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サイド リオ
大丈夫。バレなければ、見つからなければいいんすから。
頭ではそう分かっていても、心臓がバクバクと早鐘を打っている。そして、それはいくら深呼吸しても止める気配がない。
そんなときに、声を掛けられたからびっくりしたんすよ?
「ね、ねぇ!」
「??!!う、わあっっ?!」
「きゃっ……!」
何故かそっちから声を掛けたくせに、振り向いたときにはもう涙目だったし。
「んなっ……何の用すかっ?!」
もう気が動転していた。冷静になることが出来なかった。
「ええと……、詐欺はぃけなぃょ……?」
「……なんで疑問形なんすか」
言葉も尻すぼみになっているし。
きらり、とその子の目が光る。……そこで俺は自分の失言に気がついた。
「やっぱり、詐欺に加担してるんだね」
「あっ…………」
慌てて口を押さえても、もう遅い。しまった。バレた。どうする?
俺が何か言う前に、その子は口を開いた。
「あなたと同じ様に、私もモンダイジだったから。だから、ね。悪い事、させたくないの……!わ、私はあなたのことが知りたい……!」
……同じ、か。
スッと、混乱していた頭が冷えた。同時に、忘れかけていた自分の役割を思い出す。
何も知らない癖に、よく知りもしない人に向かってそんなことが言えるな。
「正義のヒーロー気取りっすか。悪いけど、こっちはごっこ遊びに付き合っていられるほど暇じゃないんす」
「……ごっこ遊びでも、ヒーローでも、ないよ?」
その子の目を見て、ゾッとした。さっきのオドオドした雰囲気は欠片もなく、その瞳の奧には鋭い光が灯っている。
背筋が凍るって、きっとこういうことを言うんすね。
「私たちは、モンダイジだもん」
真実を語る探偵のように、淡々とその子は言葉を紡ぐ。
「私は、モンダイジ団のタエ ユイカ。……あなたと、話がしたい」
断ってはいけない。直感でそう感じた。
「……分かったっす。でもいいんすか?」
「え?」
「その手に持ってる紙。なんか用事でもあってんじゃ……」
「あっ……!え、ええと!明日この近くの廃工場で!」
抜けてるところもあるようだ。