テラーノベル
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4話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
「よし! 綺麗になったな!」
そう言ってキヨは、 レトルトの手を引いて川から上がりました。
濡れた髪から落ちる雫が、 白い肌をつたい陽の光を受けてきらきらと輝きます。
その姿に、キヨは思わず見とれました。
(……綺麗だなぁ)
けれど、その一方で。
白い肌に浮かぶ黒い模様。
何も映さない、あの瞳。
その異様さが、 どうしても頭から離れません。
(……レトさん、一体どっから来たんだ?)
キヨは、そっと眉をひそめるのでした。
キヨはレトルトの体を丁寧に拭いてやりました。
濡れた髪を拭き、 腕を拭き、 背中を拭いても――
レトルトは何の反応もありません。
ただ、どこか遠くを見つめたまま、 されるがままになっていました。
「……よしっ!」
キヨは勢いよく立ち上がると、
レトルトの手をぐいっと掴みます。
「レトさん! 働かざる者、食うべからず!」
「今から俺の仕事、手伝えよ!」
そう言って、ずんずん歩き出しました。
「俺は麦を育ててんだ! 小麦にして町で売ったり、 パンにして売ることもあるんだぞ!」
「今日は麦の収穫を手伝ってもらうからな!」
キヨはくるりと振り返り、 にっと笑います。
「わかったか?」
元気いっぱいにそう言って、 また前を向いて歩き出すキヨ。
その後ろを、 レトルトは黙ったまま静かについていくのでした。
広い麦畑の中、 キヨはせっせと麦を刈っていました。
太陽のように明るい声で鼻歌を歌いながら、
次から次へと手際よく収穫していきます。
その隣で、 レトルトもゆっくりではあったが
キヨの真似をするように麦を刈っていました。
やがて少しずつ日が傾き始めたころ。
「よしっ! こんなもんかな!」
キヨはぐっと伸びをして立ち上がります。
けれど――
辺りを見渡しても、
そこにレトルトの姿がありません。
「……レトさん?」
呼んでも、返事がありません。
「レトさん!! どこ!? レトさん!!」
キヨは慌てて、大声で名前を呼びました。
そのとき、 後ろの麦がかさりと揺れます。
振り返ると、 そこにレトルトが立っていました。
夕日に照らされたその髪は、 金色の麦と同じ色に輝いています。
キヨは、ほっとしたように駆け寄りました。
「レトさんの髪、麦と同じ色だから 見失ったじゃん!」
そう言って、けらけらと笑います。
レトルトは何も言わず、 ただ静かに収穫した麦をキヨへ差し出しました。
「おー!」
キヨはぱっと顔を輝かせます。
「頑張ったな! ありがとう!」
「今日は働いたから、食ってよし!」
そう言って笑いながら、 キヨはレトルトの麦を受け取ったのでした。
家に帰ると、 キヨは慣れた手つきで夕食の支度を始めました。
「レトさん、外の井戸から水くんできて?」
そう言って、 コップをふたつ手渡します。
レトルトはそれを受け取ると、
何も言わず、静かに外へ出ていきました。
外へ出たレトルトは、 ふと足を止め空を見上げます。
そこには、満天の星空が広がっていました。
城から見ていた星空とは、 どこか違う。
もっと近くて、 もっと優しくて。
吸い込まれそうなほど綺麗な夜空。
その光景に、 レトルトの瞳から自然と涙が溢れました。
幸せだった日々を思い出します。
父と母と笑い合った時間。
あたたかなぬくもり。
いつもなら襲ってくるはずの、 激しい頭痛も、眩暈も 今日は起きませんでした。
『……父さん、母さん……』
小さくこぼれた声は、 夜空へと溶けていきます。
レトルトは、大好きな両親を想いながら、 ただ静かに星空を見上げていました。
なかなか戻ってこないレトルトを心配して、
キヨは家の外へと出ました。
そして――
井戸の前で、 星空を見上げているレトルトを見つけます。
「レトさん――」
そう声をかけようとして、 キヨはふと息を呑みました。
レトルトの頬を、 静かに涙が伝っていたのです。
キヨは何も言いませんでした。
ただ、そっと近づいて、 優しくその手を握ります。
「今日は、星が綺麗だな!」
明るい声で、そう言って笑うキヨ。
「夜ご飯、外で食べよーぜ! な?」
そう言って向けられた、 太陽みたいな笑顔。
レトルトは何も言わず、 ただじっとその笑顔を見つめていました。
いつもなら、暗く沈んでいたその瞳に。
今夜は――
満天の星空が、 きらきらと映っていました。
星空を映すレトルトの瞳を、 キヨはじっと見つめていました。
そっと頬に手を添えて、 優しく微笑みます。
「……レトさんは、目も綺麗なんだな」
その言葉に、
レトルトの体が一瞬、ぴくりと反応しました。
まるで、 胸の奥のどこかに届いたように。
「ご飯持ってくる!」
キヨはそう言うと、 ぱたぱたと家の中へ戻っていきました。
満天の星空の下、 ふたりは並んで夜ご飯を食べました。
「このパン、俺が作ったんだ!」
キヨは得意げに胸を張ります。
「うまいだろ? ほら、もっと食え!」
そう言って、 次から次へとレトルトの口へパンを押し込んでいきました。
レトルトは珍しく、 じたばたと身をよじります。
けれど結局、 お腹いっぱいになるまで食べさせられてしまったのでした。
夕食を終え片付けを済ませると、 ふたりはベッドへ入りました。
「狭いけど、文句言うなよ?」
そう言って、キヨはくすっと笑います。
その隣で レトルトは眠たそうに小さくあくびをしました。
「レトさん今日は色々頑張ったもんな」
キヨは 優しく声をかけます。
「おやすみ、レトさん」
そう言って、
蝋燭の火を吹き消しました。
部屋を包む、やわらかな暗闇。
すぐ隣に感じる、 あたたかな人のぬくもり。
それは どこか懐かしい体温でした。
レトルトはその夜、 久しぶりに ぐっすりと眠ったのでした。
続く
コメント
4件

『久しぶりの人の体温..』 この表現だけで分かる孤独さが胸に来ます...( ߹꒳߹ ) レトさんの笑顔が恋しくなる...*.゚ 今回も素敵なお話ありがとうございます( . .)" 明日も生きていける(。⊿°」∠)モッモッ

希望が!!希望が見え始めたぞ!!!!さっすがキヨ!この調子でレトさんに希望を宿すんだ!!