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⚔️🩷
――『あとは、今世を最後まで生きて。』
その言葉を 五人は何度も読み返していた。
「……どういう意味なんやろ」
舜太が写真を裏返す。 何度見ても それ以上の言葉はない。
「輪廻を終わらせるってことかな」
柔太朗が呟く。
「でも、どうやって?」
太智が首を傾げる。 仁人は 黙ったまま写真を見つめていた。
「……たぶん」
ゆっくり口を開く。
「もう、何かを願う必要がないんだと思う」
「え?」
「俺たちはずっと」
仁人は四人を見る。
「次の人生でも会えますようにって願ってきた」
四人は黙って聞いている。
「でも、今は違う」
仁人は笑った。
「今世で、ちゃんと会えたから」
*
帰り道、 五人は、いつものように並んで歩いた。 何度も歩いた道。 何度も笑った道。 でも 今日は少しだけ違って見えた。
「なあ」
勇斗が言う。
「もし本当に、これが最後だったらどうする?」
仁人は少し考える。
「……嬉しい」
「嬉しい?」
「うん」
仁人は頷いた。
「だって、もう次を願わなくていいから」
四人が仁人を見る。
「来世で会えるかどうかを心配しなくていい」
「今、ここにみんながいるから」
勇斗が笑う。
「それもそうだな」
「でも」
柔太朗が言う。
「最後って言われると、ちょっと寂しいね」
「せやな」
舜太が笑う。
「でも、最後まで一緒におれるならええやん」
太智も頷く。
「うん」
五人は歩き続けた。
*
その夜、 仁人は一人で昔の写真を整理していた。 最初の人生。 その次の人生。 また次の人生。 何枚もの写真。 その全部に 五人がいた。 笑っていた。 泣いていた。 離れていた。 そして、 また出会っていた。
「……本当に、何度も会ってたんだ」
仁人は写真を一枚ずつ並べる。 その最後に 今世の写真を置く。 五人で笑っている写真。 仁人はその写真の裏に ペンを走らせた。
――『今度は、最後まで。』
書き終えた瞬間 涙が一滴落ちた。 でも、 悲しくはなかった。
*
翌朝、 五人は最初に出会った公園に集まった。 木の下 五人で並んで座る。
「ここから始まったんだよね」
柔太朗が言う。
「うん」
仁人が頷く。
「何回生まれ変わっても」
勇斗が続ける。
「結局ここに戻ってきた」
舜太が笑う。
「不思議やな」
太智が空を見上げる。
「でも、もう探さんでええんやな」
「うん」
仁人は笑う。
「もう、見つけたから」
四人が仁人を見る。
「俺はずっと」
仁人は言った。
「みんなと離れたら、全部終わると思ってた」
「でも違った」
四人の手を握る。
「離れても、また会える」
「忘れても、また思い出せる」
「だから――」
仁人は笑う。
「もう怖くない」
勇斗が頷く。
「俺たちも」
五人の手が重なる。 その瞬間 風が吹いた。 木の葉が舞う。 仁人は目を閉じた。 頭の中に これまでの人生が流れていく。 初めて出会った日。 笑った日。 別れた日。 再会した日。 そして 今世で再び出会った日。
最後に 前世の自分が願った言葉が聞こえた。
――『来世では、もう会いませんように』
仁人は 静かに答える。
「……もう、その願いはいらない」
目を開ける。
「今度は」
四人を見る。
「この人生を、最後まで生きる」
その瞬間 何かがほどけるような感覚がした。 胸の奥にずっとあった 重たいものが、 ゆっくり消えていく。
「……終わったのかな」
勇斗が呟く。
「たぶん」
仁人が笑う。
「輪廻が」
五人は空を見上げた。 そこには 雲一つない空が広がっていた。
*
帰り道、 仁人はふと振り返った。 公園には 誰もいない。 木の下に 古い箱だけが残っている。 その箱の中には五 人が最初の人生で書いた紙が一枚。
――『五人で、ずっと一緒にいよう。』
その文字が 風に揺れた。 そして 紙の裏側に 新しい文字が浮かび上がる。
――『願いは、もう必要ない。』
五人は それを知らない。 ただ今 までとは違う道を 五人で歩いていく。 もう、 次の人生を約束する必要はない。
今。 この人生を、 最後まで一緒に生きるために。
コメント
1件
読み終わりました……じんわりと胸にくる終盤でしたね。輪廻を繰り返してきた五人が「もう次を願わなくていい」と気づく瞬間、あの写真の裏に書いた「今度は、最後まで」の一文に全ての感情が集約されている気がしました。「願いはもう必要ない」という紙の裏の文字も、伏線の回収として美しかったです。設定の積み重ねがここで静かに解けていく感じ、とても好きです。最後まで読ませていただき、ありがとうございました。