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「これでひと段落ね、みんなお疲れ様」
「お疲れ様!」
「おつー」
週末になり俺の家族が家に越してきた。今までは2人家族だったけれど、今日から5人家族になる。
「あち〜」
「ムシムシするものねぇ、もう少しで冷房きくと思うけど…」
「お父さん、ななにぃ、さとにぃお疲れ様。はい、冷たい麦茶どうぞ?」
「ありがと、ジェルくん」
「さんきゅ〜」
「ジェルくんはいい子だね可愛いねお父さん感動しちゃう」
お母さんは女性だからわかるけど、何故か俺も力仕事をさせて貰えなかったのでせめてもと冷やしておいた麦茶を配る。3人から断固として拒否されてその理由は折れちゃいそうとのことだった。中学2年生だから3人に比べたら力は無いかもしれないけれど、俺だって男の子なのに。
「俺も手伝えたのに…」
「ジェルくんダメです。お父さん心配になっちゃうので」
「そうそう、力仕事なんて俺たちに任せとけばいいんだよ?」
お母さんは俺にめちゃくちゃ甘くて過保護で親バカだけれど、3人もお母さに負けないぐらい過保護だと思う。お父さんは親バカでいいけど、兄弟だとなんと言うのだろう。
(兄バカ、っていうのかな?)
だって結局昨日。俺が怖くて2人から逃げ出しちゃった後、まだ登校したばっかだというのに3人でそのままこの家に帰ってきたのだ。生徒会長のななにぃとか多分そんなことしちゃだめなのに。申し訳なくなっているとななにぃは「大事なことだから気にしないでいいんだよ」って優しい声で言ってくれ、さとにぃがゲームやろうぜって言ったから三人でマリカをやった。そしてそのことをお母さんに言ってごめんなさいしたのに、頭を撫でられただけだった。甘々に育てられたら俺、我儘になっちゃう気がする。
でも実際力仕事がお役に立てるかといったら若干不安で三人を見てみる。パパやさとにぃは体を鍛えていてガッシリとしているし、ななにぃはすらっとしてるけれど、最近体重を増やそうとしているらしい。
「…俺もななにぃと一緒に鍛えようかな」
「「「え」」」
「ん?」
ぽつりと言ったら三人が固まった。食器を整理しているお母さんがキッチンで大笑いしている。
「わっ」
ぎゅうううぅうう。
近くにいたお父さんが、グラスをテーブルの上に置いて俺の腕を引っ張り抱きしめられる。
「るぅちゃんはこのままでいいんだよ。お父さんの腕に納まるぴったりサイズで抱き心地いいもん」
「父さん!?職権乱用しすぎじゃない?」
「オヤジはすぐそうやって…ジェルを離せよ汗臭いだろ」
お父さんが俺をぎゅっと抱きしめるのも、その流れで三人でがやがやと盛り上がるのも恒例とかしていて。楽しくて嬉しくて倖せだけれど。
「でも俺も強くなって、お母さんやお父さんやななにぃとさとにぃを守れる男になりたい!」
俺だって男の子だからね。
「うぅ…可愛い…応援してあげたいけど…、どうすればいんだ息子たちよ」
「人生最大の選択かもしれんわこれ…えぇ~、俺は可愛いジェルくんがいいよ~」
「オヤジ、なんとかしろよ父親だろ」
お母さんが冷えたぶどうを持って来ながら、お父さんに抱きしめられている俺を救出してくれる。けれどお母さんにぎゅっとされた。
「何言ってるのあなたたち。ジェルはムキムキになっても可愛いわよ」
「…勝てねーんだよなぁ」
なんてさとにぃがぽつりと言って、またもや仁王立ちしてるお母さんがころころと笑った。
「ってことで、あなたたちお留守番よろしくね?」
お父さんとお母さんはこれからデートらしい。というか婚姻届を出しに行くから今日が結婚記念日でそのままいいホテルにお泊りするんだと、昨日倖せそうに言っていた。
「あ。そうだ。なーくん、さとみくん」
「なに?母さん」
「んー?」
「可愛いのはわかるけど、手を出すのはまだ早いからね?」
「ぶっ」
「なっ!!!かあさん!」
「掃除しとけよさとみ、じゃあいってくるね~ジェルくん」
お母さんの言葉にさとにぃが飲んでいた麦茶を吹き出し、ななにぃが顔を赤くしていた。手を出すってどういうことなんだろうとぼんやり思っていたらお父さんがほっぺをすりすりしてきた。
「いってらっしゃい!気を付けてね!」
二人を玄関まで行って送り出す。リビングに戻るとにぃに達が床とテーブルを拭いていた。
「さとにぃ大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」
「ジェルくん、夕飯どうしよっか?どっか食べに行く?」
「ついでに明日の朝ごはんも買ってこようぜ~」
麦茶を拭き終わった二人は床にぐったりと寝そべりながら話し出す。重労働したにぃにたちに俺でできるなら何かしてあげたい。
「あの…」
「どうしたの?何か食べたいものある?」
「俺でよかったら夕飯つくる、よ?」
俺の言葉に二人がばっと起き上がるので少しびっくりしてしまう。
「え?ほんと?」
「まじ?」
「う、うん。自分のお弁当とかつくってるから…そんなにすごいものは作れないけど」
じっと二人に期待に満ちた眼で見つめられて恥ずかしくなってしまい、どんどん声が小さくなってしまった。
「え、お弁当?てか俺にも作ってよジェルくん」
「俺も俺も!作ってジェル」
「二人はいつもどうしてるの」
「購買とかコンビニだねぇ」
「男家族だかんな」
「お家でのご飯はどうしてたの?」
「さとちゃんがたまにちょっと作ってくれるけど、基本父さんが作ってたね」
「で、父さんが疲れてる日は惣菜だな」
お惣菜と聞いて三人の健康が心配になった。育ち盛りと働き盛りの男性、お惣菜もとってもおいしいかもしれないけれど健康が偏ってしまう。
「俺が作る!作らせて」
「まじ?ジェル作ってくれんのめっちゃ嬉しい!」
「月曜が楽しみだね~あ、もちろん手間じゃなかったらだからね?」
「うんっ」
自分だけだったらなんでもいいってなっちゃうけど、食べてくれる人がいるならやる気が出る性分で。冷蔵庫をみて夕飯の分と明日の分、お弁当の分と必要なものをメモしてエコバックを持ちリビングを出ようとする。
「買い物いってくるね?」
「ちょ、まって!俺たちもいくよ」
ばたばたと財布と携帯をぽっけにつっこにながら二人が立ち上がった。
「?、休んでていいよ?」
「ジェルくんが一人でいくなんて休んでられないよ」
「一人ではいかせませーん、ほら、俺たちと行くぞ」
さとにぃがバックを取り上げての右手を掴んだ。ななにぃが笑いながら左手を掴んで歩き出すから自然と二人に引っ張られて。
「ふふふ」
「どうしたの?可愛く笑っちゃって」
「なんでもない、行こ?にぃに」
お母さんの言っていた、大好きが増えるってこういうことなんだなぁと実感した。
スーパーに買い物に行って、やっぱり俺は荷物を持たせてもらえなくて、替わりとばかりに握らされたのは二人の掌だった。中学生にもなって本来は恥ずかしいのかもしれないけど俺の自慢のお兄ちゃんたちいいでしょ、なんて世界に自慢したいくらい俺は嬉しい。
家についてなすカレーを作っていたのだけれど、ななにぃとさとにぃは何が楽しいのか俺の後ろ姿をじっと見守っていて。「いつでもお嫁さんになれる」なんて言っていた。なるとしたらお婿さんじゃないのかな。
二人の口にカレー運ばれる時ドキドキしたけれど、美味しいってまた作ってって言われたから今度はにぃに達の好きなものを作ってあげようとこっそり思った。洗い物や片づけをさせてもらえない代わりにお風呂に入ってきなさいと言われお言葉に甘える。
二人を待っていたら、今日が楽しすぎてテンション上がってしまったからかリビングでうとうとしてしまって、二人に手を引かれるまま連れていかれたのはななにぃの部屋。お邪魔するとずっと暮らしてた家のはずなのに、もうななにぃの匂いがしてなんだかドキドキして。突っ立ってたら睡魔に負けそうな俺は簡単にベッドに転がされた。
「、一緒に寝よ?」
「一緒?」
「そ。俺とさとちゃんとで三人で」
「ふふ、嬉しい」
俺の後ろにさとにぃがくっついてきてお腹に腕が回される。俺の前にはななにぃが入ってきたので、胸元にすり寄る。部屋もお布団もななにぃの匂いに包まれてふわふわする。
大好きな二人に挟まれて。俺の心も口元も倖せでゆるゆるになってしまう。
「ななにぃも、さとにぃも、今はおれだけのものね?」
なんて夢心地で自慢する。かっこよくて、文武両道でみんなに好かれ憧れる二人。それを独り占めできて嬉しかった。
(だって、弟だもん、いいよね?)
「今だけじゃなくてずっとジェルくんのものだよ?」
「つまり、ジェルもずっと俺たちのものな?」
「ん」
二人にくっつきながら寝たら、いい夢が見れそうな気がする。
「おやすみ、ジェルくん」
「おやすみジェル」
ちゅっ。
頬と瞼の上に落とされたキスで俺は眠りにころんとおちた。
私はウェブからテラーに入っているのでコメントで言えないのでここで言います。
彼岸 作⭐︎と言う橙受け作品の作家さんの中でもすごく好きな人がいるんですけど、もし彼岸さんが私の作品を見てくれているのならこの小説のカバーイラストを描いていただけたら嬉しいです。
もちろん断っていただいて全然構いません。書けていただけるならとても嬉しいでございます。
この間出していただいたマフィアシリーズ完結おめでとうございます🎉
今日出していたデジイラも好きです。アニメの方も見ますね!
そしてお知らせがあります。
桃橙シリーズ出します。
橙くんはいつも通り身長が小さいと言うことで
ここまで見ていただきありがとうございました♪
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次回♡500
コメント
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この作品ハマっちゃいました✨