コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
半ば立場が逆転してしまったが、俺の思い違いかもしれない。
頼む。買い取ると言ってくれ!
「わかりました!重さを量る道具を持って来ますので、暫しお待ちを」
よっしゃあ!
心の中で叫んでしまった。
だが、仕方ない。
ここでこれが売れないと、俺には後がないからな。
暫くすると天秤のような物を持って、職員が戻ってきた。
「では、量らせていただきます」
やはり天秤だったようで、重さを量り終えた職員はこちらへと告げる。
「砂糖が一キロですね。こちらは白砂糖ですよね?ここまで白い物を私は初めて見ましたよ」
「そうですね。白砂糖になります。
他にもあるのですが、買取をお願いできますか?」
職員は身を乗り出し、興奮気味に質問をしてきた。
「まさか!?他にも砂糖が?!」
「いえ。こちらは別のものになります」
職員にそう告げて、俺は胡椒が入った壺をテーブルに置いた。
「これは…胡椒ですね」
あれ?反応悪いな。
もしかしてありきたりな物なのか、はたまた質が悪いのか……
「素晴らしい胡椒ですね。ここまで細かく、そして茶色一色で混ざり物が無いですね。
こちらも高く買い取らせてもらいます」
そう言うと、嬉々として秤に掛けた。
くそっ!砂糖の時と反応が違うから焦ったやないか!
「良かった。お願いしますね」
暫く待つと、査定金額が出た。
「砂糖は一キロで70,000ギルになります。普通の砂糖であれば一キロ10,000ギル程ですが、こちらは白砂糖ですからね」
「あのー無学で申し訳ないですが、普通の砂糖との違いを聞いてもいいでしょうか?」
俺は気になったので聞いてみることにした。
「ご存知の通り普通の砂糖は茶色ですね。
私も色違いの原理は知りませんが、少し雑味というかクセがあります。
こちらの白砂糖は見たこともないくらい粒が揃っていて、サラサラです。
何分見るのが初めてなので聞いた話ですが、白砂糖は貴族様専用の品と言われていますね。
他国ではあるところにはあると聞いているくらいです。この国ではほとんどないのが現状ですね。
ですので、値段がお高いのです。
どちらで入手されたのかは聞きませんが、無闇矢鱈に見せてはダメですよ」
「ご禁制の品とかでは無いですよね?」
いきなり捕まるのは嫌なので一応聞いておいた。
「いえいえ。それでしたらウチは買い取れないですよ。
次に胡椒ですが、こちらは300グラム、20,000ギルで買い取ります。
入れ物の壺もしっかりしていますので、一つ3,000ギルで買い取らせていただきます」
貨幣価値がわからないので、最早頷くことしか出来ない。
「わかりました。それでお願いします」
「では、登録料を引いた89,000ギルになります。登録用紙と買取料を持って来ますので、今暫くお待ちください」
砂糖70,000と壺二つ、胡椒20,000と壺一つで99,000か。これで相場が円の10分の1とかだと辛いな……
そんな事を考えていると、先程の職員が戻ってきた。
「登録用紙にお名前と年齢、血判をお願いします」
「血判?親指を切る奴ですか?」
「いえいえ、こちらに親指を押さえていただくと、勝手に針が刺します。ですので、痛みはほとんどないですよ」
血判と聞いてビビったが、そんな道具があるのか……
「はい。結構です。 セイさんですね。
私は商人組合の職員でハーリーと言います。 これからもよろしくお願いします。
そして、こちらが89,000ギルになります」
良かった。文字もしっかり通じたな。
日本語のつもりで書いても、勝手にこの世界の文字になるのは見てて気持ち悪いけど……
渡されたのは小ぶりな金貨(?)1枚と大きめの銀貨3枚、その半分くらいのサイズの銀貨1枚と小ぶりな銀貨4枚だった。
「ええ。ではまた砂糖と胡椒を持って来ます」
「わかりました。胡椒に関しては料理屋に卸したり、個人向け商店でも小分けして売るでしょうから、いくらでも買い取ります。
私達も白砂糖の入手先であるセイさんのことは秘密にしますが、高価で希少品ですので、あまりばら撒かれますと貴族や豪商、最悪はマフィアなどに目をつけられるかもしれません。
そこはお気をつけください」
「わかりました。ありがとうございました」
平静を装って商人組合を出たが、やばい……
バレたら異世界貿易どころか異世界生活が終わってしまう?!
いやいや、もう少し砂糖を売らないと、貿易の前に地球での生活が破綻するぞ!
とりあえず地球での生活の為に、今度はこちらで仕入れをしよう!
何が売れるかわからないから、物価の差が大きそうな物を探すしかないな。
とりあえず貨幣価値を調べるぞ!
一先ず俺は、ここでの生活に必要なモノの値段を調べることにし、まずは食べ物を調べるために市場へと向かった。
「いらっしゃい!ん?なんだ、さっきの冷やかしの兄ちゃんか」
「先程は邪魔をして済みませんでした。おすすめの果物をください」
朝、商人組合のことを尋ねたおっさんの店にきた。
ここで買い物をすれば、悪い印象も無くなるし物価もわかるからな。
「お客なら大歓迎だ。うちの主力はリンゴだな。
一つ100ギルだ。どうだ?」
「二つ下さい」
俺はそう言うと、ドキドキしながら小ぶりな銀貨を一枚渡した。
「200ギルだから…800ギルのお釣りだ。
十分熟れているからいつでも食べれるぞ」
おっさんはリンゴと銅貨を8枚渡してきた。
「ありがとうございます」
受け取った俺はお礼を伝え、その場を後にした。
シャリッ
商人組合と市場の間にある広場のベンチに腰を下ろし、リンゴと呼ばれていたどうみても地球のリンゴを頬張った。
「中々うまいな。地球の物とそこまで変わらないかな。という事は、地球の物と同じで品種改良されているのか?」
異世界リンゴは元々美味いのか、それとも品種改良されているのか?という、どうでもいい事を考えながら、リンゴを食べ終わった俺は貨幣を並べた。
銅貨は一枚100ギルだな。
ということは、小銀貨1,000ギル、銀貨5,000ギル、大銀貨10,000ギル、小金貨50,000ギルということか?
まぁこっちも十進法ならだいたい合っているだろう。
それよりもだ。
月の神ってのがくれた翻訳の能力はどうなっているんだ?
同じリンゴがあるのはいい。
だが、固有名詞まで同じなわけないよな?それも翻訳の範囲なのか?
後は単位だな。
通貨の名称こそ円とギルで違うけど、キロが地球と全く同じと言うのはあり得んだろ…1グラムの定義が地球と同じなわけないよな。
馬鹿な俺にはかなりありがたい翻訳の能力だな。
異世界貿易が成功したらお供物でもするか。
リンゴが同じくらいの価値なら1ギル≒1円くらいだろうか。
安直だが分かりやすいし、問題が出るまではこの認識でいこう。
日が高くなったことで店も開いている。
次は地球で売る物だな。
「いらっしゃいませ。こちらはかの名工が彫った木彫りになります。プレゼントにおすすめですよ」
俺は工芸品を取り扱っている店に来ていた。
服は無理だし、食べ物は出どころ不明だと売れるわけがないからな。
と、いうことで、ハンドメイド商品に目をつけてこの店にやってきたのだ。
「……もう少しリーズナブルな品はないですか?」
こんなよくわからん木彫りに50,000ギルも出せるかっ!
「こちらは無名の方の作品ですが、丁寧な作りですよ」
俺には名工の作った物と無名の作った物の差はわからなかったが、値段が安かったのでいくつか買った。
「銀細工とかはありませんか?」
お金を払いながら店員に聞いた。
「三つ隣の店が扱っています。ありがとうございました」
無駄な買い物にならないといいが…売れるのか?
一先ず本命の銀細工屋に行くか。
「いらっしゃいませ。贈り物ですか?」
銀細工屋に入った俺に、おそらく10代の可愛らしい感じの店員が話しかけてきた。
あまり見た目についてどうこう思わない俺だが、やはり異世界は美形が多いな…見た目で浮いてないといいけど。
「ああ。そんな感じかな?数が欲しいからあまり高価な品は無理だけど…予算は50,000ギルで10個程見繕って欲しい。
無理かな?」
「大丈夫ですよ!では、こちらが大体5,000ギルのものになります。
この中からお選びください」
見せられても、俺に商品の良し悪しなどわかるわけもなく……
「任せてもいいかな?」
「はい!」
それから10分程をかけ、説明付きで選んでもらい、金を払って店を後にした。
その後、革製品の店でいくつか入れ物を買うが、地球と財布の規格が違っていて肩透かしだった。
他にも何かないかと街をブラつくが、目ぼしい商材は見つからなかった。
仕方なく宿を取ることにした俺は、宿と値段をリサーチしてから向かうことにした。
残金
89,000-200-8,000-49,500-12,000=19,300ギル