ユメの自殺未遂の一週間前。
サイド タエ
「……ぅう、もう着いちゃう……」
午前十時。ユメちゃんのより詳しい調査をするため、私は一人で小学校周辺を彷徨(うろつ)いていた。
学校、特に小学校は好きじゃない。キノと出会う前のことを思い出してしまうから。現に、思い出していたから。
でも、そんなこと言ってられなくなってきた。
初代団長・ダイチが亡くなってもう三年。みんなも、団も、変わっている。
私も、変わらないといけないのに。一人にしないって、約束したのに。
……ん?
なんだろう、あの人。
違和感を感じた。なんでそう思ったのか、その理由を理解するために私はその人をよく見る。
スーツ姿の男性。歳は、たぶんマオやトキさんと同じくらいかな。キョロキョロして、深呼吸を繰り返す様子から緊張感がこっちまで伝わったいるみたいだなぁ。
挙動不審なこと以外はいたって普通なのに……なんで気になっちゃったんだろう。
…………あ。
「時間帯が、おかしいんだ……」
午前十時。普通の人は、会社や学校に居る時間だから。休みの可能性も無くは無い。だけど、それならスーツは着ないはず。
……じゃあ、なんで彼はスーツを着て、あんな挙動を取っているのか。
もし、辺りを見回す様子が、緊張ではなく、警戒なら?
……馬鹿馬鹿しい、荒唐無稽な考えかもしれない。彼が詐欺に加担している、なんて考え。
でも、私は、私たちモンダイジは、いつも最低最悪の想定をしなきゃいけない。
この世界は、何処もかしこも危険でいっぱいなんだから。
もちろん、私の勘違いならそれでいい。けれど、もしこの仮説が当たったら……。
ここには、キノもモンダイジもいない。私しかあの人を止めることが出来ない。
怖い。関わりたくない。でも。
私が独りだったように、今は彼も独りで、モンダイジなんだ。
────私も、変わりたい。
私は、意を決して彼に声を掛けた。
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