを睨みつけた。
蓮の目には、ライトの背後にうごめく「おぞましい化け物」がはっきりと見えていた。
ライトの体からは、無数の「再生ボタンの形をした目」と、赤く明滅する「録画マークの触手」が何本も生え、周囲の空気を吸い込んで肥大化している。それは、視聴者の野次馬根性と、配信者の『バズれば何をやってもいい』という歪んだ承認欲求が融合した怪異――『迷惑配信のヒドラ』だ。
『こいつの悪事を暴いてみた』『拡散希望』『大炎上確定』
触手からは、切り抜き動画のノイズのような音声が響き、神社の結界を汚していく。
「ネットの情報によると、こちらの神主さんはお祓いと称して法外な金額を要求しているそうですが、これって詐欺ですよね!? 視聴者の皆さん、どう思いますか!?」
ライトがカメラを蓮の顔面に近づける。画面の向こうでは、数万人の視聴者が「叩け叩け!」とコメントを乱舞させていた。
「(うわ、他人のプライバシーを切り売りして稼ぐ銭ゲバか。……まぁ、同族嫌悪だな)」
蓮はため息をつき、いつもの営業スマイルすら作らずにタッチペンを抜いた。
「おい、配信者。人の境内でタダで撮影してんじゃねぇよ。うちの敷地内での商業撮影は、基本料金30万円(税別)だ。きっちり請求書回してやるからな」
「ははっ! 逆ギレですか!? 悪徳神主のリアルな反応、いただきましたー!」
ライトが調子に乗ってさらに踏み込んできた瞬間、ヒドラの触手が蓮に襲いかかった。
「コマ、営業妨害のゴミ回線を物理的に切断(バン)するぞ!」
「おうよ! 神聖なる社を再生数の肥やしにするなァ!」
コマが怒りで激しく輝き、その聖なる神力が蓮のタッチペンにチャージされる。ペン先から放たれるのは、データの海を切り裂く「強制削除」の青い閃光。
蓮は飛来する「録画マーク」の触手を最小限の動きで躱し、ライトのスマホと同期している怪異のコア――『配信アカウントの認証データ』を見つけ出した。
「お前の正義(ポーズ)は、ただのアクセス稼ぎだ。――アカウントごと、BAN(お祓い)されてろ」
蓮がタッチペンを鋭く突き出す。
「――規約違反・一斉通報(アカウント・パーマネントバン)!!」
ズガァァァン!!!
光の刃が怪異のコアを直撃した。ヒドラは「配信が切断されました」というエラー警告の絶叫を上げながら、今度はシュレッダーにかけられた「大量のモザイク処理の紙屑」へと姿を変え、床にバラバラと散って消滅した。
同時に、ライトのスマホ画面に【規約違反により、このチャンネルは永久に凍結されました】という赤い文字が表示される。
「え……? 嘘だろ……? 俺の、俺のチャンネルが……登録者50万人のお宝が……っ!?」
ライトは顔面蒼白になり、カメラを持ったままへなへへと崩れ落ちた。怪異を失った彼は、ただの「ネットのルールを破っただけの迷惑な男」に戻っていた。
「あ、そうだ。撮影の基本料金30万、今すぐここで決済するか、警察呼ぶか選べよ?」
蓮が冷徹な目で電卓を差し出すと、ライトは怯えきった顔で財布から現金を叩きつけ、泣きながら神社から逃げ去っていった。
夜。社務所で蓮はホクホク顔でお札を数えていた。
「いやー、向こうから勝手に金を運んできてくれるなんて、配信者はいいカモだな」
「蓮、お前というやつは……。まぁ、あの無礼者を叩き出したのは見事じゃったが、お前のその守銭奴っぷりも、いつか誰かに配信されるのではないか?」
コマが少し心配そうに蓮を見上げる。
「されるわけねぇだろ。俺の『アカウント削除(おはらい)』は、データごと形を消すんだからな。証拠はどこにも残らないさ」
クズ神主と不敵に笑う蓮。現代のバグを消し去る彼のビジネスは、ネットのどんな闇よりも冷徹で、そして確実に神社のサイフを潤していくのだった。
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