テラーノベル
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佐久間に見られてしまった翌日。
何事もなかったかのように振る舞おうとする俺らだったが、佐久間の挙動不審っぷりがひどかった。
楽屋でもソワソワしっぱなしで、何か言いたそうに俺らを見ては口をつぐむ。
その様子を見ていたメンバーたちが、ついに異変に気付く。
「ねえ、佐久間。なんか変じゃない?」
翔太が首をかしげる。
「うん、なんか昨日から落ち着きないよね?」
あべちゃんも同意する。
「えっ?な、何もないよ?何も!」
「その『何も!』が怪しいんだよ」
ラウがじっと佐久間を見つめると、佐久間はますます焦った様子で手を振った。
「ち、違うって!俺はただ、ちょっと衝撃的なものを見ただけで……って、あっ!?」
「衝撃的なもの……?」
目黒がすぐに食いついた。
「え、えっと、その、何でもない!!」
「佐久間くん、それ絶対何かあるやつやん!」
目を輝かせる康二に、佐久間が思わず俺らの方を見る。
その視線を追い、他のメンバーも俺らの方を向いた。
「……ん?」
舘さんがじっと二人を見つめる。
「え、待って。ふっかさんと照にぃ何かあったん?」
目を丸くする康二。
「え、なに?……」
目黒まで驚いた顔をする。
「え、これ、言っていいやつなの?俺もう無理!隠せない!!」
佐久間が頭を抱えると、全員が一斉に俺らに視線を集中させた。
「……言うしかないか?」
俺は照をチラリと見る。
「……まあ、いいんじゃね?」
「ちょっと待って、マジで?マジで何かあるの?こわいんだけど!」
ラウが興奮した声を上げる。
「……俺とふっか、付き合ってる」
照が静かにそう言うと、楽屋内が一瞬の沈黙に包まれた。
「……マジ?」
阿部ちゃんが慎重に確認するように尋ねる。
「マジ」
「ちょっと待って、整理させて!いつから?」
翔太が動揺した声を上げる。
「まあ、正式には最近だけど……」
「え?じゃあ、前からそういう……?」
ラウールが興味津々に聞く。
「まあ、いろいろあってな」
俺が苦笑すると、舘さんが静かにため息をついた。
「なるほど……佐久間はそれを目撃してしまったわけか」
「うん、マジでびっくりした。てか、マジで見たくなかった!」
「おい、ちょっと待て。そんなにショックだったのかよ」
ムッとする。
「いや、だってさ!いきなり部屋入ったら……」
「おい、言うなよ!」
照がピシャリと止める。
「でも、何か納得したかも」
不意に阿部ちゃんが口を開く。
「え?」
「なんかさ、最近照とふっかの距離、やけに近かったし。やたら目が合ってたり、楽屋でも二人でコソコソ話してたし」
「言われてみれば……」
翔太も思い当たることがあるらしく、頷く。
「で、今後どうすんの?」
舘さんから静かに尋ねられ、俺と照は顔を見合わせた。
「まあ……今まで通り?」
「そうだな」
「え、それだけ?」
「それだけって、お前……」
康二が思わず突っ込むが、照が動じることなく言い切った。
「俺たちはアイドルだし、グループが一番大事。それは変わらない」
「……まあ、岩本くんがそう言うなら」
目黒が静かに微笑む。
「うん、俺も別に反対とかじゃないし、応援するよ」
翔太が軽く肩をすくめる。
「ただし、外では絶対バレるなよ?もし写真とか撮られたら、大変なことになる」
舘さんに忠告され、俺らは真剣に頷いた。
「まあ、あんまり堂々とはできないけどな」
「だよね」
「でもさ、ふっかさんたちが幸せそうなら、それでいいんじゃない?」
ラウのその言葉に、楽屋が和やかな空気に包まれた。
「いやー、でもやっぱ衝撃だったなぁ」
佐久間がぼそっと呟くと、康二がにやりと笑った。
「これからは、俺らがしっかり見張らなあかんなぁ!」
「……余計なお世話だ」
照はため息をつくが、他のメンバーは楽しそうに笑っていた。
こうして、二人の秘密はメンバー全員に知られることになった。
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