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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

4 - 4話 宝石は贈るものじゃない。売るものだ!

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2024年01月15日

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「いらっしゃい。泊まりかい?」

愛想の良い笑顔で俺にそう聞いてきたのは、40代くらいのおばちゃんだ。

街の人に良い宿を聞いたところ、殆どの人がこの宿をあげた。

よく考えたらお前ら街人なんだから泊まったことないよな?と思ったが、他にあても無いのでここへ来た。

「ああ。とりあえず2泊頼む」

「2泊だね。一泊4,000ギルだから8,000ギル貰うよ。

朝食は遅れたら出せないからそのつもりでね。

夕食は泊まり客なら500ギルで出してるからその都度教えてちょうだいね。酒は別料金だよ」

俺は黙って8,000ギルを渡した。

酒と聞いてグラついたが、異世界貿易で地球での生活が安定するまでは我慢すると決めている。

涙をのんで部屋へと案内された。



「割と綺麗だな。むしろ地球のボロアパートより大分良い」

感心ばかりしていられない。

夕食を食べたら向こうに帰らないとな。

500ギルの夕食は美味かった…ビーフ(?)シチューにパンとサラダだった。

宿泊客は500ギルだが、それ以外は700ギルだった。

俺が街中でこの宿のことを聞いた人も食べにきていた。

久しぶりのまともな食事に眠くなったが、地球でもやる事があるので、我慢して帰還した。






帰還した俺は、先ずフリマアプリの登録をすることに。

「色々あるけど、俺でも知ってる一番有名なやつにするか」

登録を済ませたら出品だ。

値段で迷ったけど1円≒1ギルで考えて、買った金額の二割り増しで出品することにした。

地球→異世界で儲けているから、異世界→地球ではそこまで利益がなくてもいいと考えたのだ。

「地球で売れるなら同額でも構わないな。砂糖や胡椒、なんなら瓶や壺でも、向こうでは何倍にもなるし」

出品を済ませたら次は仕入れだ。

なんやかんや買ったから、残金は80,000円を切っている。

面倒だから全て使い切ってやる。

そうしたら後は、こちらで売ったお金が111,500円を上回れば全部利益だ!

俺は意気込んで、買い出しに出かけた。




砂糖や胡椒、ガラス瓶にはそれ程掛からなかったが……

蜂撃退スプレーやナタ、その他サバイバルグッズには結構使ってしまった。

向こうには置くところもないので、まだ持っていけないが…この部屋は倉庫かな?と、思うくらいには物で溢れかえっている。

アプリの管理で毎日一度は帰ってこなきゃいけないが、寝るのは綺麗な部屋がいいから向こうに行って寝よう。




「やっちまったな…朝飯を逃してしまった」

起きて一階の食堂に行くと、すでに誰も居なかった。

昨日のご飯が美味かったから期待していたのに……

過ぎたものは仕方ないと、気を取り直した俺は商人組合に向かうことにした。





「おはようございます」

挨拶は社会人の基本だ!まだ一応大学生だけど……

「セイさん。おはようございます。もしや例の?」

昨日の職員が話しかけてきたが、何故か隠語だ。

やばい取引をしているみたいで緊張してきたが、実際バレたら狙われそうだもんな……

「はい。また別室をお願いします」

「どうぞ、ついてきてください」

先日と同じ部屋が空いていたようで、そこに通された。


「こちらは昨日と同じ白砂糖になります。壺が切れていまして、ガラス瓶に入れています」

そう。昨日の買い出しで気づいたが、普通にガラスは存在していた。

ただここまで透明度が高いものは見ていないので、少し不安だ。

「立派な入れ物ですね。中身がこれ程はっきり見えるものは珍しいですね。

これは白砂糖を入れるものとして高く売れるかも知れません」

百均の瓶がベタ褒めされている。

俺が作ったものではないけど、少し偉そうに伝える。

「そうでしょう。全ての瓶が規格化されています。

こちらの胡椒が入っている小さな瓶も、大きさは全て均一です」

そう言いながら、俺はテーブルの上に砂糖250グラム4瓶と、胡椒の小瓶を沢山並べた。

「素晴らしいですね!胡椒もすでに売れてしまっていたので、助かりますよ!」

量りを終えた職員は、買取料を取りに向かうため退室した。

とりあえず今日は、昨日買い出しの最中にネットで調べた売れる物リストから仕入れをする。

それと、この辺りの事を詳しく教えてくれる人がいないか職員に聞いてみるか。


などと考えていたら、職員が戻ってきた。



「お待たせしました。買取料の120,000ギルになります」

たった一万円程の砂糖達(ほぼ胡椒)が十二万円近くの120,000ギルになった。

しかし、まだ喜ぶわけにはいかない。

地球で売り上げて、初めて利益になるんだ。

「ありがとうございます。それと質問なんですが、この辺りのことに詳しくて、説明してくれる人なんていませんか?」

「説明ですか…それなら冒険者組合ギルドに依頼されてはいかがですか?

低ランクの冒険者であれば組合ギルドの依頼料も3,000〜5,000ギル程度で半日雇えます。

その間であれば、街の中を案内してもらうことも出来ますよ」

ついに冒険者というワードが出たな……

スライムがいるくらいだから、それに近いものは有るとは思っていたが、まさかそのまんまだとは…やるな、翻訳……

「冒険者組合はどこにありますか?」

職員に冒険者組合の場所を聞いた俺は、お金をしまい、軽くなったカバンを背負って向かうことにした。





「こんにちは。依頼をしたいのですが、こちらで良かったですか?」

木造二階建ての冒険者組合に入り、入り口近くのカウンターへ行き挨拶をした。

「はい。どういった依頼でしょうか?」

同年代くらいの美人な受付の職員が対応してくれた。

「この街に詳しい人に、この街について話を聞く依頼なのですが、低ランクの方で大丈夫でしょうか?」

「そうですね。その依頼であれば低ランクが妥当ですね。

ご依頼料はいくらにしましょう?」

「組合の手数料込みで10,000ギルでお願いします」

美人な受付の女性が目を見開き驚いている。美人は何をしても美人だな。

「それはあまりにも高額では?依頼内容を聞く限りでは、半額も必要ないですよ?」

「実は他にも聞きたいことがありますし、出来れば頭の良い人がいいですね。

後、聞かれた事に対しての口止め料も含まれています。

あっ!やましいことはないですよ!

ただ、こんなことも知らないのかと馬鹿にされたくないので……

ダメでしょうか?」

言い訳くさくなったか?まあ、仕方ない。

「そういうことなら。わかりました。

依頼料が低ランクの方からすれば高額なので、すぐに見つかるかと思います」

俺はその言葉に、大銀貨10,000ギルをカウンターに置いた。

「こちらが依頼主の方に渡す木片です。

依頼が完了しましたら冒険者の持っている紙にサインをして木片を渡してください。

今日のお昼には見つかると思いますが、どうされますか?」

「では、昼に来ます。そのまま依頼をしてもらいます」

「わかりました。ご利用ありがとうございました」

受付嬢のお辞儀を背に、冒険者組合を出る。


次に向かうのはアクセサリー屋だ。宝飾品店なんて行ったことはない。

銀細工の店ですらドキドキしたのに、宝飾品店なんて場違い感が半端ないだろうな。

この街に宝石やアクセサリーを扱っている店は少なく、すぐに店を決めて向かった。




「いらっしゃいませ。どの様な品をお求めですか?」

またこちらも美人な20歳くらいの女性で、色んな意味でドキドキしながら買い物をした。





依頼の時間にはまだ余裕があるため、一旦宿へと戻ってきた俺は、ベッドに戦利品を並べていた。


画像



「まさか、サファイアがただの石として売られていたとは…」


昨日買い出しの時に、宝石について調べていたんだが、ルーペがあれば素人でも有る程度の真贋が出来るやり方が載っていたサイトを写真に撮ってスクショして保存していた。

宝石自体はフリマの売れ筋にアクセサリーがあったので、偶々たまたま調べていたに過ぎない。

「ルビーはちゃんと宝石として売っていたのに、少し成分量が違って色が違うだけのサファイアはただの綺麗な石だとはな」

見つけた時には危うく小躍りしそうになったが、なんとか堪えた。

ルーペというこの世界にあるのかないのかわからない道具を使って、商品をじっくり見られたあの美人さんはどう思ったのだろうか……

考えるのはやめよう。

手持ちで足りる限りのサファイアのアクセサリーを買ったから、残金は10,000ギル程だ。

一先ず地球での販売を優先しなくてはならない。

こちらでは胡椒で十分だしな。あまり儲かりそうにないが、いざとなれば塩もある。

砂糖は怖いから後は頼まれた時だけにしよう……

そんなことを考えていたら昼時になったので、行動することに。


早くサファイアを地球で売ってしまいたい気持ちを抑え、冒険者組合へ向かった。

どうせ夜までは帰れないしな。





残金10,000ギル

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