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今は休日のお昼時、コナンは昼食を口に入れながらニュースを観賞していた。

流れるニュースは天気や食べ物のことばかり。

コナンは日常的に犯罪に遭遇するため、こんな穏やかな日は貴重だった。

しかし、彼に休みなどあるわけもなく、速報ニュースが彼の目の前に流れてきた。

「速報です。鈴木次郎吉氏が主催するミュージアムに、

{明日の夜8時に、「漆黒の金剛石」を頂きに参上します。}

と書かれた予告状が届きました。猫と名乗るものが、予告状を送ったものと思われます。」

ー繰り返します、と、アナウンスが入った時、コナンは、後ろにある気配に気づく。

「ようやく気づいたか、探偵」

「なんのようだ、怪盗キッド!!」

後ろに立っていたのは、純白のスーツを身に纏い、華麗に宝と人の心を盗んでいく、キザ野郎_

もとい、怪盗キッド。コナンの宿敵、いやライバルと称したを方が正しいのだろうか。

「なんのようだって、見ただろ、速報」

「ああ、猫ってやつか_って何でお前が知ってるんだよ!」

「いや、"漆黒の金剛石"ってさぁ、もともと俺が狙っていたやつで、変装して忍びこんでたんだよ」

「なるほどな。その宝石を狙っている身としては、得体の知れない同業者がいるのは困るって訳か」

「そゆこと」

「言っておくけど、俺はお前を手伝う気はさらさらないからな」

"猫"を調査するためだったとしても、このキザ野郎_いや、怪盗に協力するなど犯罪に手を貸してるも同じなのだから。

「でもな、探偵。お前は近頃本当に、あのミュージアムに行くことになるとおもうぜ」

彼はそう言い、ポンッという音と煙とともにこの空間から消えた。

_まぁ探偵事務所の窓が、人一人入れるぐらい空いているのだが。

事務所内は、瞬く間に静かになる。しかし、それも一瞬のこと。

デスクの上にある電話が鳴り響いた。

コナンは、受話器を取り、もしもし、と電話越しの相手に声をかける。

スピーカーから聞こえるのは、

「おお、子童!今日は休みだったな!」

ミュージアムを主催する鈴木次郎吉の声。

忘れてはいけない。

彼に休みなどあるわけがないということを。



ー〇〇ミュージアム

コナンが連れてこられた部屋には、漆黒に輝くダイヤモンドの指輪がガラスケースの中にいれられており、周りにはなにやら物騒な機械が床に取り付けられていた。

「子童!よくきたな」

今、コナンの目の前で仁王立ちで笑っているのが、相談役こと鈴木次郎吉だ。

しかし、コナンにはそれよりも気になることがあった。

「ねえ次郎吉おじさん、そのとなりのお兄さんって誰?」

そう、次郎吉のとなりから全く離れない背の高い男性だ。

彼は変わった風貌をしていた。

銀縁の丸眼鏡に、懐中電灯を垂らしており、服には蝶ネクタイをつけている。

まぁスーツ風の服に赤い蝶ネクタイとボール射出ベルトをつけているコナンが言えたことではないが。

「あぁ、彼はこの"漆黒の金剛石"を我がミュージアムに寄贈してくれた宝石商じゃよ」

「千野千尋と申します。君が噂のキッドキラーかい?それは心強いなぁ」

彼は深々とお辞儀をした。

「あの宝石はね、僕の家に代々伝わるもの。だから、僕にとっては命より大切なものなんだ」

彼はにこにこと微笑みながら、淡々と語る。

しかしコナンは、少し引っ掛かる点があった。

「ひとつ訊いてもいい?」

「なんだい?」

「あのさ、なんでここに寄贈したの?」

(大切なものならば、わざわざ寄贈する必要もないし、)

彼は動揺もしていない様子だった。

「それはね、ご先祖様が、多くの人にこの宝石の美しさを知ってもらいなさい、といってたからだよ。前はイギリスの美術館に展示されてたんだ」

ふーん、とコナンが相づちを打ったとき、

「話は済んだか?」

次郎吉の鶴の一声。このままだと話が長引くと悟ったのだろう。二人は瞬く間に静かになる。

「これがなんだかわかるか?」

次郎吉が指差したのは、ガラスケースの周囲にある赤く点滅する物騒な機械。

機械の様子からして、電源は入っていないようだ。

「見るんじゃ!」

次郎吉はリモコンのスイッチを押す。

すると、機械はウィーンというけたたましい音を発し___

何も起こらなかった。

今の時点では、これは、ただやかましい音を発するだけのぼんくらだ。

「おじさん、なにも起こらないけど,,,]

「これ意味あるんですか?」

彼も同じことを思っているのだろう、機械の方へと手を伸ばす。

「触っちゃいかん!」

「うわぁっ」

次郎吉の怒号と青年の悲鳴、いったい何が起こったのだろうか。

しかしそれは、悲鳴を上げた彼の指先を見ればわかることだ。

彼の手袋の先端の部分がドロドロに溶けていたのだ。

「これはレーザーじゃ。ガラスケースの周りにぐるりと設置されてある。出力を大きくすれば、人体でさえ簡単に溶けてしまうわ!」

やはりこの機械は、見た目通り物騒だったようだ。

(あのおっさん、またヤベェものを,,,,,,,,,,,)

そう、鈴木財閥の相談役である次郎吉は、毎度ながら様々な仕掛けを作り出し、ことごとくキッドに突破されている。

今回もそうならないよう願うばかりだが,,,

「死ぬかと思った,,,」

彼は、もうダメ、というように、首を横に振る。

この機械はもう敵無しのように思えた。

しかし、コナンには一つ心配なことがあった。

「ねぇおじさん。ちょっと耳貸して」

「おお子童、どうした?」

次郎吉はしゃがみ、コナンの方へ耳を傾ける。

「あのね、____________________」

「なるほどのぉ、準備するから安心せぃ!」




ー翌日の夜8時前

「いよいよじゃな」

予告時刻約1分前。ミュージアムは緊迫感に包まれていた。

「本当に大丈夫でしょうか」

彼は少し不安なようだ。まぁ、家宝が危険にさらされているのだから、当然のことだろう。

「先日の"アレ"に関しては_」

「心配するな。準備にぬかりはない」

コナンの要望で急遽用意された"アレ"。

コナン曰く、絶対に猫を捕まえられるそうだ。

「なるほど納得かたつむり!」

彼は奇妙な相づちを打ち、"漆黒の金剛石"を見つめた。

予告時刻10秒前。猫を捕まえようとする狼達は、カウントダウンを始める。

「「3」」

「「2」」

「「1」」

「「「0」」」

狼達の合唱の中に、一人の青年の声が交わった時、狼は視覚を奪われた。

否、停電したのだ。

ガラスの割れる音、狼達のざわめき、足音_

その音の中に、三発の銃声が轟いた。そう、銃声である。

コナンは頭をフル回転させ、推理する。

しかし、コナンが答えを出すよりも先に、ひとつの光によって事実は明らかになる。

次郎吉が用意した懐中電灯の電源をいれた。

コナンの目に映ったのは、紫のネクタイをつけた黒いスーツを身に纏い、肩、脇腹、足首から血をながしてふらふらとよろめいている青年、その青年の力の入らなくなった手から、ゆっくりと落ちていく"漆黒の金剛石"、そして、その"漆黒の金剛石"に駆け寄る、手に拳銃を持った千野千尋だ。

その光景にあっけにとられて、狼達は、しばらく動けずにいた。

そのすきに、猫とおもわれる青年は、ガラスケースの真上の天井に空いた穴から逃げていった。

狼達の間に沈黙が走る。しかし、その沈黙は、千野の悲鳴によって一瞬のものとなる。

「偽物だ!あいつまだ本物を持ってる!くそっ!」

千野はそれを床に叩きつけ、粉々にした。

突然人が変わったようになった千野に驚き、ぽかんとしている警備員をよそに、コナンと次郎吉は千野の方へと駆け寄る。

「千野さん落ち着いて!次郎吉おじさんがダイヤモンドに発信器つけてくれたでしょ。あと、それと、千野さんが撃ったの?拳銃」

千野が撃ったなら、銃刀法違反ということになる。

「そうだよ。警察の人から借りてたんだ。なんかあったら威嚇射撃できるようにって頼んでさ。しぶしぶだったけど」

「細かいことはいい!彼奴を追うぞ!」

コナンには、もっと訊きたいことがあったのだが、今は猫を追うことが最優先だ。

コナンは眼鏡のスイッチを入れ、博士お手製のスケボーで猫のもとへと向かった。


ー東京湾沿い夜8時半

おだやかな陸風が吹く夜の海。防波堤で青年は、黒いマントをなびかせ立っている。

コナンと千野と次郎吉はその青年と睨みあっている。

陸側では中森警部率いる捜査二課の警察達ががやがやと騒いでいる。

(猫のくせに袋のネズミってか)

「その手の中の宝石を返してください!」

千野が悲痛な叫び声を上げる。それに続くかのように中森警部が声を張り上げる。

「お前は完全に包囲されている!早くお縄につけぇ!」

「うるっさ」

けだるげな声が周りを静まらせる。そう、今両手をあげている怪盗の声だ。

「返してほしいんでしたら返しますよ。興味ないですし」

そういいダイヤモンドを次郎吉の方へと放り投げた。

「逃げるつもりか?」

「はい」

彼は頷いたが、今は上空はヘリで囲まれており、陸は警察の車両でうまっていて、とてもじゃないが、逃げ出せる状況ではない。

「逃げれるわけがないって思いますよね。でも、じっと耳をすませばわかると思いますよ」

狼達はじっと耳をすます。

すると、海の方からゴォォォォォォォォォォというエンジン音が聞こえてきた。

(まさか_)

「ジェット機で逃げる気か!」

気づいたが時すでに遅し、怪盗はもう海辺から消えていた。

防波堤には波の音だけが響いていた。

「次郎吉おじさん、それ、本物なの?」

「本物に決まっとろうが。彼奴が最初に持ってたのが偽物で、それはもう千野が破壊しておる。ほら、この指輪の部分にH・Sと刻まれて,,,,,」

そこで次郎吉は口を閉じた。次郎吉の目線の先には、H・Sではなく、"猫"と刻まれていた。

「千野さんはっ」

振り向いた先には先程の青年はおらず、頭髪の薄い40代ぐらいの男性が立っていた。

「おじさん、誰?」

「誰って、千野だけど,,,,,」


「うまくいったな、チーノ」

D/C/世界の主役達

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