テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
5話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
「おーい! レトさーん! 起きろー!!」
元気いっぱいの声に、 レトルトはうっすらと目を開けました。
見慣れない天井が視界に飛び込み、 はっとしたように起き上がります。
きょろきょろと辺りを見渡し――
やがて、昨日の出来事を少しずつ思い出しました。
(城から逃げ出したんだった….)
久しぶりにぐっすり眠れたからなのか、 驚くほど体が軽く 心なしか 頭も少しだけすっきりしていました。
「レトさん、朝ごはん食べなー!」
キヨが笑顔で呼びかけます。
「今日はこれから町に麦を売りに行くぞ!」
レトルトは何も言わず、 テーブルに並んだ朝ごはんへと視線を落とし 黙々と食べ始めたのでした。
朝食を終えると、 キヨとレトルトは小麦を背負って町へと向かいました。
道中、キヨはずっと楽しそうでした。
歌を歌ったり、 くだらない冗談を言ったり、 レトルトの周りをぐるぐると回っては、 ひとりでけらけら笑っています。
「俺、石蹴りうまいんだぜ?見とけよ?」
そう言って小石をひとつ拾うと、 足の甲や膝を使って器用にぽん、ぽん、と蹴り上げていきます。
一度も地面に落とすことなく、 見事に蹴り続けてみせました。
得意げに笑うキヨ。
けれどレトルトは、 やっぱり何も言わず、ただ黙って見ているだけでした。
それでもキヨは、 そんなことなど少しも気にせず、 楽しそうに笑っていました。
そんなことをしているうちに、 ふたりは町へと到着しました。
そこは、とても賑やかな場所でした。
人々の笑い声が響き、 焼きたてのパンの香りがどこからかふわりと香ってきます。
キヨが小麦の袋を並べ始めると、 すぐに人が集まってきました。
「おはよう、キヨ!二袋買うわ」
「キヨ、一袋もらえる?」
「キヨ〜! 三袋お願い!」
次々と声が飛び交い、 小麦はあっという間に売れていきました。
「あら?」
ひとりの女の人が、 レトルトに気づいて首をかしげます。
「キヨ、今日はひとりじゃないのね?」
するとキヨは、 ぱっと嬉しそうに笑いました。
「うん! 俺の友達! 畑、手伝ってくれてんの!」 。
「あら、そうなのね!」
女の人はくすくす笑って、 レトルトに顔を寄せました。
「キヨにこき使われてない? 嫌なときは、嫌って言うのよ?」
するとキヨが すぐさま大声を上げます。
「こき使ってねーよ!」
その場に2人の 笑い声が広がりました。
「これ、ふたりで食べな!」
そう言って女の人は、 自分の畑で採れたばかりの新鮮な野菜を たくさん手渡してくれました。
「ありがとう!」
キヨは満面の笑みで手を振り、 嬉しそうにその背中を見送りました。
そして、くるりと振り返ると。
「レトさん! 今日は野菜スープ作ろうな!」
嬉しそうにそう言って、 キヨは野菜を高く掲げて見せます。
小麦をすべて売り終えると、 ふたりは家へ戻り、 今度はまた畑へ麦の収穫に向かいました。
町へ行って、 働いて、 また畑へ行って….。
気づけば空は茜色に染まり始めていました。
キヨもレトルトも へとへとになり ふらふらとした足取りで家へ戻り、 夜ご飯の準備を始めました。
「レトさん、野菜切ってくれる?」
そう言ってキヨは、 何気なくナイフを手渡しました。
――その瞬間。
レトルトの体が、 びくりと大きく震えました。
目に見えてわかるほど、 全身が震え始めます。
『……ころ……』
かすれた声が、 震える唇から零れました。
『……殺さないで……』
『お願い……お願い……』
レトルトは、 頭を抱えるようにその場へうずくまります。
「レトさん!?」
突然のことに、 キヨは慌てて駆け寄りました。
「どうしたんだよ!?」
けれど、 レトルトの耳には届いていません。
『ごめんなさい……』
『ごめんなさい……』
『殺さないで……ください……』
怯えきった声で、 何度も何度も繰り返します。
その瞳には、 今ここではない何かが映っていました。
――過去の出来事が、
鮮明に蘇っていたのです。
「レトさん、どうしたんだよ!?」
キヨは必死に声をかけます。
「大丈夫だよ! 誰も殺さないって!」
けれど――
その声は、レトルトには届いていませんでした。
『ごめんなさい……』
『役立たずで、ごめんなさい……』
『もっと頑張るから……』
『ちゃんとするから……』
『お願い……殺さないで……』
小さく体を丸め、 怯えきって震える姿に、
キヨは言葉を失いました。
(……一体、レトさんに何があったんだよ)
怯えきったその姿にキヨの胸がぎゅっと痛くなりました。
そして、 キヨは咄嗟に レトルトを強く抱きしめていました。
暴れる体を、 逃がさないように。
壊れてしまわないように。
「大丈夫だよ、レトさん」
「大丈夫だから。な?」
優しく、何度も何度も。
背中を撫でながら、 そう囁き続けます。
すると少しずつ 震えていた体が、 落ち着きを取り戻していきました。
レトルトが、 ゆっくりと顔を上げます。
涙で滲む視界の先にいたのは―― キヨ。
『……キヨ……くん……』
かすれた小さな声。
レトルトが初めて キヨの前でちゃんと声を出しました。
キヨは、一瞬目を丸くして――
それから、 にっこりと笑いました。
「レトさん、そんな声だったんだな」
頭をぽんぽんと撫でながら、
「ちょっと鼻声だな」
そう言って、 けらけらと笑います。
その笑顔を見た瞬間、 レトルトの目から 堰を切ったように涙が溢れました。
声を上げて、 子どものように泣きじゃくります。
キヨはそんなレトルトを見て、 また笑いました。
「……でっけぇ声だなぁ」
優しく、
優しく。
頭を撫で続けながら一一。
続く
コメント
5件

うぅぅぅぅぅぅぅう( ߹꒳߹ ) レトさん...辛いだろうに... (自分でそうさせたのに何言ってんだ⤴︎) でもでも、キヨがレトさんを優しく微笑み頭をなでなでしてる所、レトさんが泣きじゃくっている所、すごく感動しました⟡.·*. 私、こういう展開が好きなんですよね。 好きな人が苦しんでいる所を助ける物語...ෆ.*・゚ なのでほんとに読んでる間、表情筋が動きまくってたと思う𐤔𐤔

レトさんが、キヨの名前呼んだ…ヤバいもう泣きそうなんですけど……魑魅魍魎さんは私の涙腺を破壊するのが得意みたいですね(?)
2,635