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──高速を抜けて、湖へ着くと、
「ほら、あそこに観光船が一隻あるでしょう?」
駐車場に停めた車のフロントガラスの向こうを、彼が指差した。
その指の先に目をやると、白い大きな船が湖に浮かんで停泊しているのが見えた。
「あの船に、乗るんですか?」
「ええ…」
車から降りると、彼からさりげなく肩が抱かれた。
以前にも同じように抱かれたことはあったけれど、その時とは明らかに違う感覚に、触れられた肩がじんと熱を持つようだった。
ぐっと傍らに抱き寄せられると、胸の高ぶりが抑えられず、心臓の音が聴こえてしまうんじゃないかと思うくらいにドキドキとして、緊張に足がもつれそうにもなった。
「私がエスコートをすると言ったでしょう? あなたのペースでゆっくり歩くといい」
言いながら歩幅を合わせて歩いてくれる彼に、うるさいくらいに胸は高鳴る。
互いの身体がぴたりと寄り添い密着をすると、以前にも嗅いだことのある甘いアンバーの香水の匂いがふわりと香って、傍らのその人に魅了されるあまり、歩く足はさらにもつれてふらつきそうにもなるみたいだった。