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ゆゆゆゆ
#doublefedora
3,275
キスが、ゆっくりほどける。
どちらからともなく。
名残を引くみたいに、ほんの少しだけ離れる。
でも――
完全には離れない。
額が、そっと触れ合う。
コツン、と軽く。
そのまま止まる。
「……は……」
エリオットの息がまだ少し乱れている。
チャンスも同じだった。
近すぎる距離で、互いの呼吸が混ざる。
静かな部屋に、二人の息だけが残る。
さっきまでの熱が、まだ消えない。
でも今は、少し違う。
落ち着いていくみたいに。
ゆっくり。
じんわりと残っている。
エリオットは目を閉じたまま、小さく笑う。
「……やばい」
かすれた声。
チャンスがわずかに息を吐く。
「どっちがだ」
少しだけ低く、でも柔らかい声。
エリオットは答えない。
ただ、額を軽く押し付けるみたいに寄せる。
離れたくない、っていう無言の動き。
チャンスは何も言わない。
そのまま受け止める。
数秒。
何も起きない時間。
でも、それが妙に満ちている。
エリオットが小さく呟く。
「……チャンス」
「ん?」
「さっきさ」
少し間。
「ほんとに止まらなかったね」
チャンスが小さく笑う気配。
「お前が言わせたんだろ」
エリオットも、少しだけ笑う。
息がまだ近い。
視線を落とせば、すぐそこに相手がいる距離。
安心と、余韻と。
まだ消えきらない鼓動。
全部が混ざっている。
エリオットはそっと目を開ける。
すぐ近くにチャンスの目。
さっきまでの鋭さはなくて。
少しだけ、優しい。
チャンスの手が、髪に触れる。
軽く、撫でるみたいに。
その優しさに、
エリオットの肩から、ふっと力が抜ける。
「……なにそれ」
小さく呟く。
目は閉じたまま。
「急に優しくなるの、反則でしょ」
チャンスは少しだけ笑う。
「さっきまであんだけ煽ってたのに」
エリオットは、かすかに笑う。
「……だって、来ないから」
素直な声。
さっきまで絶対言わなかったやつ。
「来てほしかったし」
ぽつり、と続ける。
チャンスの手が、一瞬だけ止まる。
エリオットは目を開けて、ちらっと見上げる。
少しだけ照れてる。
でも、逸らさない。
「……悪い?」
チャンスは首を振る。
「いや」
短く答える。
「むしろ助かった」
エリオットは一瞬きょとんとして、
それから小さく笑う。
「なにそれ」
でもその笑いは、やっぱり柔らかい。
チャンスの手が、頬に触れる。
今度はゆっくり。
エリオットは抵抗しない。
むしろ、少しだけ寄る。
「……もう煽らないの?」
チャンスが聞く。
エリオットは少し考えてから、
「んー」
曖昧に笑う。
「今はいいや」
そのまま、視線を少しだけ逸らして、
すぐ戻す。
「……疲れたし」
正直すぎる一言。
でも、どこか安心してる声。
チャンスはそのまま、軽く肩を引き寄せる。
エリオットの体が、自然に寄る。
さっきみたいな緊張はない。
ただ、くっついてるだけ。
「ねえ」
エリオットが小さく呼ぶ。
「ん?」
「……もうちょい、このままでいい?」
少しだけ遠慮がち。
でも、ちゃんと甘えてる。
チャンスは即答する。
「ああ」
エリオットは安心したみたいに息を吐く。
そのまま、目を閉じる。
額が、軽く当たる。
静かな時間。
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