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ruruha
785
#マフィア
らむらむ
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13
あおい
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その頃、塁は桜子が住むマンションへ車を走らせていた。
前に騙される形で桜子の家を知る事になったが、今となってはありがたい話だと桜子の強引さに感謝していた。
頑固で気が強い桜子が自分の店の客の情報を知っていたとしても、簡単に教えてくれるとは考えにくいが、何もしないよりかはいくらかマシだとアクセルを踏む足に思わず力が入った…
“あくまでこれは銭のため”
無意識にそう自分に言い聞かせて。
ミナミの街から15分ほど車を走らせた市街地にあるマンション。
そのマンション下に車を停め、煙草を吹かしながらぼんやりと残っている記憶の中から桜子の部屋番号を掘り起こしていた。
もう一年も前の事だ…
毎日、色んな客の所へ取り立てにいく塁、桜子の部屋番号が何番だったかなど記憶から抜けてしまっていてもおかしくない。
「ふぅーっ…確か…。」
ひとしきり煙草を吹かし車から降りた塁は、記憶の中の番号を頼りにオートロックパネルのボタンを押した…
ピーンポーン…
………
………
………
「…はい。 」
インターホン越しに聞こえてきた桜子であろう声の主。
塁の記憶の中に桜子の部屋番号はきちんと残されていた…
少し間を置き、一つ息を整え口を開く…
「……米原。」
「……え、塁…?」
桜子に間違いない。
「夜遅うに突然すまんな。
米原に聞きたいことがあるんや。」
「……き、聞きたいこと…?
わ、分かった、今開ける。」
「…………。」
塁の予想とは裏腹に桜子はすんなりオートロックを開けた。
少し拍子抜けしつつ中へ入り、桜子の部屋へ向かった。
一方の桜子はいきなりの塁の訪問に家の中で軽くパニックになっていた。
それまで着ていたヨレヨレの服を脱ぎ捨て、少し小洒落た部屋着用ワンピースに着替えていた…
「もう嘘やろ…!なんでこんな普段着のグダグダな姿の時に…。髪の毛だけでも整えないと!」
いきなり事に焦りつつ、塁が自分の家へ来る理由なんてお金の問題以外ないであろう事は桜子にも容易に想像出来た。
「お前に会いたくて来た。」
塁がそんな事を言ってくれるはずが無い。そんな事分かっている…。でも例えお金の事が理由だとしても、その姿が見れる、それだけで桜子にとっては幸せな事だった。
“ピーンポーン”
「来た…!」
塁の姿を見たい気持ちと何を聞かれるのか分からない不安な気持ちがせめぎ合う中、桜子は急いで玄関へ向かった。
「ふぅー…。」
一つ深呼吸をして少し気持ちを整え桜子はドアを開けた。
―ガチャ。
….
「………ぁ、塁。」
「…しばらくやの、米原。」
店に出ている時のような派手なドレスや化粧を施していない、普段着で飾り気のない桜子の姿。
その姿に塁はどこか懐かしい安心感を覚えていた。
「……久しぶりやね…。でもあんまりいきなりやからびっくりした。事前に電話くらいちょうだいよ。」
「…あぁ、すまん……。どうしても米原に聞きたいことがあるんや。」
“聞きたいこと”
その言葉に桜子は少し身構えた。
「……聞きたい事って、何?」
そして、塁の目に僅かに鋭さが宿る…
「お前のクラブに高瀬伸也っちゅう客おるやろ。お前の事、贔屓にしてる客や。」
………!
この時、桜子は動揺していた。塁の口からその人物の名前だけは聞きたくなかったのだ。
何としても知られたくない理由があった…
でもここで彼の事を知らないと嘘をついた所ですぐにバレてしまう。
桜子はその動揺を必死に隠しながら口を開いた。
「うん、私のクラブのお客さんでえらい贔屓にしてもらってるけど… そのお客さんがどうかしたん?」
塁は桜子の目を真っ直ぐに見つめ探るように話を続けた
「わしに借りた銭返さんと飛びよったんや。……お前、あいつが逃げそうな場所…何か知っとるか…?」
「え…高瀬さんそんな借金して…。確かによく遊びには来てもらってるけど、プライベートな事は私…よく知らんねん。ごめん…。」
………
………
………
二人の間に何故か気まずい沈黙が流れた…
この時、塁は桜子が何か隠している事を既に見抜いていた。
“この瞳の揺れ方…嘘ついとる時の人間の目…。平静を装おうとして逆に普段と違う口調や空気感になる…”
これまで数え切れない人間にお金を貸して来たからこそ身についた塁の人の腹の底を探り当てる能力だった。
「ほーう…”何も知らん”か…。」
「うん……わざわざ来てもらってごめんやけど…。力になれることは…無いかな…。」
「そうかぁ、米原。」
ガタッ…
「え…。 」
桜子の嘘を察した塁は玄関のドアに足を引っ掛け閉まらないよう固定した。
ドアを閉まらないよう固定された桜子はドアノブを握っていた手に思わず力が入る。
「ちょっと…!どういうつもり…!?」
「米原ぁ、夜の女なんやったらもっと上手いこと嘘つくんやな。」
塁の口端が僅かに上がり
桜子の嘘をどう暴いてやろうか…まるでそのゲームを楽しむかのような生々しい光がギラリと宿った…
「はぁ?!嘘なんかついてない! いきなり人の家来といてなに!?」
「はっ…、嘘ついとる人間はみんな焦り散らしてそう言うんや。」
そう桜子の嘘を見透かしたように返した塁は怒る桜子を横目に玄関に置いてある靴にチラリと目をやる。
そこに男物らしき靴はない。 だが塁の桜子への疑いはまだ晴れない。
「……お前また嘘つくんか。」
「は?だから嘘なんか…!」
「まぁええわ、邪魔するで。」
そう言って塁は勢いよくドアを開け、強引に部屋の中へ入っていく。
「きゃ!ち、ちょっと!!塁!どういうつもり!?出てってよ!」
制止する桜子を振り切り、乱雑に靴を脱ぎ捨て、勢いよくリビングへ歩いていく
そしてリビングの扉を開けた…
ガチャっ!
部屋の中を一瞥する塁…
そこに高瀬の姿は無い。
………………。
「人の家に勝手に上がり込むとかほんまに信じられへん!!!塁そんな人やと思わんかった!最低!」
「ふっ…、今更何を言うとるんや。ずっと言うとるやろ、わしは銭のためやったらどんな事でもするて。それに…わしを騙してこの家に誘い込んだ事……忘れたとは言わさんで。」
「な…そ、それとこれとは別やん!だからってこんなこと…!」
「何が別や…人の事散々騙しよってから…。」
そう言って、塁は桜子の制止を振り払いながら家の中をしらみつぶしに探していく。
そして最後に寝室のクローゼットを開けた。
ガタッ…!
「ちょっとやめてよ…!」
「…………。」
そこにはハンガーにかけられた桜子のものであろう洋服がずらりと収納されている、 その中に男性物のスーツが不自然に一着だけかけられていた。
そのスーツが塁の目に入ってしまった事で桜子の鼓動はこれ以上ないほどに暴れていた…
“まずい……。”
桜子の不安は的中し
案の定、塁はそれを手に取った
「……これは誰のもんや。」
「そんな事……塁に関係ないやん… っていうか人の家の中、勝手に物色するとか、どういう神経してんの…。」
「ごちゃごちゃ言うてんと、別にやましい事がなかったらすぐに答えられるはずやろ。もういっぺん聞く。 これは誰のもんや?」
塁はグイと距離を詰めた。
「だからそれは…、私のクラブの黒服に貸し出すためのスーツ。汚れてたからクリーニングに出しといたの!」
その答えに、何かを見破ったように塁はニヤリと片方の口角だけを上げた
「ほーう、そうかぁ。 おかしいなぁ…さっきお前のクラブ行ったけど、そこの黒服はみんなこんな高価なスーツ着てるように見えへんかったけどなぁ…。1人だけ特別扱いされとる奴でもおるんか?」
「それは…。」
塁の言葉にあからさまに動揺する桜子。
何かを確信した塁はハンガーからそのスーツを外し裏返した…
顕になったスーツの裏地。
“Shinya Takase “
そこには刺繍ではっきりとその名前が刻まれていた………
「はっ…、お前のクラブにはタカセ・シンヤっちゅうわしから銭借りとる男と同姓同名の黒服がおって、おまけにわざわざそいつの名前が刺繍された専用のスーツまで用意されとるんやなぁ。この男にだけえらい待遇ええんやのう?なんでや?」
塁は畳み掛けるように桜子を問い詰めた。
「………。」
桜子は何か諦めたかのように沈黙している。
「なぁ米原。わしは別にお前の銭取り立てに来たわけや無い。知ってること教えてくれたらそれでええんや。何か知っとるんやろ…吐け。」
……
……
……
……
暫くの沈黙が流れ…
「分かった、本当の事言う…。」
ようやく重い口を開いた桜子。
「そのスーツ、塁が探してる…高瀬さんのもの…。」
観念したように桜子は力なくそう告白した。
「やっぱりな…で、なんでそんな頑なに高瀬の情報隠すんや。お前がどっかに匿っとるん違うんか?」
「そ、そんなわけないやん!」
「はぁ…、どうせ時間の問題や。結局ワシらに見つかるんやから今のうちに居所言うといた方が楽やぞ。」
「だから…そんな事言われたってほんまに知らんもん…。」
「まだそないしらばっくれるんか…。お前ら…そういう関係やろ。」
「は?!なによそういう関係って!」
「おい…ワシに全部言わせるつもりか…?自分で吐かんかい。」
その言葉に尚も首を横に振る桜子。
「チッ…!さっきからまどろこっしいのう!はっきりせえ!」
はっきりしない返答ばかりの往生際の悪い桜子にいらつく塁は舌打ちをし、少し声を荒げた。
「だから…!!
高瀬さんとはその…あの………
体だけの関係……で…。」
「………っ。」
「だからその…
スーツ汚れたの…
クリーニング頼まれてて…
置いてて…。」
尻すぼみに小さくなる桜子の声。
そして広がる沈黙…
この秘密を塁にだけは知られたくなかった桜子。 にも関わらず自分の口からそのことを告白させられ、
そして案の定、この地獄の空気…。
“もう終わった…確実に嫌われた…”
怒っているとも、失望しているとも言えない表情でこちらを見つめている塁を前に桜子は半ば諦めの境地だった…
一方、桜子が高瀬と体の関係にある事を知った塁は自分の中で沸々と今まで感じた事の無い何かドロドロとした感情が湧き上がってくるのを感じた。
ぐちゃぐちゃとした感情が自分の中で暴れている…
が…またそれを握りつぶすように心の奥底にぐちゃぐちゃにしてしまい込んだ。
自分の感情を殺し無かったことにする…十歳で天涯孤独になり、数々の修羅場を一人乗り越えてきた中で塁が手に入れた生き抜いていくための術。
その顔から一切の温度が消え、能面のようになった。
「…そうか。 ……よう分かった。そんな事やろうと思うた。」
その声は怒るでもなく、焦るでもなく、感情を削ぎ落とした平坦な声色だった。
そしてまるで呪いのように塁の頭の中でその言葉が再生される
「銭しか信じひん。」
その言葉を頭の中で繰り返す塁の瞳はまるで人形のようで一切の光が宿っていない。
その目を見つめ、塁の中の何かを決定的に壊してしまったと…桜子は拳を握り締めた…
「私だって………望んで……
抱かれてる訳じゃ………ない…。
こんなん言い訳にしか……
聞こえへんやろうけど………でも……。」
高瀬との関係について声を震わせ俯きながらそう話す桜子、光をなくした瞳でその姿を見つめながらも何かを察した塁は口を開く…
「……夜の商売しとったらそんな事…珍しい事やないやろ。ワシかて分かっとるわ…そやけどな………」
塁は次の言葉を口にするのを少し躊躇するように視線を下げた…
が、また意を決したように口を開いた
「お前が…何か弱み握られとる言うなら話は別やぞ…。」
その言葉に桜子は俯けていた顔を塁の方へゆっくりとあげた…。
コメント
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塁の「感情を♡♡♡」シーン、ゾッとしたけどすごく美しかったです…。 桜子が自分の口からあの秘密を言わされる流れ、読んでて胸がギュッてなりました。 「望んで抱かれてるわけじゃない」って言葉がめっちゃ刺さって、もっと深く知りたくなりました。 お互いに嘘と真実が交錯する感じ、好きです。らむらむさんの人間の描き方、本当に丁寧だなって思います🌙