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🍎🥧アップルパイ
53
#ブルーロック
🍎🥧アップルパイ
59
#もしかしたらグロいかも
海月
38
翌朝――
俺は着替えて普通に食堂で飯を食っていた。
何人座るんだと言いたくなる長いテーブルには朝食が並び、メイドたちが後ろに控えている。
「白パンに目玉焼きに、サラダにコーンスープか。多分これがめちゃくちゃ裕福な暮らしの朝食なんだろうな」
俺がパンをかじっていると、メイドたちが驚いた表情でこちらを見ていた。
「なんかおかしい?」
「いえ、滅相もございません! ラウル様は自室で食事をとられることが多かったので。その……飯が出来たらドアの前に置いとけ、入ってくんじゃねぇよブスども! と毎朝おっしゃられていましたので……」
「…………」
かなりこじらせた引きこもりだったみたいだな。
多分この様子じゃ学校も行ってないんだろう。
「本当にラウル様が別人になられたようです」
メイドのつぶやきに、パンが喉に詰まりそうになった。
急にキャラ変すると何か疑われるか? もうちょっと悪役として痛い事したほうがいいだろうか。
そんなことを考えていると、ステラが食堂へとやって来た。
そのたわわな胸を支えるには、あまりにも頼りないのでは? と思う薄手のワンピースに、透けたカーディガンを羽織っている。
「やぁママ上、先に飯食ってるよ」
「ら、ラウルちゃん、今なんて?」
「やぁママ上」
「はうっ!」
ステラはまた後ろ向きにバーンと倒れた。
「お、奥様! し、失神されている!」
ママ上は再びメイド達に連れられて自室へと返された。
「こりゃママは禁句だな……」
その後、俺も自室に帰ってベッドの上でゴロゴロと転がる。
「あー悪役とはいえ、金持ちで美人のママがいて、執事やメイドに囲まれる生活。悪くない、悪くないぞ~!」
学校に行かなくても、勉強しなくても誰にも怒られない。
引きこもり放題、ビバ異世界。ビバ王族。ファンタジー世界最高だな。
◇
と、思っていたが、それも三日ほどの話。
「あー……引きこもるの飽きたな……」
大体マンガもゲームもネットもない世界で引きこもるのなんて、3日が限度である。
なんもやることない。友達もいないし、喋れもしないし、外出ようとしたら爺やに止められるし。
これがなまじ貧乏とか、冒険者スタートとかだったら生きるために働かなきゃってなるけど、金持ちスタートだと金欠によるゲームオーバーが存在しないから、どんどん怠惰になっていく。
「俺の目的ってなんなんだろうな……」
自室のテーブルに置かれているフルーツの籠から、ぶどうを取り出してパクつく。
ゲームだと主人公の【グローリー】が、封印された聖剣を解放するために世界各地を旅し、時にはドラゴンと戦い、時には魔法学園に通い、時にヒロインとイちゃついたりとバラエティに富んだ冒険をしていた。ラウルはそんな冒険の中で、ヒロインを苦しめたり寝取ったりするキャラなのだが……。
「具体的に悪役って何をすればいいんだろう」
そもそも悪いのはラウルの父親であるメッサー王であって、第三王子の俺は別に何も悪いことしてないし。
悪役、悪役……あれ? 悪役って最後大体死ぬよな?
しまった、ラウル生存ルートを検索しようとして忘れていた。俺は起き上がって「ブック」と呪文を唱えると、攻略本が具現化する。
「ラウル・生存」
検索ワードをかけると、分厚い本のページが自動でめくられていく。
5分くらい時間がかかった後、本はあるページで見開かられる。
「主人公グローリー撃破によるバッドエンド……。これ以外は?」
本のページ送りが始まらない。つまりこれ以外に俺が生存するルートがないのだ。
「ちょっと待って、こんだけいろんなルートがあって俺が生き残る方法ってこれだけなのか?」
ゲームで、俺は幾度となく悪のリガルド帝国を滅ぼし、この大陸に平和をもたらした。
つまりグランツ王家の破滅がスタンダードなエンディングルートである。
それで世界は平和になるのかもしれないが、俺は正義の名のもとに成敗されてしまう。
「このままじゃ絶対グローリーに殺されるよね?」
やばいやばい、引きこもり生活を謳歌している場合ではない。
俺は鏡台に映し出されたデブを見て顔をしかめる。
執事もママンも優しいし、そりゃ自堕落繰り返してたら、こんな体にもなるわ。ゲーム内でのラウルのあだ名は、無能豚王子。今の俺がまさしくそれだと思う。
このままだと俺の命は恐らく後数年で終わる。なんとかグローリーを倒して、未来を変える以外に俺が生き残る術はない。
「爺やー! ちょっと稽古つけてほしいんだけど!!」
◇
それから1ヶ月後――
今現在、屋敷の庭にて俺と爺やは向かい合って木刀を構えていた。
爺やはいつもの燕尾服のままで、俺はヘルメットに革鎧を身に着けている。
「でいやぁっ!」
素早く動いた爺やの木刀が俺の頭をパーンと叩き、防護用のヘルメットをふっとばす。俺は耳に残る衝撃を受けきれず仰向けに倒れた。
「大丈夫ですございますかラウル様!?」
「いや、大丈夫」
慌てて駆け寄ってくる爺やを手で制し、起き上がってヘルメットを被り直す。そしてもう一度木刀を握りしめ爺やに向き直る。
この老紳士、実は元リガルド騎士団で五人隊長を経験したことがある退役騎士だった。
五人隊長ってあんまり聞かないが、一応小隊長的なことをしていたらしく剣術指南をしてもらっている。今まで甘やかされて生きてきたラウルは体力がなく、5分打ち合っただけでゼェゼェと息が切れる。
「あまりご無理をなさらないほうが」
「いや、いい。時間がないんだ、ちょっとでもステータスを上げたい。聞きたいんだけど、爺やって騎士団で強かったの?」
「いえ、わたくしは補給部隊にいた身ですので、お世辞にも強いとは言えませぬ」
そんな相手に俺は手も足も出ないんだな。
「よし、じゃあ仕切り直してもう一回だ」
「しかし、これ以上主人を打ち付けるのは心苦し――」
「チープオーダー、遠慮なく俺に稽古をつけろ」
「はいぃ! 行きますぞラウル様!!」
爺やは人が変わったように木刀を振るう。
これは俺の唯一のスキルである簡易催眠の効果で、チープオーダーと唱えた後に命令を出すと催眠にかかってくれる。
ただし簡易催眠というだけあって、効果は薄く、本人が嫌がってる行為を命令することは出来ない。
ゲーム中ラウルはこの能力を使って、ヒロインのパンツを覗きまくっていたのだが、まだ催眠レベルが足りていないらしい。
催眠にかかった爺に、1時間ほどビシバシと木刀で打ちのめされた。
「はぁはぁはぁはぁ……しぬ」
俺は、その場で大の字になって転がっていた。
革鎧を脱ぐとシャツは汗でぐっしょりになり、肺は酸素を求めて激しく上下する。
きつい、苦しい、体重は5キロ落としたがまだ全然重い(現在87キロ)。まるで石を全身にくっつけて稽古しているみたいだ。
爺やめ、遠慮なくやれとは言ったが本当に遠慮なくやったな。
チープオーダーって潜在的に拒否してることはできないから、本当は俺をバチボコにしてやりたかったんじゃないか?
倒れる俺を爺やは心配そうに見下ろす。
「ラウル様、無礼を承知で申し上げますが、なぜこのようにご自身を鍛えようとされるのです?」
「そんなに俺が訓練するのが不思議?」
「はい、ラウル様は練習するのは才能がないやつ。努力とかダッセェよな。が口癖でしたので……」
俺嫌な奴~。
さすがに転生して、己がどういう結末を辿るか知ってるからとは言えないので適当なことを言っておこう。
「周りから豚王子とか言われるの癪だし、いざってときに戦える男になりたいんだ。多分これから俺は強い敵と戦うことになると思うから」
「ラウル様、なんという立派な心がけ! それでこそリガルド帝国の王子! 爺は感激しております!」
わりと普通なことを言っているのだが、今までのラウルが相当酷かったらしく、爺やは目に涙を浮かべている。
タオルを持って待機しているメイドも「弱いものイジメ大好きだったラウル様が、ご立派になられて……」と涙をこぼしている。
今までどんな態度をとって生きてきたのか、逆に気になってきた。
コメント
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おお、第3話読んだよ!引きこもりに飽きて「俺、このままじゃ♡♡♡れる」って気づく流れ、めっちゃわかるわ。チープオーダーで爺やにボコボコにされながらも鍛え始めるラウル、成長フラグが立ってて熱い🔥 ママ上に「ママ上」って呼んで失神させるところ、笑ったわ。デブから脱却しようとする姿に応援したくなる!