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星夏(せいか)はマジックバー&バー「immature lure portion(インマター ルーア ポーション)」に訪れ
RENのマジックを見て、それにインスピレーションをもらい、プレゼンするための企画案を練っていた。
もちろん今手伝っている竣の企画の手伝いをしながら。そのため多忙を極めていた。
先輩の企画も手伝い、並行して自分の企画案を仕上げる。夕彩(ゆあ)が
「私上がるけど、飲み行く?」
と誘っても
「あ、ごめん。もうちょいやってきたい(やって行きたい)」
と言い会社に残ってまでプレゼンするための企画案を練った。
もちろんマジックバー&バー「immature lure portion」行く暇などなく
遅くに帰ってもシャワーを浴び、ビールを飲みながらレンジで温めたおつまみを食べながら
パソコンで企画案を練っていた。
そしてプレゼン当日。今回のテーマは「ボードゲーム」。皆三者三様におもしろいが人と被らない
かつ既存のボードゲームに似通っていないオリジナルのボードゲームのプレゼンをしていた。
そして次はいよいよ星夏の番。毎回自分の考えた企画案をプレゼンするのはドキドキだった。
今回こそ通るかもしれない。などと毎回思っていたし、世界的大ヒットになるかもしれない。
なんて思ったときもあった。しかし毎回あえなく落選。毎回企画の掘り下げだけは褒められてはいた。
褒められたのが嬉しくて毎回結構な熱量で企画案を練っていた。しかし今回はさらに熱量が多い。
「しおず…。塩地、いきます!」
噛んだ
自分の名前噛んだ
幸先不安だなぁ〜…
アム○か
星夏、落ち着け
と同僚や先輩、上司たち、夕彩が思う中、星夏はプレゼンを始めた。
「今回私が考えたのが、既存のゲームをボードゲームにするというものです」
そう星夏が言うと、ほぼ全員がほんの少しだけ渋い顔というか、ほんの少しだけ表情が曇った。
今までのみんなのプレゼンは、完全オリジナルのものだった。
もちろん今回のテーマはあくまでも「ボードゲーム」であり
オリジナルと限ったものではないのだから別にいいのだが
仮に既存のゲーム、たとえば「UN○」の派生系を思いつき
自社から出そうとしたら、許諾に加えて利益の云々など、諸々めんどくさい。
なので今回のボードゲームに限らず、ドリンクだったりスイーツなどなど
自社から出すものとなると、大概みんなオリジナルの企画を考えてくるし
採用される企画も、オリジナル、もしくは過去に自社で出した商品の続編、派生商品が好まれる。
なのでみんなほんの少しだけ渋い顔、表情が曇ったのだ。
「今回私がプレゼンするのは「最終なぁに?」ゲームをボードゲーム化するというものです」
と星夏が言うと、渋い顔、曇った表情をしていたみんなが「ん?」という表情に変わった。
「みなさん、「最終なぁに?ゲーム」をご存知でしょうか?」
そう言ってからパソコンをカチッっと押して、モニターに映るスライドを進める星夏。
「「最終なぁに?ゲーム」とは最近全国的に若者に流行っているゲームで
いわば連想ゲームのようなものです。テーマがあって、お題があって
そのお題から連想を連続していくというゲームで、その連想の回数も決まっていて
たとえばテーマが「飲み物」だとしてお題が「ハンバーガー」、回数が、今回は短めに2回とします。
となると「ハンバーガー」から連想されるもの、たとえば「ソラ・オーラ」
この「ハンバーガーといえばソラ・オーラ」、これで連想1回となります。
次は「ソラ・オーラといえば」で、テーマである「飲み物」で連想します。
ソラ・オーラは炭酸なので「ソラ・オーラといえば四ツ葉サイダー」とか
もっとシンプルに「ソラ・オーラといえば炭酸水」とか。この2回目で行き着いたものが回答となります。
「ソラ・オーラといえば四ツ葉サイダー」と連想した場合は、最終の答えは「四ツ葉サイダー」になります。
こういった連続の連想を個人で行なっていくというゲームです。そして個人とチームの場合でも少し違って
個人の場合は、1人の人に対して「この人はどういう連想をするか」と全員で予想し
答えが多く合っていた人が勝ちとなります。
チームの場合だと、2人1組でお互いが連想しそうなものを予想し合います。
もちろんどちらに合わせるとか、どういうものを連想するかという相談はなしで。
そして答えが多く合っていたチームの勝ち。という感じです。
その簡単さ、手軽さから最近ではMyPipeを始めとし
テレビでもゲームコーナーの一環として使われ始めています。私はこのゲームに着目しました」
渋い顔をしていたみんなが「ん?」という表情に変わり、今のプレゼンで興味を惹かれ
「うんうん」と頷きながら星夏のプレゼンに聞き入っていた。
「このゲームは私も普段友人とよくやるゲームで
#創作
えぬた
679
いちごバナナスムージー
571
63
現在、専用のアプリもないので、ルーレットアプリなどで回数を決めて
ランダムで単語が表示されるお題アプリなどでお題を決めて
スマホのメモアプリなどで入力しながらプレイしていました。
もちろんプレイヤーの自由な発想で答えを書けるので、それはそれで楽しいのですが
どうしても自由な発想が故に、途中の回答も「最終」の答えも合いづらいというデメリットがあります。
なので、ボードゲーム、カードという形にすることによって
自由な発想はできなくなりますが、限られたワードの中で連想をするので
途中の回答も合いやすく、ゲームとして成立しやすくなるのではないか。と考えました」
みんな「なるほど」と言わんばかりに頷きながら星夏のプレゼンを聞き続ける。
「ボードゲームということで、1箱2〜4人プレイと設定し」
と言ったところで青音羽(あおば)が手を挙げる。
「プレゼンの途中でごめんなんだけど、1箱っていうのは?」
「それですね。通常「最終なぁに?ゲーム」はプレイ人数は決まっていません。
なのでカフェで友達と3人くらいでやることもあれば
飲みの場で10人、もしくはそれ以上でやることもあります。3人の場合は1箱で大丈夫ですが
10人でプレイする場合は3箱買ってもらうという形にします。
なので1箱2〜4人プレイとさせていただいてます」
「なるほどね」
「はい。修学旅行など大人数でやる場合は2箱以上のご購入を見込めると思います。
さらに、元のスマホやスケッチブックなどを使ってプレイする際は、テーマやお題などは完全ランダムでした。
しかし今回は、たとえば、これはあくまでプレゼン上の仮のテーマですが、「飲み物」とテーマを絞ります。
完全ランダムなテーマだと、連想が強引になりやすいですし、なにより1箱のカード枚数が多くなってしまい
嵩張る上に、販売価格が上がり、学生などが気軽に買えなくなってしまうと思います。
なのでテーマを絞ることで、ゲーム的にも答えが合いやすくなるというメリットが生まれますし
1枚のカードに2単語を書くことで25枚で50単語、1人のカード枚数を25枚と想定した場合、4人分で100枚。
カード枚数を抑え、嵩張らない、販売するときの箱の大きさも抑えられると思いますし
販売価格も抑えられると思います。さらに今回は、たとえばテーマを「飲み物」
このテーマはブラッシュアップで話し合って決めていけたらと思うんですが
ここでは「飲み物」とさせてください。今回「飲み物」で発売し
売れ行きが良ければ、第二弾「食べ物」とか第三弾「動物」とか、第四弾、第五弾と作っていきます。
そうすると、第一弾、第二弾、第三弾と組み合わせることによって
元のスマホやスケッチブックでやっていた、テーマがたくさんある、というものにできます。
なので第一弾が売れれば、相当なシリーズものにできますし、その分、収益を見込めると思います」
みんな「ほおぉ〜」と言わんばかりに頷きながら星夏のプレゼンを聞く。
「さらに。もし売れ行きがよかった場合、大手キャラクター会社ともコラボできると思うんです。
たとえば「猫」から「リボン」と連想した場合
その人の中では「キテ○ーちゃん」が浮かんでると思うんです。
なのでコラボできたら、もちろん版権とかの壁はありますが
今でもこの流行り具合なので、ボードゲーム化したら
もしかしたら向こう側からコラボ企画どうですか?って来るかもしれません。
向こうサイドから来た場合は、うちも割と強気に行けると思うんです。パーセンテージの提示を。
そして一度大手とコラボしてしまえば、たとえばマンガのキャラクター、マンガのタイトル
アイドルだとか俳優さん、スポーツ選手に、お菓子メーカーなど企業を越えたコラボなどなど
考えたら考えただけ広がると思うんです」
みんな「もうこれで行こう!」と言いそうなほど、笑顔の人だったり
納得した様子の人などがいて、星夏も感触としては上々だった。
「内容物なんですが、先程も説明した通り
1枚のカードに単語が2つ書かれたカードを25枚。それを4人分で100枚。
そこに「テーマ」カード。そのラウンドの「テーマ」を決めるためのカード。
仮にテーマが「飲み物」だとしたら「飲み物」と「テーマなし」の2枚。カードは全部で102枚。
そしてポイント用のアクリル製のビーズのようなものを入れたいと思ってます。
厚紙で作ったものでもいいのですが、厚紙のほうが発売時の箱の大きさは抑えられると思うんですが
アクリル製のビーズのほうが、MyPipeでプレイしてもらった場合、テレビで取り上げていただいた場合
画面が華やかで、視聴者側も「やってみたい!」って思ってもらえるかな。と思ったので
プレゼン上ではアクリル製のビーズで話を進めさせてください。1ポイントのアクリル製ビーズを40個程。
5ポイントのアクリル製ビーズを12個程入れることにより、大抵の場合は進められると思います。
というように、現在アナログゲームではない既存のゲームをボードゲームにするという
完全オリジナルではないですが、今流行っているゲームをボードゲームにすることによって
流行りのゲームを一過性のもので終わらせず
ババ抜きや大富豪、UN○のように、ずっと続くゲームにしたいという想いもあります。
そして、これから新しいマンガ、アニメ、俳優さん、キャラクター、ゲームなどが出てくれば
また新しいシリーズが作れる。といったように、息が長く続くビジネスモデルになると思っています。
私のプレゼンは以上となります。ありがとうございました。よろしくお願いします」
と星夏が締めると、みんなが拍手をした。もちろん毎回プレゼン後は拍手をもらうのだが
今回はみんなの表情の柔らかさ、拍手のどことない温かさに、手応えを感じていた。
「はあぁ〜…緊張したあぁ〜…」
自分のデスクに戻り、イスの背もたれにこれでもかというほどもたれかかる星夏。
「ほいお疲れー」
夕彩がコーヒーを星夏の額に置く。
「あんがとぉ〜」
「もう星夏ので決まりでない?」
「えぇ〜?」
と言いつつ嬉しそうな星夏。
「いやぁ〜、「最終なぁに?」をボドケ化するって発想はなかったわ」
「んふふ〜」
「嬉しそ」
「でもあんま浮かれると、いつもみたいに落選したときいつもよりへこみそうだから感情押し殺しとかないと」
午前は会議だけで、お昼休憩の時間になったので、星夏は夕彩と外へお昼へ繰り出した。
「はあぁ〜…。会社戻りたくない…」
と項垂れる星夏。
「なんでよ。午後イチで良い報告聞けるかもしんないじゃん」
と言って先に届いた飲み物をストローで飲む夕彩。
「…ま、そうだけどさ?もしボツだったら?私、人生であれ以上の企画案思いつく自信ないよ?」
と言う星夏に
…ま、たしかにあれで落ちたら、私でも相当へこむわ
と思う夕彩。
「ビールでも頼む?」
「ん?なぜに?」
「いや、酒の勢いで緊張なんてなくなるかなぁ〜って」
「いや昼休憩とはいえ、午後も仕事あるのにお酒飲んだってバレたらワンチャンクビよ?」
「…ま、それはそうか」
「しんどい…」
と話していると注文していたお昼ご飯が届いて2人で食べることに。
しかし、夕彩がもうすぐ食べ終わるというときに、星夏はまだ3分の1も食べていなかった。
「どしたん。根詰めすぎて体調でも壊した?」
「…いや。緊張でご飯が喉を通らない…」
「あぁ」
「夕彩、食べて」
「は?太らす気?」
なんて言いながら、結局半分ほどを夕彩が食べることになった。
どこか期待しているはずなのに、いつもボツなので、会社に戻る足取りが重い星夏。
エレベーターを待っていると、エレベーターから
「おぉ、星夏に夕彩ぁ〜」
「お疲れぇ〜」
星夏と夕彩の同期で、現在PR、宣伝部にいる千城田(ちしろだ)文糸(ふみ)と
芦条(ろじょう)愛光流(あひる)が別のエレベーターから出てきた。
「お疲れぇ〜」
と返す夕彩。
「あれ?星夏どしたん?推しに実は彼女がいて、でもその彼女は浮気相手で
実は妻子持ちだったクズっていう報道が出たみたいな顔して」
と言う文糸に
「どんな顔だよ」
と笑いながら言う夕彩。そして続けて
「今日プレゼン会議があってさ?いいプレゼンできたんだけど
ボツるかボツらないかでナイーブになってんのよ」
と説明した。
「あぁ〜ね。大丈夫だって。手応えあったんでしょ?」
と言う文糸に、力無く微かに頷く星夏。
「じゃあ大丈夫!この私が保証する」
「3年保証の期間内でも修理受け付けてくれなさそうな不安な保証だけど」
と言う愛光流。
「なんだとぉ〜?」
というやり取りに、思わず笑顔になる星夏。
「ありがと。少しは気晴れた」
「そ?なら良かった」
「ま、緊張具合は変わんないけど…。あ、吐きそう」
「え、やめて」
「ベーター(エレベーター)乗ったら乗り物酔いするかも」
「マジ勘弁」
「でも星夏の企画通ったら、宣伝は私ら同期にまかせんしゃい!」
と肩を組む愛光流と文糸。
「うん。そのときはよろしくお願いします」
「うい!頼まれた!」
と会話を交わし、エレベーターに乗る星夏と夕彩。
冗談で言ったが、エレベーターが上っていく=自分の部の階が近づいている。と思ったら
緊張が徐々に増していき、本当に吐きそうになる星夏。
エレベーターが星夏たちの部署がある階につき、ドアが開いた。
「このまま出ずに定時までエレベーターガールでもしようかな」
と冗談を言う星夏の背中を押し、一緒にエレベーターを出る夕彩。
オフィスに戻ると、どこか晴れている空気な気がしたが、みんなの顔が冴えない。
もし星夏の案が採用されたのだとしたら
「塩地!よかったな!お前の案で行くってよ!」
と竣が
「よかったわね」
と青音羽が
「おめっす」
と怜視(さとし)が言ってきて、四季(しき)もペコッっと頭くらいは下げてもよさそうなものだ。
しかしそれがない。その時点で悟って、ふらふらふらぁ〜っと自分のデスクのイスに座り
デスクにダラァ〜っと突っ伏した。夕彩もその場で立ち尽くしたまま
嘘じゃん
と思ったが、青音羽が夕彩の手になにかを握らせてきてそれで悟った。
「塩地!初めての企画採用おめでとう!」
と俊が言うと
「「おめでとう!」」
みんなの「おめでとう」の後に、パン!パン!パン!という破裂音と火薬の匂いが漂ってきた。
そう。夕彩の手に握らせていたのはクラッカーだった。星夏は顔を上げ
「…え?」
と呟いた。
「今回、塩地の案で行くことになったって。
だからプロジェクトリーダーになるからオレの企画から外れてくれて構わない。
てか、オレの企画やりながらとか無理だろ。お前、今回初なんだし。企画通ったの」
と言う竣に
「ツンデレなの?」
と言う青音羽。続けて
「こいつが言いたいのは、要するに、初めての企画なんだからそれだけに集中して
いいものにしろよ。ってことね」
と補足する。
「え。…え。でも、オフィス入ったとき、みんななんか暗そうな…」
と自分の企画が通った夢見心地と、状況と、いろいろ整理できていない星夏。
「あぁそれね。青牙(あおきば)が思いついたの。
クラッカー買ってきて、最初は「どんまい」的な雰囲気を醸し出しといて驚かそうって」
と言う青音羽の説明に、竣を見る星夏。そして泣いた。
「あぁ〜あ。青牙先輩、星夏泣ーかしたー」
と言う夕彩。
「は、あ、いや」
とテンパる竣。
「言い方小学生」
と呟く怜視。
「なんで…。なんでですか。入ってきたときに「おめでとー!」でもよかったじゃないっすか」
なぜか「おめでとー!」のときだけ、パッっと顔を切り替えて、またすぐ泣き顔に戻った星夏。
「いや、なんか、ふつーよりそっちのが嬉しいかなって」
「意地悪ぅ〜」
「あ、青牙。紙テープと紙吹雪の掃除よろしく」
「は?」
「いや、あんたが買ってきたんだから」
「たしかに。私んのときなかったしな」
と言う夕彩。
「じゃ、掃除よろしくぅ〜」
「おい塩地。塩地も手伝えよ?塩地のためにやったんだから」
「あ、パワハラ」
「は?」
「泣かせた上に掃除の強要っすか」
「マジこいつ」
などとオフィス内は盛り上がった。午後からプロジェクトリーダーしての仕事は始まった。
しかし星夏にとっては初めてのプロジェクトリーダー。なにをすればいいか右も左もわからない。
ということで竣が自分の企画を進めながら、星夏のアシストをすることになった。
「まずあれ。オレの企画の塩地の仕事、別の人にやってもらうから引き継ぎからだな。
そもそも塩地、引き継ぎってやったことあんの?」
「…今の部に来てからはないかもです。
前の部からこっちに移動になったときはした気がするんですけど、もう忘れました…」
「…あっ。ま、そりゃそうか。今回初だもんな。企画通ったの。初だもんな」
「なんで2回言うんですか」
と話しながら、竣から引き継ぎ作業について教わり
星夏は竣の企画の手伝っていたタスクの引き継ぎのための資料作りをしていた。
慣れない作業で時間を忘れて作業をしていたら
「星夏ー。今日は飲みにいきませぬか?」
と夕彩に声をかけられる。
「え?ん?」
とパソコンの時間表示を見る。するとすでに定時である18時を過ぎていた。
「え。もうこんな時間?」
「そよ?だから飲み行かん?って話」
「ん?あぁ〜…。どうしよ。一応引き継ぎは終わったけどぉ〜…」
「わかるよ?初のプロジェクトリーダーだし、右も左もわからんくて、青牙先輩に教わりながらだし
今回ボドゲだからテストプレイ用にいろいろ用意しないといけないのもわかるけど
初めて企画が通った日くらいさ?行きましょうよ。星夏の奢りで」
「なんで私の奢りなのさ!ふつー「おめでとう」って感じで奢ってくれるんじゃないの?」
「いや、息が長い、長期的なシリーズになるんですよね?
ボーナスエグいですよね?じゃあ奢ってもらわないと」
「ここで私に奢ったら、将来何倍にもなって返ってくるとは思わないのね」
「目先の大金より、目の前の友よ」
「…」
一瞬良いことを言った風に思ったが
「いや、奢ってもらうつもりのやつが、どの口でそんなこと言う?」
我に返って2人で笑った。ということで定時より少し後で会社をあがり
報告がてらマジックバー&バー「immature lure portion」に訪れた。
「いらっしゃいま」
RENが星夏と夕彩に気づき
「せー」
と言いながらカウンター席にコースターを置いた。星夏と夕彩はコースターの置かれた席に座った。
「あ、ナチュラルにカウンター席に通しちゃいましたけど、カウンター席でよかったですか?」
「あ、はい。あ、カシオレをお願いします」
「カシオレですね」
と言った後にRENは夕彩を見る。
「あ、私はいつも通り、シャンディーガフで」
「シャンディーガフで。翔煌ー」
とRENが翔煌を呼び、翔煌が夕彩にビールの銘柄を聞いてそれぞれ作り始める。
「あれですね。なんか嬉しいことでもあしました?」
と星夏の頼んだカシスオレンジを作りながらRENが聞く。
「え?」
「なんとなくですけど、お顔が晴れやかといいますか」
「え?えぇ〜?」
「あ。もしかして」
とRENが言うと星夏は誤魔化すようにわざとらしく視線を逸らす。
「あれ?聞いちゃダメだったかな」
と言いながらカクテルを作り終え
「お待たせしました。カシスオレンジです」
と星夏の前のコースターに置く。
「あの、もしよかったらなんですけど、RENさんもなにか飲まれてください。
あ、もちろんお金は出しますんで。乾杯できたらと」
と言う星夏。
「え。いいんですか?」
「はい。ぜひ」
「じゃあ」
と言ってRENはYOTSUKI(ヨツキ)、Super Dry(スーパードライ)を取り出して、凍ったビールグラスに注ぐ。
「じゃ、ありがとうございます。すいません。いただきます」
「はい。えぇ〜。この度、私の企画が通って、プロジェクトが進むことになりました!」
と星夏が言うと
「おぉ」
とRENが唸る。
「ありがとうございます!乾杯!」
「かんぱぁ〜い。おめでとぉ〜」
と言う夕彩と
「乾杯。おめでとうございます」
と言うREN。乾杯した後、同時に3人、一口飲む。
「あぁ〜…。美味しい」
「改めておめでとうございます」
と言って軽く頭を下げるREN。
「あ。ありがとうございます」
軽く頭を下げる星夏。
「それもこれもRENさんのお陰で」
「ん?僕ですか?」
と面食らって思わず笑うREN。
「僕はなにも。ただお酒作ってマジックしただけで」
「そのマジックからインスパイアされまして」
「マジックから。ちなみにどの」
「ルービックキューブにやつです。実は片面が揃ってて
最初はバラバラな面を見せておいて、投げるときに揃ったほうに変えるってやつ」
「あぁ。掴みのマジックですね」
「それからインスピレーションを貰いまして」
「へえぇ〜。ちなみにどんなインスピレーションだったんですか?」
「なんか、こう。見る面を変える。見る角度を変える。何気ないところに目を向けてみる。みたいな感じで」
「なるほど。今回の企画?でしたっけ?たしかボードゲームでしたよね?」
「はい」
「その何気ないところに目を向ける。ってのが大事だったんですか?」
「はい。えっと」
と思わず内容を言ってしまいそうになるが踏み留まる。
「えぇ〜…。RENさんからインスピレーションをもらったので
言いたい気持ちは山々なんですけど、まだプロジェクトが走り出したばっかりで
まだまだブラッシュアップの余地があって
今情報が漏れると他社さんに持っていかれる可能性があるので…。すいません」
と謝る。
「あ、いえいえ。謝らないでください。
当然ですし、インスピレーションを与えたのは僕かもしれないですけど
思いついたのは星夏さんなので。…でもそうか。そうですよね。
せっかく今回企画通ったのに、他社さんに案持ってかれて先に出されたら…」
「はい。大泣きします。てか病みます。てか辞めます会社」
「ですよね」
と笑ってビールを飲むREN。
「でも!発売決定したら真っ先にRENさんにお伝えします!」
と言う星夏に、微笑んで
「嬉しいです。お待ちしてますね」
と言うREN。
「なっ、なので、連、連絡先教えてもらえないでしょうか!」
と言う星夏に
「おぉ。大胆」
と呟く夕彩。
「いいですよ」
あっさり言うREN。RENはスマホを出して
「僕が(QRコード)読みます?」
「あ、じゃあ私出します」
という感じで連絡先を交換した。LIMEの連絡先には「恋斗」と書かれていた。
あ、本名、恋斗っていうんだ
と本名を知れて少し嬉しくなる星夏。トークを押してスタンプを送った。
「スタンプ送りました」
「…はい。来ました。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
というやり取りを見て
「大人の青春ってやつですか」
と呟く夕彩。そんなこんなで終電前にお会計を済ませ
「今日はありがとうございました」
いつも通りRENが出入り口までお見送りしてくれる。
「こちらこそありがとうございました」
「星夏さんのボードゲーム楽しみにしてますね」
「はい!いいものをお届けします!」
「nyAmaZonか」
とツッコむ夕彩。
「たしかに」
と笑うREN。
「じゃ、また来ます」
「はい。お待ちしてますね。おやすみなさい」
「はい。おやすみなさい!」
と言ってお店を後にした。その後ギリギリ終電1本前の電車で帰れて
家に帰り、スーツから部屋着に着替え、ベッドに顔から倒れ込み
途中で体を半回転させ、仰向けにベッドに倒れ込んだ。そしてスマホの画面をタップする。すると
恋斗「今日はありがとうございました。
初の企画、本当におめでとうございます。
あまり無理しない程度にお仕事頑張ってくださいね。
おやすみなさい」
と恋斗からメッセージが来ていてスマホを胸に押し当てる。そして返信して
よし。明日から頑張るぞ!
と思って眠りについた。
コメント
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いやー、星夏ちゃんおめでとう!! 企画通った瞬間のオフィスの流れ、めっちゃ良かった。最初の暗い雰囲気からのクラッカーで泣かせるとこ、竣先輩のツンデレ具合も含めて、仲間に祝福されてるのが伝わってきてこっちまで嬉しくなったよ。RENとの連絡先交換も「大人の青春」って感じで、今後の展開が楽しみになる終わり方だったな!