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朝。
カーテンの隙間から、やわらかい光が差し込む。
ソファの上で、エリオットはゆっくり目を開けた。
一瞬、ぼんやりする。
(……あれ)
すぐに、思い出す。
昨夜のこと。
一気に意識がはっきりして——
「……うわ」
小さく顔をしかめる。
隣を見ると、チャンスはまだ寝ている。
腕が、軽く自分の方に残ったまま。
その距離に、少しだけ視線を逸らす。
(……近)
でも、嫌じゃない。
むしろ——
そこで思考を止める。
「……やめよ」
小さく呟いて、そっと腕を抜ける。
起こさないように、静かに。
ソファから立ち上がって、軽く伸びをする。
体に、まだ少しだけ昨日の余韻が残ってる。
それを振り払うみたいに、息を吐く。
「……シャワー浴びよ」
誰に言うでもなく呟く。
そのまま、バスルームの方へ歩く。
途中で一度だけ振り返る。
チャンスはまだ起きない。
無防備な寝顔。
エリオットは一瞬だけ見つめて——
ふっと笑う。
「……ほんと、ずるいのそっちだって」
小さくぼそっと言って、
そのままバスルームへ入る。
ドアを閉めて、
蛇口をひねる。
水の音が、静かに響く。
鏡に映る自分を見て、
エリオットは少しだけ顔をしかめる。
「……顔やば」
軽く頬に触れる。
少しだけ赤い気がする。
思い出すと、余計に。
「……ほんとに」
小さく息を吐く。
「なにやってんだろ」
でも、その声はどこか柔らかい。
完全に嫌な感じじゃない。
むしろ——
少しだけ、嬉しそうで。
そのまま服を脱いで、
シャワーを浴びる。
温かい水が、体を流れる。
昨日の熱を、ゆっくり冷ましていくみたいに。
でも、
完全には消えない。
むしろ、思い出すたびにじわっと戻ってくる。
「……はぁ」
軽く顔を覆う。
「やばいって」
誰もいないのに、小さく笑う。
その頃——
リビングでは、
チャンスがゆっくり目を覚ます。
隣にいたはずの気配がなくて、
少しだけ眉を寄せる。
体を起こすと、
バスルームの方から水の音。
「……起きてんのか」
低く呟く。
しばらくその音を聞いて、
小さく息を吐く。
昨夜のことが、自然とよみがえる。
「……はは」
短く笑う。
そのままソファに背を預けて、
天井を見上げる。
「……逃がさねえからな」
ぼそっと呟く。
誰に聞かせるでもなく。
でも、はっきりとした声で。
バスルームの水音は、まだ続いている。
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