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俺が以前、北条コーポレーションから出店契約をもぎ取ったショップは、店舗担当者と連日のように打ち合わせを重ね、ついにオープンの日を迎えていた。
提案したのは、高級感よりも「日常のインフラ」としての価値。疲れた客が、ふと足を止め、チョコの香りに包まれて「人生の中休み(余白)」を取れる場所。そのコンセプトは、見事に的中した。 店舗は瞬く間にモールの人気店へと成長を遂げた。
そして、年一回の全体朝礼。俺は営業成績者上位者とともに、社長から特別賞と目録を受け取った。拍手が降り注ぐ中、俺の視線はただ一人、フロアの彼女だけを探していた。
主任は、いつもの凛とした佇まいのまま、誇らしげに頷きながら笑顔で拍手を送ってくれていた。
「おめでとう、王子谷。……私の目に狂いはなかったわね」
式の後、偶然エレベーターホールで二人きりになった際、彼女は真っ直ぐに俺の目を見て、眩しいものを見るように目を細めた。
「……っ、ありがとうございます!」
「期待してるわよ。あなたなら、このチームの次期エース、いえ……会社を背負って立つ営業マンになれるわ」
彼女の瞳にあるのは、「部下に対する信頼」だけだった。
(……まだまだっすよね。やっとスタートラインくらいには……)
そう思っていたのに。 数日後、社内に激震が走った。
「雨宮主任が、隣の営業チームへ異動――?」
低迷しつつあった俺たちの営業チームを見事に立て直した実績を買われ、隣のチームのマネージャーを任されたという。彼女の優秀さゆえの栄転だった。
けれど俺にとっては、それは「特等席」を永遠に失うことを意味していた。 もう、彼女の背中を追いかけるために、資料を抱えてデスクへ駆け寄る理由すら、なくなってしまうのだ。
篠原愛紀
#独占欲