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追憶の探偵

54 - 3-case18 傷は残ったが

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2025年02月19日

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「結局傷跡残っちまったな……」

「……ごめん、春ちゃん」



事務所に戻れたのはあれから一週間後だった。

神津が小林に渡していたのは、やはりストーカーをしていた女性の写真でその顔を見かけたら電話するようにと頼んでいたらしい。そうして、運良く家族で買い物に来ていた小林がそのストーカーを発見し、母親にストーカーを任せ、俺と神津を発見すると救急車を呼んでくれたらしい。今回電話を実際に掛けたのは彼の姉だったが、小林の分かりやすい説明と状況判断能力が俺たちを救った。

川に落ちて、スマホはダメになっているかと思っていたが運良くこちらも生きていた。でも、川に飛び込んだ際、もうスマホはダメだろうなあとも思ってたため、小林が連絡してくれたことに感謝しかない。ともあれ、事件は解決したと言うことだ。


刺された傷跡は残ったが。


事務所のソファに座りながら、俺の腹を撫でる神津はやはり何処かよそよそしくて、申し訳なさそうに眉を下げていた。それがひしひしと伝わってきて、こちらまで何だか居心地が悪い。

俺は、気にするなって言うように神津の頭をぐしゃりと掻き回した。



「おい、あんまり触るな。くすぐったい」

「痛くは無い?」

「ないから、さわんな」



俺がそういえば、神津は素直に手を離した。

そうして、ソファの上で小さくなる。普段自分がそうやっているように、神津が膝を折って小さくなる姿を見ていると何だか、子供時代のことを思い出す。神津は部屋の隅で小さくなることを好んでいたから。俺もその癖が移ったのかも知れない。



「春ちゃんに二回も助けられて……僕がもっとしっかりしていれば春ちゃんが刺されることも、川に飛び込んで寒い思いをすることもなかっただろうに」



と、神津は自分を責めていた。


もう一週間もこんな感じだ。人前では、そこまで態度に出さないのに二人だけになると、それもとくに夜になると後悔の念に駆られているようだった。

こんな神津を見るのは、小さい頃神津が川に落ちて以来だった。まあ、その内戻るだろうと思ったが、隣でやられるとかなりキツいというか、俺の行動は果たして良かったのだろうかと、また不安になってしまう。

俺は、神津の頭を撫でながら顔は合わせず会話を振る。



「気にすんなよ、俺が勝手にやったことだし。お前も、俺の事勝手に調べて、助けに来てくれただろ?」

「でも、僕は怪我してない」



(あーめんどくせえ!)



俺は、自分の頭を掻きむしり、立ち上がった。神津は何処かに行くの? と言うように俺を見上げてきたため、俺は違う。とだけ言って神津を見下ろした。赤く腫れた目を見て、隠れて泣いていたんだと知る。



「俺は納得できねえかもだけど、勝手に身体が動いてたんだよ! 子供の時もそうだった! それに、あそこで解決したいって意識があったからこそ、あんな行動に出たんだよ! お前の! 誕生日までには、この事件解決したかったんだ」

「春ちゃん……」

「モヤモヤしたまま、誕生日むかえたくないだろうが」



と、俺は神津に言う。


神津の誕生日はもう来月だ。まだ何をプレゼントするのだとか、どんな言葉をかけようだとかそこまでは考えていないが、取り敢えずは、神津に付きまとっているストーカーをどうにかしてから、清々しい気持ちで神津を祝ってやりたいと思っていた。

この間の事件も、結果的には俺の誕生日前に解決できたし。そのおかげで、俺の誕生日は忘れられないものになったわけだが。


俺がそういえば、神津は、そうだね。と少し嬉しそうに笑った。その笑顔が見たい。と、俺は神津に対して両手を広げた。

神津は、少し戸惑っていたが、意味をすぐに理解し、立ち上がると俺を抱きしめた。俺は、神津の背中を優しく黙って撫でた。



「春ちゃん」

「何だよ神津」

「名前で呼んで?」



いきなりの要求に、俺は戸惑いつつも神津の下の名前を口にする。



「……恭」

「なあに? 春ちゃん」



名前を呼ばれて、嬉しそうに神津は俺の耳元でそう囁く。

お前が名前を呼べっていったんだろうが、と思いつつ俺はそんな返し方じゃなくて彼の背中を撫でる手を止めて、優しく抱きしめ返した。



「よく頑張ったな、恭」

「……子供扱いしてる?」

「お前もいつもするだろうが。まあ、そうじゃなくて……ほんと、良く耐えたなって、偉いぞっていう意味だ」

「矢っ張り、子供扱いしてるじゃん」



と、神津は言うものの何処か満足そうに微笑んでいた。


そして、神津は俺の腰に手を回すと顔を離し、俺をじっと見つめた。



「春ちゃん、キスして良い?」

「何で聞くんだよ。いつもお前勝手にするだろうが……」

「今日は聞きたい気分なの。それに、良いっていってくれた方がやりやすいし、同じ気持ちなんだって思えるじゃん」

「何だそれ」



何だか恥ずかしそうに言う神津に、調子が狂いつつも、俺は神津の問いかけに答えるように唇を突き出した。さすがに、目を開けたままは恥ずかしくて死にそうだから、絶対に開けない。

そうして目を閉じて、神津の方から俺にキスをした。触れるだけの優しいものだったが、何だかくすぐったくて恥ずかしい。

唇が離れると、神津は俺の頬に触れながら言った。



「誕生日、楽しみにしてていい?」

「おう。楽しみにしとけ、忘れられない誕生日にしてやるからよ」



そう俺が言えば、呪縛やしがらみから解放された神津はフフッと微笑んで「楽しみにしている」と俺の頬にキスを落とした。

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