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「やっぱヴァンパイアには眷属《家来》でしょ~ あたし血ぃ吸わねぇけどッ」
「きゅ~ 」
必死にジタバタと短い手足をバタつかせ、潤んだ瞳が慈悲を乞う。サディスティックな口角から牙が覗きネチャリと糸を引くと、目の前の加虐性欲者は恍惚の笑みを浮かべ銃口を毛玉《もふもふ》の口に押し込んだ。
「おい! 一体誰に断って縞々《しましま》の尻尾なんてふざけたもん付けてんだ? ナメてんのかテメェ~ 何で縞々なんだよッ、いいか? 今すぐ理由を教えろ」
「きゅっ⁉ 」
「さぁ~ん・にぃ~い・い~ちぃ…… 」
≪マスターいけません―――≫
「きゅあぁぁぁぁ~ 」
余りの恐怖に耐え切れず、じわりと股間を濡らし乍《なが》ら、バタバタと必死に命乞いをする。
「うひゃひゃひゃひゃッ――― 」
その赤い眼球の奥の角膜は、縦に細く伸縮を繰り返し得物を品定めしているように伺える。鎖を持ち上げられ首のベルトが締め上げられる中、生き残る為の条件がソノ悪魔から提示された―――
「いいかよく聞け。逃げたら殺す―― 言う事を聞かなければ殺す―― あたしに服従しなけりゃあ殺す―― 分かったか? 」
ジャララと鎖が掌を下り落とされると、慌てて自慢のモフモフのお腹を曝し服従のポーズで意思を示す。
「みゃぅみゃぅ――― 」
「何言ってんだか分かんねんだよッ、まぁ服従するって事よね? 」
「みゅっ‼ 」
だらしのない愛嬌のあるお腹は、まだ恐怖が抜けないのか小刻みにプルプルと震えている。
「あたし知ってるんだからッ。名付けをしてやると能力が開花するんでしょ? 話が出来るようになったり変身出来たりって書いてあったもんッ 眷属になったアンタには早速名付けをしてやるわ」
≪あのっマスター…… その知識は一体何処で…… ≫
「塔のAIが勧めてくれた地球《グローブ》の本っヤツに決まってるじゃない」
≪それは若《も》しかして地球《グローブ》の小説と云う分野の本ですか? ≫
「そうよッ、それがどうかしたの? 頭の良くないアタシでも分かり易くてすごく為《ため》になったわ。異世界って何処の銀河の事なのかしらね? 彼奴《あいつ》ら殺しても転生とかって生き返るのよ凄くない? 」
≪まっマスター! ソレはですね歴史書では無くて創作物で…… ≫
「そうねぇ…… アンタの名前はガンモッ。今日からガンモって名乗りなさい。分かったガンモ? んッ⁉ ほらっどうしたの? 早く光りなさいよ、名前あげたらファ~って光るんでしょ? あ⁉ ゴラッ‼ 光れよてめぇ」
ゆっくりと銃口が鈍く光り線を描く―――
≪終わった――― ≫
「みゅぅ~ 」
「 ―――チッ」
「おかしいわねッ、名前に納得がいかないって事なのかしら? 何も変化無しね」
≪まっマスター、それは後回しにして今は使者殿を…… ≫
「ん⁉ あ~そうねッ、オラ行くわよガンモ」
「みぃ~ 」
「名前が気に入らないとか言わせないからねッ、アタシが授けた名前なんだから有難く思いなさいよ? アンタは誰が何と言おうとガンモなのよ、分かった? 」
「みゅ~ 」
タラップを降りた所でブーツが砂に足を取られバランスを崩すと、歩き辛さが災いし、ミューのご機嫌が更に悪化する。
「チッ――― うぜぇ」
ホバーバイクの前まで近づくと、気味の悪いカエルはぴょんとバイクを飛び降り、目の前に佇むミュー達に向い大きな拡声器で話しかけた。
「ゲゲっコゲーコゲーコゲレッコ」
「こいつも――― うぜぇ」
≪マスター何卒、軽率な行動は…… ≫
―――ミューの脳内にマザーの焦った声が響く―――
(軽率? 目の前に居るアタシ達に向って拡声器を使ってしゃべるバカよ? 幾ら目ん玉が橫向いているからって、喧嘩売ってるとしか思えないんだけどッ。じゃあ何か? 正面はスカスカか? )
すると何故かガンモとカエルがお互いに距離を詰め、手振り身振りコミュニケーションを取り出した。
「みゅう~みぃみうみゅみ~み~うぃ」
「ゲッ! ゲロゲ~コゲッコウゲレロゲコ? 」
「みゅっ、みぅみみみゅっみぁみ~みゅっみあ」
「は⁉ ふざけてんのかてめーら」
(おいッ、バザー此奴等《こいつら》どうなってんのよ? 会話成立してんだけど? )
≪えっと、一応言っておきますがマザーです。そうみたいですね、会話が出来ると言う事は若《も》しかしたら……≫
( ―――お友達? )
≪ぶっは‼ いいえ、そうでは無くてガンモは原住種の可能性が≫
(何ソレ――― )
≪先住民族の様な元々その土地に古くから生きてきた種族と言う意味です≫
(どう見たってモフモフの獣じゃん原住種族ってマジ)
「どうでもいいけどオマエ達…… 顔近づけ過ぎだし、カエルの舌でびっしょびしょじゃんウケる」
「ゲロッコゲロゲ~ロゲロッコッコ」
「きゃっきゃっきゃっみゅぅ~」
―――イラッ―――
ミューを無視して楽しそうに会話する二匹に、静かに災いが降り掛かろうとしている。溜息がその運命を決定付けると、ギリリと尖った牙が歯軋りを起こす。もう沢山だと言わんばかりにミューが天を仰ぎ白目を剥いた刹那―――
オーラバトラーが唸る閃光を吐き出した―――