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半ば立場が逆転してしまったが、俺の思い違いかもしれない。

頼む。買い取ると言ってくれ!

「わかりました!重さを量る道具を持って来ますので、暫しお待ちを」

よっしゃあ!

心の中で叫んでしまった。

だが、仕方ない。

ここでこれが売れないと、俺には後がないからな。




暫くすると天秤のような物を持って、職員が戻ってきた。

「では、量らせていただきます」

やはり天秤だったようで、重さを量り終えた職員はこちらへと告げる。

「砂糖が一キロですね。こちらは白砂糖ですよね?ここまで白い物を私は初めて見ましたよ」

「そうですね。白砂糖になります。

他にもあるのですが、買取をお願いできますか?」

職員は身を乗り出し、興奮気味に質問をしてきた。

「まさか!?他にも砂糖が?!」

「いえ。こちらは別のものになります」

職員にそう告げて、俺は胡椒が入った壺をテーブルに置いた。

「これは…胡椒ですね」

あれ?反応悪いな。

もしかしてありきたりな物なのか、はたまた質が悪いのか……

「素晴らしい胡椒ですね。ここまで細かく、そして茶色一色で混ざり物が無いですね。

こちらも高く買い取らせてもらいます」

そう言うと、嬉々として秤に掛けた。

くそっ!砂糖の時と反応が違うから焦ったやないか!

「良かった。お願いしますね」

暫く待つと、査定金額が出た。



「砂糖は一キロで70,000ギルになります。普通の砂糖であれば一キロ10,000ギル程ですが、こちらは白砂糖ですからね」

「あのー無学で申し訳ないですが、普通の砂糖との違いを聞いてもいいでしょうか?」

俺は気になったので聞いてみることにした。

「ご存知の通り普通の砂糖は茶色ですね。

私も色違いの原理は知りませんが、少し雑味というかクセがあります。

こちらの白砂糖は見たこともないくらい粒が揃っていて、サラサラです。

何分見るのが初めてなので聞いた話ですが、白砂糖は貴族様専用の品と言われていますね。

他国ではあるところにはあると聞いているくらいです。この国ではほとんどないのが現状ですね。

ですので、値段がお高いのです。

どちらで入手されたのかは聞きませんが、無闇矢鱈に見せてはダメですよ」

「ご禁制の品とかでは無いですよね?」

いきなり捕まるのは嫌なので一応聞いておいた。

「いえいえ。それでしたらウチは買い取れないですよ。

次に胡椒ですが、こちらは300グラム、20,000ギルで買い取ります。

入れ物の壺もしっかりしていますので、一つ3,000ギルで買い取らせていただきます」

貨幣価値がわからないので、最早頷くことしか出来ない。

「わかりました。それでお願いします」

「では、登録料を引いた89,000ギルになります。登録用紙と買取料を持って来ますので、今暫くお待ちください」

砂糖70,000と壺二つ、胡椒20,000と壺一つで99,000か。これで相場が円の10分の1とかだと辛いな……



そんな事を考えていると、先程の職員が戻ってきた。

「登録用紙にお名前と年齢、血判をお願いします」

「血判?親指を切る奴ですか?」

「いえいえ、こちらに親指を押さえていただくと、勝手に針が刺します。ですので、痛みはほとんどないですよ」

血判と聞いてビビったが、そんな道具があるのか……

「はい。結構です。 セイさんですね。

私は商人組合の職員でハーリーと言います。 これからもよろしくお願いします。

そして、こちらが89,000ギルになります」

良かった。文字もしっかり通じたな。

日本語のつもりで書いても、勝手にこの世界の文字になるのは見てて気持ち悪いけど……

渡されたのは小ぶりな金貨(?)1枚と大きめの銀貨3枚、その半分くらいのサイズの銀貨1枚と小ぶりな銀貨4枚だった。

「ええ。ではまた砂糖と胡椒を持って来ます」

「わかりました。胡椒に関しては料理屋に卸したり、個人向け商店でも小分けして売るでしょうから、いくらでも買い取ります。

私達も白砂糖の入手先であるセイさんのことは秘密にしますが、高価で希少品ですので、あまりばら撒かれますと貴族や豪商、最悪はマフィアなどに目をつけられるかもしれません。

そこはお気をつけください」

「わかりました。ありがとうございました」


平静を装って商人組合を出たが、やばい……


バレたら異世界貿易どころか異世界生活が終わってしまう?!

いやいや、もう少し砂糖を売らないと、貿易の前に地球での生活が破綻するぞ!

とりあえず地球での生活の為に、今度はこちらで仕入れをしよう!

何が売れるかわからないから、物価の差が大きそうな物を探すしかないな。

とりあえず貨幣価値を調べるぞ!

一先ず俺は、ここでの生活に必要なモノの値段を調べることにし、まずは食べ物を調べるために市場へと向かった。




「いらっしゃい!ん?なんだ、さっきの冷やかしの兄ちゃんか」

「先程は邪魔をして済みませんでした。おすすめの果物をください」

朝、商人組合のことを尋ねたおっさんの店にきた。

ここで買い物をすれば、悪い印象も無くなるし物価もわかるからな。

「お客なら大歓迎だ。うちの主力はリンゴだな。

一つ100ギルだ。どうだ?」

「二つ下さい」

俺はそう言うと、ドキドキしながら小ぶりな銀貨を一枚渡した。

「200ギルだから…800ギルのお釣りだ。

十分熟れているからいつでも食べれるぞ」

おっさんはリンゴと銅貨を8枚渡してきた。

「ありがとうございます」

受け取った俺はお礼を伝え、その場を後にした。



シャリッ

商人組合と市場の間にある広場のベンチに腰を下ろし、リンゴと呼ばれていたどうみても地球のリンゴを頬張った。

「中々うまいな。地球の物とそこまで変わらないかな。という事は、地球の物と同じで品種改良されているのか?」

異世界リンゴは元々美味いのか、それとも品種改良されているのか?という、どうでもいい事を考えながら、リンゴを食べ終わった俺は貨幣を並べた。

銅貨は一枚100ギルだな。

ということは、小銀貨1,000ギル、銀貨5,000ギル、大銀貨10,000ギル、小金貨50,000ギルということか?

まぁこっちも十進法ならだいたい合っているだろう。

それよりもだ。

月の神ルナってのがくれた翻訳の能力はどうなっているんだ?

同じリンゴがあるのはいい。

だが、固有名詞まで同じなわけないよな?それも翻訳の範囲なのか?

後は単位だな。

通貨の名称こそ円とギルで違うけど、キロが地球と全く同じと言うのはあり得んだろ…1グラムの定義が地球と同じなわけないよな。

馬鹿な俺にはかなりありがたい翻訳の能力ちからだな。

異世界貿易が成功したらお供物でもするか。


リンゴが同じくらいの価値なら1ギル≒1円くらいだろうか。

安直だが分かりやすいし、問題が出るまではこの認識でいこう。

日が高くなったことで店も開いている。

次は地球で売る物だな。




「いらっしゃいませ。こちらはかの名工が彫った木彫りになります。プレゼントにおすすめですよ」

俺は工芸品を取り扱っている店に来ていた。

服は無理だし、食べ物は出どころ不明だと売れるわけがないからな。

と、いうことで、ハンドメイド商品に目をつけてこの店にやってきたのだ。

「……もう少しリーズナブルな品はないですか?」


画像



こんなよくわからん木彫りに50,000ギルも出せるかっ!

「こちらは無名の方の作品ですが、丁寧な作りですよ」

俺には名工の作った物と無名の作った物の差はわからなかったが、値段が安かったのでいくつか買った。

「銀細工とかはありませんか?」

お金を払いながら店員に聞いた。

「三つ隣の店が扱っています。ありがとうございました」

無駄な買い物にならないといいが…売れるのか?

一先ず本命の銀細工屋に行くか。



「いらっしゃいませ。贈り物ですか?」

銀細工屋に入った俺に、おそらく10代の可愛らしい感じの店員が話しかけてきた。

あまり見た目についてどうこう思わない俺だが、やはり異世界は美形が多いな…見た目で浮いてないといいけど。

「ああ。そんな感じかな?数が欲しいからあまり高価な品は無理だけど…予算は50,000ギルで10個程見繕って欲しい。

無理かな?」

「大丈夫ですよ!では、こちらが大体5,000ギルのものになります。

この中からお選びください」

見せられても、俺に商品の良し悪しなどわかるわけもなく……

「任せてもいいかな?」

「はい!」

それから10分程をかけ、説明付きで選んでもらい、金を払って店を後にした。



その後、革製品の店でいくつか入れ物を買うが、地球と財布の規格が違っていて肩透かしだった。

他にも何かないかと街をブラつくが、目ぼしい商材は見つからなかった。

仕方なく宿を取ることにした俺は、宿と値段をリサーチしてから向かうことにした。




残金

89,000-200-8,000-49,500-12,000=19,300ギル

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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