テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
※半ナマ注意!!!!!!直近二作で負った心の傷が癒えないので好き勝手やってます。※
突然、話があると飲みに誘われ、仕事もたまたま早く終わり、特に断る理由もなかったのでオッケーをし、飲みに来ている。
気を遣ってくれたのか、はたまた意外にもこういう場所が好きなのか、賑やかな居酒屋で、店の名前を聞いた時は少々驚いた。
この人もやっぱり人間なんだよな〜とか、ビールよりもシャレたグラスのお酒のが似合うんだろうな〜とか…他にも色々考えていたが…そんな事を考えながら話を聞き、大袈裟なリアンクションを取ったり、うんうんと相槌を打つ。
そうすると、たまに柔らかい笑顔が一瞬浮かぶ。
仕事ではいつも眉間にシワを寄せて、笑顔どころか、シワを寄せていない顔すら滅多に見られないものだからそれが面白くて、もっと笑ってくれないだろうかと、笑いのツボを探ってしまう。
話の半分は上の人間への愚痴、もう半分はこちらへの話題だった。
と言っても、真剣なものではなく、仕事は楽しいか、メンバーとはうまくやれているか、そんなものばかり。
こういう話をする相手が自分だけではないと思いつつも、なんだかすごく気が許されているようで、嬉しかった。
「最近、楽しかったことはあるか。」
「そっすね、最近というとー…今が一番楽しいですかね。」
「なにを言ってるんだ、お前というやつは。」
また、またふわりと笑った。
呆れたように笑うその顔に思わず見入ってしまった。
「俺の顔になにかついてるか?」
急に黙り込んで顔を見つめてしまっていたせいで、せっかく表情が緩んでいたのに、また眉間にシワを寄せてこちらを見つめ返してくる。
「あっいえ…そのぉ、し、新鮮だな〜!と…。」
「新鮮?なにがだ?」
「いえほんとになんでも…。」
あんなに楽しく話していたのが夢だと思えるほど、二人の間に沈黙が走り、重くのしかかる。
「私だって酒は飲む。こういう場所にだって来ないわけじゃない。」
「ですよね〜!室井さんだって一件寄りたくなることありますよね〜!」
その後もなんとか話題を振り続けてくれ、帰る頃には自分の体に程よくアルコールが回り、気分が良かった。
けど、誘ってきた本人、室井は完全に酔っ払ってしまっている。
「あんたそんなに飲んでないでしょうよぉ、あれすか、アルコール弱いとかすか?」
「いや、むしろ強い方ではある…と思う…。」
「居酒屋の空気でー、て感じすか。まあ、あるあるじゃないすかねぇ。」
ふらつく室井を支えながら、適当にタクシーを拾って無理矢理押し込んだ。
「住所、言えます?」
「なんだったかな…。」
#二次創作
みのあ🍀
570
こころ
526
狸宮はじめ
21
「こりゃだめそ。」
自分もタクシーに乗り込み、なんとか住所を聞き出して、ようやくその場所へと着く。
そのまま降ろして帰ってもよかったが、あんな調子の室井さんを放っておくわけにもいかず、部屋まで身体を支えて送っていった。
「部屋番号ここであってます?」
「…あってる。」
「鍵。ほら、開けらんないでしょ?」
鞄の中をガサゴソと漁り、見つけたようで鍵穴に挿そうとするが全く挿さる気配がなく、鍵を少し強引に奪い取ると素早く開ける。
「これは、酔わせちゃいかんな。」
玄関まで入り、座らせたあと、手に持っていたコートと鍵を返して帰ろうとすると腕を掴まれる。
突然掴まれたものだから、体勢を崩し、二人の距離が近くなる。
「す、すみません…ちょっとバランスを…。」
「ああ、いや。こちらも突然掴んでしまって、すまない…。」
「立てます?こんなとこで寝ないでくださいよ?」
近くで顔を見て改めて思う。
室井さんは目が大きい。まつ毛も長いし、普通にしてれば結構かわいい顔してんのに、もったいない。
でもやっぱり、この気難しそうな顔が、一番好きだな。
ここまできて初めて自分のこの感情がなんなのか気付いた。
この人のことが好きなんだ。この人に惚れている。
飲みに誘われた時、本当はものすごく嬉しく、トイレで一人、ガッツポーズをした。
居酒屋では、自分で笑ってくれるこの人を見て、独り占めできないものかと、薄っすらと考えていた。
自分のものにしてしまいたい。
いつからこんなふうに思うようになったのか、もう覚えていない。
「あおし───…。」
三秒ほど、触れるだけのキスをする。
顔を離すと目は見開かれ、大きな黒い瞳がジッとこちらを見つめて、視線が突き刺さって痛い。
自分のしたことにハッとなって、血の気が引いていくのがよくわかる。
冷や汗が止まらない。なんてことをしてしまったんだ…。
「風邪引くんで、ちゃんと布団で寝てくださいよ!!」
それだけ言ってその場から逃げるように玄関を飛び出した。
すっかり頭は覚めてしまい、家までの帰り道をトボトボ歩いて帰る。
「連絡入れたほうがいいのかなぁ、奢ってもらっちゃったからなぁ。いやでもなぁ。」
家についてから一応ケータイにメッセージを入れ、その日は眠りについた。
ーーーーー
翌朝、昨日の感覚が唇に残っていて、それが夢ではないということを鮮明にする。
デスクに突っ伏していると、すみれが後ろから顔を覗かせる。
「なに、寝不足?昨日私より早く帰ったじゃない。」
「恋ってのは難しい!難しいよォ…!」
「なによ突然。」
「すみれさんはさ、好きじゃない人にキスされたらどーする?」
「…したの…?」
しばしの沈黙のあと、覗き込む姿勢だったすみれがのけぞるように離れた。
「仮定…!仮定の話ね。すみれさん、そんな犯罪者を見るような目で見ないで。」
「そうね、うん。青島くんがそんなコトするわけないもんね。」
「で、どう?」
「私なら、とっ捕まえる。」
ニコッと笑ってみせたあとすぐデスクへ戻ってしまった。
すみれに聞いたことを少しだけ後悔する。
なんせ、ストーカー被害を経験しているものだから、申し訳ない気持ちにもなった。
なんとなくやる気が出ずにいると、突然真下に声をかけられ、気だるげに返事をする。
「室井さんからです。先輩に代わってくれって。」
「いないって、言っといて。」
「イヤですよ。もう代わるって言っちゃってます。」
大人しく受話器を受け取り何を言われるのかとヒヤヒヤしながら、 電話の向こうにいる相手へ代わったことを伝える。
「はい、青島…。」
『青島か。今日、夜時間あるか。』
「さあ、どうすかねぇ。俺が決められることじゃないですし。」
『…そうか。時間があれば連絡をくれ。』
思わずそれだけですか、と聞き返す。
すると電話の向こうで首を傾げるのを感じ、咳払いをして続ける。
「いやあのねぇ?それだけならわざわざ湾岸署に掛けてこないで、俺のケータイに掛けてきたらいいでしょう。」
『わかった。次からはそうしよう。』
声色一つ変えずに言うと、電話は切られてしまった。
昨日のコトだろうかと思ったが、口ぶりからしてなんとなく違うような気がした。
「先輩、またなにかやらかしたんですか?」
「ご指名なんじゃないのー?青島くん気に入られてるもんねー。」
「二人とも不正解。」
教えてほしそうな様子の二人を無視して、ひとまずは大丈夫か、と安堵のため息をついた。
ーーーーー
定時を少し過ぎたところで、特に通報も入らず、提出しなければいけない書類も片付いたので今日はもう退勤することにする。
「じゃ、すみれさんと真下くんも、お先に〜。」
「あれもう帰っちゃうの?」
「ちょっと、室井さんがね。」
「やっぱりなんかあったんじゃないですか!」
「まあまあ大したことじゃないし。…多分?」
小走りで署の玄関を出ると、見慣れた黒のロングコートが目に入る。
「室井さん!わざわざ湾岸署まで来なくたって。」
「近くに寄ったついでだ。」
そう言うと、こちらまで歩いてきて手を掴まれたかと思えば、手の中に何かを置かれた。
「これ…!!」
「大事なものだろう?何かの拍子に取れたようで、私の鞄に入っていた。」
「気づかなかった…わざわざありがとうござます!」
渡されたものは交番勤務時代に貰った大切なお守り。
こんなに大切なものだというのに、自分でも取れてしまったことに何一つ気づいていなかった。
昨日も今日も、それどころではなかったからというのもあるが。
「昨日はお前に手間をかけさせたようだな。お詫びと言ってもなんだが、タクシー代くらいは出せる。」
「そ、その事なんですけど…昨日のコト、覚えてますか?」
「すまないが、かなり酔っていてな…。」
それを聞いて姿が目に入った瞬間からあった緊張が一気に解れ、体の力が抜けへなっとした笑顔を向ける。
「タクシーはいいんで、少し、一緒に歩いてくれませんか?」
「…なぜ?」
眉間にシワを寄せて不思議そうに首を傾げる室井の横を通り過ぎて、帰り道の方に歩き出すと、渋々あとを追って自分の隣に追いつく。
静かな帰り道、男二人の革靴の音だけが響く。
しばらく歩いて、こちらがスピードを落とし二人の間に距離ができると、室井はこちらに振り向いて立ち止まる。
「本当に何も覚えてませんか。」
「…君になにかしたか?すまないが───…。」
「俺は…!俺はあんたが好きだ!」
なにを思ったのか、自分で言っておいてあまりのおかしさに、内心苦笑いをした。
これを言ってしまえばきっと自分からこの人が離れる。
もしかしたら理性の働いているうちに、傷つけてしまう前に、この人を自分から遠ざけてしまおう、とでも思ったのかもしれない。
「昨日は、その…キスしました。」
両手をポケットに突っ込み、目は合わせず俯く自分とは対照に、ジッとこちらを見つめて一切動かず無言の相手にだんだんと怖くなり、口をひらこうとした時だった。
「嘘をついた。」
「は?いや、え?ちょっと待ってください!」
声をかける自分を無視して前を歩いていく男に小走りで追いついて、どういうことかと問い詰めてみれば、襟を掴まれ思いっきり引かれる。
「キスされて酔いが覚めないわけないだろ。」
「知ってて…俺を…?」
「俺のことを抱くつもりか?」
「展開が早すぎるでしょう!いくらなんでも!!抱かれたいんですか!?」
襟を掴む手を振り払おうとするがなかなか振り払えずもたもたしていると、またとんでもない発言が飛び出す。
「お前になら抱かれてみてもいいかもな。」
その一言で一気に顔が熱くなるのを感じ、慌ててフードを目元まで深くかぶる。
「からかってるんだ、絶対。…俺…本気なのに…。」
「顔見せてみろ。」
何も答えずそっぽを向くが、そんなものは効果がなく、大きな黒い瞳が真っ赤になった顔を覗き込んでくる。
目だけでそちらを見やると、顔が近づいてきて唇どうし触れるのがわかった。
こうなったらとことんやってやるしかないのかもしれない。
キスしたことを後悔させてやる。
離れていく相手の頭の後ろに手をやり、もう片方の腕は腰に回して身体を寄せる。
「青島?」
「あんたの…室井さんのせいです。」
触れるだけのキスを二回ほどし、次に少しいじわるをしてやろうと舌を無理矢理ねじ込んで深いキスへと移していく。
案の定、突き飛ばされるようにして身体が離される。
口を腕で拭って、どんな顔をしているか視線を移すと、予想外の反応で驚いた。
暗がりでもわかるほど顔を真っ赤に染め、大きな目はゆらゆらと瞳を揺らして突き刺すようにこちらを見ている。
もっとこう、明らかに嫌な顔をされると思っていた。
だから見たこともない反応に堪らなくなった。
「あ、えっと、その、あの…付き合ってください…?」
肩を思いっきり掴んで言葉を振り絞る。
数秒時が止まったかのように静寂が走ったあと、室井が小さく笑う。
「なぜ疑問形なんだ。」
「返事は…?」
「考えさせてくれ。と言おうと思ったが、君は待てが苦手だったな。好きにしろ。」
肯定も否定もしない返事だけを言い、他には何も言わず歩き出してしまった。
「俺、室井さんのそういうところも好きです。」
「変わり者だな。」
「知ってるクセに。このまま飲み行きます?」
「明日は朝が早い。…から空いてるときにまた
連絡をする。」
「楽しみにしてます。」
それからというもの、一方的にあれはオッケーだと解釈したまに手なんかを繋いでみても、まんざらでもなさそうなため、いいのだと思う。
あの日からはや一ヶ月。久しぶりに室井さんから着信が入った。
今日ほど夜が待ち遠しい日は初めてだ。
コメント
1件
わあ、第7話、めっちゃ良かった…!青島が室井さんにキスしちゃった後の慌てっぷりと、翌日の電話のやりとり、そして帰り道の告白シーンまで、感情の動きがめちゃくちゃリアルに伝わってきた。「好きにしろ」って言われて「俺、室井さんのそういうところも好きです」って返す青島、強気でかっこよかったな〜。展開が早いけど納得できる関係性の熱量だった🔥 続きすごく気になる!