気合バリバリのコユキに対して、『淫蕩(いんとう)』の罪』、『ルクスリア』は余裕の笑みを浮かべたままだ。
「あら、恐いわねぇ、んふふふ、でも貴女如(ごと)きにアタシの罪を解き放てるのかしら? うふふふふ」
そう言うと、横たわっていた体を起こし、気だるそうにしながらもコユキに向き直ったのである。
もう、アソコとか、アッチとか普通に丸見えのまま、ジトッとした瞳で話を続けるのであった。
「聖女さんたら、自身満々なのね? んふふふ、まあ、下層の人達を解放するなり、凌駕(りょうが)して通過して来たのでしょうから、その勘違いも無理は無いわね…… で・も・ね! 我は現大罪筆頭、今世に於(お)いては無限の罪をこの身に与えられ続ける、特別な存在なのよぉ、下の子達とは文字通り別格の存在なのよぅ」
自信過剰? ではないようだ、確かに、ここまでの六階とは比べようの無い程濃密な力の滾り(たぎり)を感じる、それは、コユキも同様だったのであろう、それを証明するように口にしたのだ。
「確かに、アンタからは大きな力の奔流(ほんりゅう)、迸る(ほとばしる)やる気と確固たる自信に裏打ちされた『本物』を、感じるわね?」
「へぇ、割と分かっているみたいね、アタシは『淫蕩』の大罪、世界は『淫蕩』に溢れているでしょう? パパ活、援助、出会い系、売春、デリヘル、リフレ、ソープランド、アダルトビデオ、アダルトサイト、それ以外にもアングラサイトは数え知れず…… 更に、痴漢、盗撮、覗き、強要、脅迫、強姦、ネット拡散、露出、自虐、マゾヒズム、サディズム、そして、アンダーワールドのフェティズムは数え切れず…… この二十一世紀の世界、時間軸に於(お)いて、最強且つ、最大の罪、誰もが陥って決して離れられぬ特上の罪、そして、少しの罪悪感を感じてしまう世の中の現状の只中で、最多の、そして最高のエニグマを読み解く資格を与えられしは、其(そ)は我一人きり…… 見やれ、大罪に留まらず、大徳をも喰らわんばかりの我が魂の隆盛を! エロっ! そう、全ては、エロと共に! うっ! うふふ! うふふふふふ!」
「なるほど…… エロと共にかっ、なるほどね、そうやってアタシのウィークポイント(実は大好物)をついてこようって訳ね…… 卑怯なんて謗り(そしり)はしないわっ! 立場が違えばアタシだって躊躇無く同じ様に弱点ってヤツを責めた筈だからねっ! ならば良し! 受けてくれようそのエロを! アンタ等異常者のエロも、苦しみも、全てアタシ、真なる聖女コユキ(ドエロ)が受けきって見せるわぁぁー!!」
しーん……
イッパイ喋ってくれた二人だったが…… 言葉と違い何も起きていない、普通の一般的なゴクゴクありふれた距離感の中で、互いに気恥かしさを感じていたのである……
こういう時に機先を制してくれるのは、そう、コユキ、いつも変わらない我等が聖女であった。
「んで、どうすんの? 確かアンタ等(ら)大罪には直接攻撃出来ないんだったわよね? 随分チートな設定だとは思ったけど、アンだけ大きな口きいてくれたんだから、まさか、アンタまでその条件下でしか戦えない訳じゃぁ無いでしょうね? どうなの? アンタ!」
挑発する為に発したコユキだったが、やすやすとその手に乗るほど『淫蕩のルクスリア』は単純ではなかったようだ。
「勿論直接、そう肉弾戦は我が罪『淫蕩』の力を最も発揮できる舞台でしてよ、でもその超重量級の体を見た所、貴女も自分の戦闘力にかなりの自信をお持ちでしょう? 貴女と違い我は戦う方法すら知らない只の女…… 口車に乗るのは遠慮しておきましょう、んふふふふ」
「む」
ここまでの六層の『大罪』とは本当に一味違うらしい、珍しくコユキは不安を感じるのであった。
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