「……どうして、こんな……」
流れ落ちた涙を片手で拭って言う。
流星は俺様なタイプで気が強いところはあっても、根は悪い人ではないだろうと思っていた。
なのに、そんなささやかな思い込みは、一瞬で打ち砕かれた気がした。
「……ひどい、こんな…」
キスされた唇に手をあてて、その顔を上目に睨みつけた。
「……ひどい、ね…」
と、流星が薄ら笑う。
「あんな奴、好きになったって、なんもいいことねぇだろ? あいつはきっとこの先、こんな風にキスだってできねぇだろうし、おまえに手も出さねぇだろうしな。それでも、あんなふ抜け野郎なんかが好きなのかよ?」
「……違うから……」
さらに煽り立てるような口ぶりに、ふつふつと怒りが込み上げて、両手をぎゅっと拳に握り締める。
「……銀河は、そんな人なんかじゃない……」
「なら、さっきみたいにやさしくていい人だとでも言うのかよ? やさしいいい人だなんて、ただの生ぬるいたてまえで、男として終わってるだろうが!」
「……違うっ!」
大声で叫び返して、
「大好きな銀河のことを、悪く言わないで!!」
胸をせり上げる感情のままに、私は流星に食ってかかっていた──。
コメント
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人の事を悪く言う男って嫌だなぁ。