おれたちは最後の砦とされるひと気の無い村で休息を取ることにした。それというのも、サンフィアと遭遇してこれからの進み方をどうするか迷いが生じたからだ。
ルティの話を聞くには我慢が必要になるということで、ミルシェにも一緒にいてもらうことになった。シーニャとサンフィアはそれぞれ外で警戒してもらっている。
石造り小屋の一つに入り、落ち着いた状態で話を聞くことにした。
「――で、サンフィアの話の意味はどうなんだ?」
「はい、それがですね~、でっかいお城がありまして! そこから来たんですよ」
「……いや、要点だけを」
「はぇ? ですから~お城からここへたどり着いちゃいまして、あ、最初はイデアベルクから飛んで来たんですよ。それでですね……」
興奮気味のルティから話を聞くのは中々難しい。やはりここはミルシェに任せるしかなさそうだ。そうじゃないと話が進みそうにない。
「まず、あなたたちをそのお城に飛ばしたのは、精霊竜?」
「いえいえ、それがですね! ウルティモさんなんですよ~!」
「何だ、そうなのか」
「意外といい人でして!」
ルティの場合はこぶし亭をしているし、おれの知らぬ間に誰かと親しくなるのは当然か。しかし、まさか時空魔道士ウルティモがそこまで面倒見が良かったとは。
「お城というのは、どこのこと?」
「えーと、バラ……バラルディア王国です! そこのお城にいましてですね~」
ウルティモが飛ばしてきたという時点で聞いたことのない名前が出るのは当たり前か。お城にいたのにどうして地下の遺跡に来られたんだって話だが。
「フィーサとアヴィオルが城に残っているんだったな? 城の中は安全なのか?」
「はい。それはもう! 誰もいない無人のお城ですから! そこでサンフィアさんと遭遇をしたんですよ」
「……では、どうしてあなただけが彷徨っていたのかしら?」
「ええと、ええと……気を取られているうちに……」
城が遺跡につながっていたというのもおかしな話だ。それとも文明遺跡群の一部にその城が含まれている?
「何に気を取られたんだ?」
「お城の地下倉庫に樽とか桶とか、たくさんありまして………気付いたら床下に落ちて~」
「もっとましな言い訳を考えたらどうなの? それじゃあ、小娘たちはあなたがいなくなったことを知らないのでは?」
「本当なんですよぉぉ!! あ、倉庫に行くのは教えましたよ~? それに途中で出会ったサンフィアさんが伝えたはずなのです」
床が抜ける程やられた城のようだ。それにしたって、樽と桶とはルティらしい行動だな。
「地下に落ちて慌てて走りまくったと。そういうことで合ってるか?」
「はいい~。暗くて狭くて不安で不安で……置いてけぼりにされたうえ、アック様にもう会えないんじゃないかと思ったらとても普通の状態じゃいられなくて……アック様がお傍にいないとわたしは何も出来ないんですからもういなくならないでくださいいい~」
この言葉にはさすがのミルシェも口を閉ざした。そして何故か気を遣われたようで、彼女は外に出て行ってしまった。
「わ、分かったから落ち着け」
「本当に本当に本当にですよ? アック様がいてこそのわたしなのです」
「もちろんだ」
「これからもずっとずっとご一緒です!」