テラーノベル
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コメコパァァン
保健室の空気が、少しだけ緩んだそのとき。
翠は、ぎゅっと自分の服の裾を握ったまま、
誰を見るでもなく、ぽつりとこぼした。
「……俺さ」
誰も口を挟まない。
だから、そのまま続いてしまう。
「役に、立てた……?」
その瞬間、
赫の顔がぐしゃっと歪んだ。
「……は?」
低い声だった。
怒りと、悲しみと、後悔が全部混ざった声。
「何それ」
翠が一瞬びくっと肩を跳ねさせる。
「だって……証拠、集まったし。
あいつら、ちゃんと処罰されるんでしょ?
なら……意味あったかなって……」
最後、声が小さくなる。
「俺が壊れた分」
──その言葉が終わる前に。
赫が一歩前に出て、翠の前に立った。
「役に立つとかじゃねぇよ」
震えてるのに、逃げない目で、まっすぐ見て。
「家族だろ」
その一言で、翠の喉が詰まる。
「俺はさ……
翠にぃが“役に立つため”に殴られてたとか、
傷ついてたとか」
声がひっくり返りそうになるのを、
翠は噛み殺した。
「そんなの、知りたくなかった」
黈が、静かに続ける。
「翠が無事でいることが、一番なんよ」
優しい声だけど、強い。
「証拠とか、処分とか、正直どうでもいい。
翠が壊れないことの方が、ずっと大事」
瑞も、ぎゅっと翠の服を掴む。
「翠にぃが役に立つなら、
生きて笑ってるのが一番だよ……」
その言葉で、翠の目から、ぼろっと涙が落ちた。
桃が、低く、でも確かな声で言う。
「お前はな」
一歩近づいて、頭に手を置く。
「もう十分、やりすぎた」
茈も静かに頷く。
「守る側を一人でやるな。
それ、家族の仕事じゃない」
翠は、声を震わせながら言う。
「……じゃあ俺、
何も出来てなかった?」
赫は、即答した。
「逆」
そして、少し泣き笑いで。
「生きて、ここにいてくれた。
それだけで、全部だ」
翠は、とうとう耐えきれなくなって、
顔を手で覆った。
「……ごめん」
赫は、首を振る。
「謝んな」
そして、少しだけ声を落として。
「今度は俺らが守る番だ」
保健室に、静かな嗚咽が広がる。
でもそれは、
一人で耐える涙じゃなかった。
コメント
11件
…すぅぅぅぅ⤴最&高!!!いや、今までずっとコメントつけるの馬鹿って分かるから書けなかったけど、もう、我慢できない!…ア、シツレイシマシタ …この作品っていうか、こはゆ様の作品にコメントを書くのは初めてで、ものすっごく緊張してるんですけど…神様…ですか?いや、ですよね?っていうほど神です!あ、こはゆ様のことなんとお呼びすればよいでしょうか…?(長文失礼致しました)