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ゆゆゆゆ
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キスが、ゆっくりほどける。
どちらからともなく。
名残を引くみたいに、ほんの少しだけ離れる。
でも――
完全には離れない。
額が、そっと触れ合う。
コツン、と軽く。
そのまま止まる。
「……は……」
エリオットの息がまだ少し乱れている。
チャンスも同じだった。
近すぎる距離で、互いの呼吸が混ざる。
静かな部屋に、二人の息だけが残る。
さっきまでの熱が、まだ消えない。
でも今は、少し違う。
落ち着いていくみたいに。
ゆっくり。
じんわりと残っている。
エリオットは目を閉じたまま、小さく笑う。
「……やばい」
かすれた声。
チャンスがわずかに息を吐く。
「どっちがだ」
少しだけ低く、でも柔らかい声。
エリオットは答えない。
ただ、額を軽く押し付けるみたいに寄せる。
離れたくない、っていう無言の動き。
チャンスは何も言わない。
そのまま受け止める。
数秒。
何も起きない時間。
でも、それが妙に満ちている。
エリオットが小さく呟く。
「……チャンス」
「ん?」
「さっきさ」
少し間。
「ほんとに止まらなかったね」
チャンスが小さく笑う気配。
「お前が言わせたんだろ」
エリオットも、少しだけ笑う。
息がまだ近い。
視線を落とせば、すぐそこに相手がいる距離。
安心と、余韻と。
まだ消えきらない鼓動。
全部が混ざっている。
エリオットはそっと目を開ける。
すぐ近くにチャンスの目。
さっきまでの鋭さはなくて。
少しだけ、優しい。
チャンスの手が、髪に触れる。
軽く、撫でるみたいに。
その優しさに、
エリオットの肩から、ふっと力が抜ける。
「……なにそれ」
小さく呟く。
目は閉じたまま。
「急に優しくなるの、反則でしょ」
チャンスは少しだけ笑う。
「さっきまであんだけ煽ってたのに」
エリオットは、かすかに笑う。
「……だって、来ないから」
素直な声。
さっきまで絶対言わなかったやつ。
「来てほしかったし」
ぽつり、と続ける。
チャンスの手が、一瞬だけ止まる。
エリオットは目を開けて、ちらっと見上げる。
少しだけ照れてる。
でも、逸らさない。
「……悪い?」
チャンスは首を振る。
「いや」
短く答える。
「むしろ助かった」
エリオットは一瞬きょとんとして、
それから小さく笑う。
「なにそれ」
でもその笑いは、やっぱり柔らかい。
チャンスの手が、頬に触れる。
今度はゆっくり。
エリオットは抵抗しない。
むしろ、少しだけ寄る。
「……もう煽らないの?」
チャンスが聞く。
エリオットは少し考えてから、
「んー」
曖昧に笑う。
「今はいいや」
そのまま、視線を少しだけ逸らして、
すぐ戻す。
「……疲れたし」
正直すぎる一言。
でも、どこか安心してる声。
チャンスはそのまま、軽く肩を引き寄せる。
エリオットの体が、自然に寄る。
さっきみたいな緊張はない。
ただ、くっついてるだけ。
「ねえ」
エリオットが小さく呼ぶ。
「ん?」
「……もうちょい、このままでいい?」
少しだけ遠慮がち。
でも、ちゃんと甘えてる。
チャンスは即答する。
「ああ」
エリオットは安心したみたいに息を吐く。
そのまま、目を閉じる。
額が、軽く当たる。
静かな時間。