おまけの短編ですヽ(*^ω^*)ノ
膝に跨ったまま、レトルトは少し俯いてキヨを見つめた。
「……ねぇ、キヨくん。なんで、あの時……俺の手、振り払ったの?」
悲しそうに揺れる声。けれど問いかけはまっすぐで、逃げ道を与えてはくれない。
キヨは息を呑み、視線を逸らしそうになる。
言葉が喉に引っかかって、すぐには出てこない。
『……それは……』
躊躇うように声を漏らしながら、キヨはレトルトの手を優しく握った。
『……研修医の先生と、毎日楽しそうに話してただろ』
キヨはぽつりと呟くように言った。
『俺のこと、もう好きじゃないのかなって……
あいつ俺より後から来たくせに、毎日レトさんと仲良くしてさ。毎日楽しそうに話してるの、見てて……気に食わなかったんだよ』
キヨは目を逸らし、まるで子供のように口を尖らせる。
頬までほんのり赤くして、ぶっきらぼうに吐き出すその姿。
――あぁ、なんて可愛いんだろう。
レトルトは胸の奥が熱くなる。
今までの不安や寂しさなんて一瞬で溶けてしまい、ただ目の前の彼の拗ね顔が愛しくてたまらなかった。
「……キヨくんってそんな顔するんだ」
そう言って思わず笑みが零れる。
『なっ、なんだよ。』
ますます子供っぽくいじけて見せるキヨに、レトルトはもうどうしようもなく悶えてしまい、両腕でぎゅっと彼を抱きしめた。
「……可愛い。ほんと、可愛い。俺のキヨくん!」
胸にキヨを抱きながらそう呟いたレトルトも耳まで赤く染まっていた。
「でも……さ」
レトルトが少し視線を落とし、ためらうように声を漏らした。
「キヨくんだって……リハビリの先生と手、繋いだり……抱き合ったりしてたでしょ?」
その言葉にキヨの目が大きく開く。
『えっ!? ち、違うって! あれはリハビリで必要だからで!』
耳まで真っ赤になり、慌てふためくキヨ。
――まさか、レトさん。見てたのか。
「……こっそり、見に行ってたんだ」
レトルトは頬を赤らめながらも、少し拗ねたように呟いた。
キヨは一瞬絶句して、次に思わず吹き出す。
『な、なんだよ……レトさんも俺と同じでやきもち焼いてたんじゃん』
レトルトは図星を突かれてますます顔を赤くし、悔しそうに唇を噛む。
「……だって、心配だったんだもん。俺の知らないところでキヨくんが誰かと仲良くしてるとか、嫌だったの…」
その素直な告白に、キヨの胸が熱くなる。
ぎゅっと腕を回してレトルトを抱き寄せると、彼の髪に顔を埋めて小さく笑った。
『……バカだな。俺.レトさんにしか触れたいなんて思わないよ』
ぎゅっと抱き合って笑い合った二人。
キヨの頬にレトルトの鼻がちょんと触れて、思わず二人ともクスクスと笑い出す。
『俺たちってさ…..なんか….』
「ふふふ、似てるよね」
小さな声で交わすやり取りは、まるでふたりにしか分からない魔法みたいに幸せで、柔らかくて、あったかかった。
終わり
コメント
2件
最後まで読みました〜!!! 姿が見えなくてもこんなことできるのか・・・やってて欲しいですね めちゃ面白かったです!ありがとうございました!