一目惚れだった
俺にとっては、初めて感じた気持ちに動揺していた
これは、どういう気持ちなのか
答えが知りたくて、
勉強は得意だけど、この問いに出せる答えは、一向に出てこない
いくら考えたって、俺の仮定を裏付けるものなんて、なかった
でも、彼が教えてくれた
その、一目惚れした彼が
「えっ…と……」
「急に、ごめん…ね?」
たどたどしい口調で話す彼は、彼らしくなかった
「えっ…と」
不意に、彼は俺の目を見つめる
彼の眼は俺を離さない
「好きです。」
「俺と、付き合ってください」
なんて答えればいいのか分からなかった
「……今の、俺の気持ちはよくわかんないけど」
「だてさんがなんか…こう…特別っていうか…?」
上手く言えないけど、だてさんと付き合えばこの気持ちが分かるんじゃないか
そう思えたんだ
__回想は、ここまで
今、俺が何をしているか
だてさんのいない間にだてさんの部屋にあるパソコンをいじっている
もちろん、バレないようにね
だてさんがこのパソコンを開いても痕跡が残らないようにしてる
そこから、だてさんの所属する組織の情報をスマホで写真を撮る
__今日はこんぐらいかな
これは、俺の独断でやっていること
いつか、組織に流そうかなぁ、なんて思ってるとこ
まぁ、流す予定は無いけど
流したらだてさんが殺されちゃうからね
だてさんの部屋を出てリビングに行く
まだ帰ってきてないけど、俺も仕事だ
出かける準備をする
今日は雑誌の撮影だ
撮影スタジオに着くと、俺の”表の顔”を作る
俺の”表の顔”は、いつも笑っていて、温厚な雰囲気で、さりげなくあざとい感じを出す
“あざとい”なんてみんな言うけど、それは俺に騙されてるだけだよ
こんな俺があざといわけが無い
俺の”裏の顔”を見ればわかるよ
最近は”裏の仕事”が多くてどっちが”表”でどっちが”裏”か分かんなくなってきたけどね
まぁ、こっちの仕事はメディアに出まくっているからこっちが”表の仕事”でいいだろう
人は誰しも仮面を被る
意識していても、していなくても
今日の雑誌はなんか暗い感じだった
黒が基調の服を着て濃紺の背景の前に立つ
シルバーに光る指輪を右手の中指と左手の小指にはめる
何枚か撮ったあと、小道具を渡される
小道具は、
「仮面……」
白の仮面に黒色で顔が書かれていた
……俺みたいだな、
仮面を、重ねて、重ねて
元の顔が分からなくなるぐらい重ねた
もう、よくわかんないや、笑
どれが本当の自分なのかも、
自分の、本当の気持ちだって、よく分からない
仮面は、こんなに薄っぺらいのに、
俺は、
仮面に埋もれてしまっている
こんな、薄っぺらい仮面に、埋もれて、
ダサすぎる
『はいオッケー!!』
「阿部ちゃん、お疲れ様」
今世紀何をしても決まる男こと目黒蓮がsmileと共にお茶をくれた
さすが、お茶を渡してくれるだけでも絵になる
「この仮面、俺も被ってええ?」
キラキラした目で康二が見つめてくる
「いんじゃない?」
と言うと仮面を持って被る
「さっくーん」
と言って佐久間の所へ行く
子供かよ
コメント
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うわぁ、新作だぁ、、